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青の粒子発生の地04

 

 青く煙る遠浅の海

 遠浅の海に見紛う青い霞の波

 霞の波に佇む、戦士たち



 ■コークリットの視点



「何なんだ! この状況!?」

「「どうした!?」」

「「ヤバい状況なのか!?」」

「わ、分かりません! 何だこれ!? どういうことだ!?」

「「どうなってるんだ!?」」

 ああ、しまった! 俺しか見えてない状態で、不安をあおるようなことを!

 皆に動揺が走り、不安や恐怖が走る! しまった!


「も、申し訳ない! せ、説明します! ええと、その、何から話せば……!!」

「コ、コックリ! 落ち着いて! いつものように、一番気になったものから説明して!?」

「っ!」

 不安げなシスが俺を見上げる。たぶんいつもと違って様子がおかしい俺を心配しての不安な表情だ。何て可愛い表情だろうか。じゃなくて!


「まずは! 深呼吸しよう! ね?」

「あ、ああっ!」

 俺は言われた通り、一つ深呼吸をして気を落ち着かせる。肺の中に空気を極限まで入れてから極限まで吐き出すと、高ぶりは嘘のようになくなる。


「説明します!」

「「おおっ!」」

「巨大な魔獣が二体います」

「「おお!」」

「まずは違和感がある方からです!」

「「おお!」」

「そいつは青の粒子の元凶ではありません!」

「「そうなのか!?」」

「「元凶じゃない!?」」

 そう、そいつは青の粒子の元凶じゃない!


「でも無関係とは言えない! おかしな状態です!」

「「無関係とは言えない!?」」

「「おかしな状態!?」」

「まず身の丈は、三十メートル級!」

「「三十!!」」

「「デカイ!!」」

「純白の鱗です!」

「「純白の鱗!?」」

「「青じゃないんか!」」

「一体は! 純白のドラゴンです!」

「「ドラゴン!!」」

 そう、一体はドラゴンだ!

 鱗の色は純白。鱗の隙間から蒸気が出ている! スチームドラゴン!

 長大な翼を持つ、四足歩行の美しいドラゴン。

 ドラゴンのランクは四つあり、下からロー、ミドル、ハイ、エンシェントドラゴンとするならば、その大きさと美しさから、ミドルからハイクラスのドラゴンだ!


「「純白のスチームドラゴン!!」」

「「スチーム! 火属性ドラゴン!」」

「ドラゴンは、目を瞑り、大地に横たわっています!」

「「大地に横たわっている!?」」

「「眠りについている!? 死んでいる!?」」

「生きています!」

 そう、生きている!

 霊力を視れば、全身に充満するような霊力反応あり!

 では寝ているのか、目を閉じているだけなのか!?


「「違和感ってなんだ!?」」

「「ドラゴンは青の粒子の元凶じゃないって!?」」

「「鱗!? 鱗が砕けたものじゃないのか!?」」

「「スチームなら火属性だよな! 青の粒子は火属性だろ!」」

「「眠っている!? 青の粒子も眠りを誘うものだから、やっぱりドラゴンのものじゃないのか!?」」

 矢継ぎ早な質問に俺は説明を続ける!


「違います! 青の粒子はドラゴンの物ではありません! 青の粒子はもう一体の魔獣のものに間違いありませんっ!!」

「「もう一体の魔獣のもの!?」」

「「なぜ、そう言える!?」」

「「青いのか!? 体が!?」」

「真っ青です!」

「「真っ青!!」」

 そう、青い! 一目見ただけで! 初見で分かる! 青い! 圧倒的に青い!


「もう一体は! 昆虫獣類!」

「「昆虫獣類!?」」

「胴体は十メートル超! 幾つかの昆虫の要素が組み合わさっています!」

「「幾つかの要素が!?」」

「「混成獣か!」」

 そう! 混成獣だ!


「「一番の特徴は何だ!?」」

「「混成した中の一番の特徴は!?」」

「一番の特徴は『 (はね) 』です!」

「「翅!!」」

「「どんな翅だ!?」」

「『 モルフォ 』の翅です!」

「「もるふぉ!?」」

「「もるふぉって何だ!?」」

 知らないよな!

 もしかしたら、皆が知っている昆虫でも、名前と昆虫が結び付いてないのかもしれない!

 モルフォとは!


「『 アゲハ蝶 』です!」

「「アゲハ蝶!!」」

「美しい『 青い翅 』を持つアゲハ蝶です!」

「「青い翅のアゲハ蝶だって!?」」

 そう、アゲハ蝶! モルフォ蝶は森の宝石と謳われる、美しい青い翅を持つアゲハ蝶だっ!


「「森の宝石!?」」

「「じゃあ! 青い粒子って!!」」

「「『 鱗粉っ!? 』」」

「そう! 鱗粉です! 青い翅の鱗粉です!」

 青い粒子の正体!

 それは森の宝石モルフォのような、青い翅の鱗粉だった!

 鱗粉だったんだ!

 霊力を視れば、間違いない! 今まで散々視て来た霊力を、美しい青い翅から感じる!

 目が眩むほどの青の霊力!

 魅入られてしまうような、妖しく麗しい霊力! 青い炎のような霊力! 宝石のような美しさ! この世の物か!?


「しかしアゲハ蝶の要素だけではありません!」

「「そうだ! 混成獣だ! アゲハ蝶の他は!?」」

「「他は何だ!?」」

「胴体や顔、鱗粉の多さは『 カイコ蛾 』です!」

「「かいこが!?」」

「「かいこがって何だ!?」」

「カイコ蛾とは! 空を翔ぶ能力を失った代わりに、絹糸と圧倒的な鱗粉を生み出す『 蛾 』です!」

「「蛾っ!?」」

「「圧倒的な鱗粉を生み出す蛾!?」」

 そう、蛾だ! 人間が品種改良して絹糸をたくさん生み出せるようにした蛾の一種だ! 家畜化した昆虫と言える存在だ! カイコ蛾は、その一匹だけで煙るような鱗粉を発生させる、取り扱いに注意が必要な蛾だ!


「青いアゲハ蝶の翅がついている胴体や頭部は、カイコ蛾のそれです!」

「「胴体や顔はカイコ蛾っ!?」」

「真っ青な蝶の翅が生えた蛾です!」

「「真っ青な蝶の翅が生えた蛾っ!?」」

 天空大地では混成獣はよく観てきたが、蝶蛾の混成獣は初めて観た!

 カイコ蛾特有の複眼は、漆黒のガラスで作ったドームのように美しい反面、感情を持ち合わせない冷酷な光に怖さを感じる。


「ああ! 複眼と複眼の間、眉間の部分に人間の顔面が!」

「「人間の顔面!?」」

「「キモッ!」」

 カイコ蛾の頭部は白い毛に覆われて、黒い複眼がキラキラと煌めいている! その複眼と複眼の間には人間の顔面が! 知性を感じさせる、男とも女とも言える中性的な顔立ちが! 白い毛に覆われた白い肌の顔なので気づかなかったが、美しい顔面が目を閉じて笑みを浮かべている!


「人面の巨大青蝶蛾……!!」

 知性を感じさせる美しい顔立ち!

 能面にも似た白い顔面! 霊力によってオークを操ることができるのは、人面から汲み取れる知性からか!?


「空よりも青い美しさ! 真っ青な翅を持つ巨大な人面の蝶蛾混成獣! この鱗粉の量は蝶のそれじゃない! カイコ蛾のような圧倒的な量! この翅は、飛ぶためのものじゃない! 霊力を込めた鱗粉をまき散らし、獲物を誘引するための翅!」

「「マジかッ!!」」

 今も巨大青蝶蛾が少し翅を揺らすたびに、青い鱗粉が霞となって空間に流れる! 何という美しい霞だ! 美しい青い霞が、青蝶蛾から放たれている! 何て美しい光景なんだ!

 そんな青蝶蛾が、巨大浮遊岩にぶら下がっている!


「「眠ったドラゴンと、浮遊岩にぶら下がる人面青蝶蛾!?」」

「「どういう状況なんだ!?」」

「「青蝶蛾がドラゴンを眠らせたということか!?」」

「この状況だけ見ればそうですが! おかしいんです!」

「「おかしい?」」

「「何がだ!?」」

「竜には霊力が満ち溢れています! それは青蝶蛾によって霊力を奪われていない状態です! つまり眠っていない! しかし目を閉じて動かない!」

「「霊力満タン?」」

「「青蝶蛾に霊力を奪われ、眠らされているわけじゃないのか!?」」

「「どういうことだ!?」」

「「何だその状況!」」

 そう、おかしな状況なんだ! 自らここにいる!? 眠っていない! でも動かない! おかしい! おかしいんだ!

 皆も分かってくれた!


「もう少し調べてみます!」

「「頼む!」」

 俺は千里眼を周回させる!

 色々な角度から、最大限の情報を拾い上げるんだ! まずは巨大青蝶蛾!


「何て巨大な蝶蛾だ……」

 青い霞の中、巨大青蝶蛾は太く長い足を浮遊岩にひっかけて離さない。抱擁というよりは、まるで羽交い絞めしているかのようだ。剛毛の生えた昆虫の足は、その先端が人間の手のように五本に分かれていて鉤爪でしっかりと握りこんでいる。


「カイコ蛾の頭部には口吻がある……蝶に似ているな」

 普通、カイコ蛾には口はついていない。

 成虫になると物を食べないで、交尾だけして蓄えたエネルギーが尽きれば死んでいく。だがこの巨大青蝶蛾には蝶の口吻のような、くるくると巻き上がっている口がついている! 何かを吸って生きているんだ!


「翅は鮮やか」

 翅は青く、分厚い。たくさんの鱗粉を蓄えて、まるで砂鉄が磁石に集まっているかのよう。分厚さの濃淡で、色味が変わって見える。美しい! 青い砂金だ! モルフォ蝶は、一般的には青い翅はオスでメスはくすんだ茶色だ。色鮮やかなほどメスに人気で子孫を残せるというが……


「触覚は大きい」

 触覚はゲジゲジに似て大きい。ちょっと気持ち悪い。これはオスの蛾の特徴。一般的にはオス蛾はメスから出るフェロモンを知覚するために触覚が大きくなるという。


「腹に誘引線は見られない」

 蛾のメスならば、オスを呼び寄せるためのフェロモンを放つ誘引線という器官があるが、青蝶蛾にはない。これらのことから、この青蝶蛾はオス!

 じゃあメスはいるのか!?

 俯瞰して周囲を見渡せば!


「うおっ!?」

「「どうした!?」」

「周囲に、千匹以上と思われる水色や茶色の小さな蝶蛾がいます!」

「「周囲に!?」」

「「水色や茶色の蝶蛾っ!?」」

「「せ、千以上!!」」

「「小さいってどれくらいだ!?」」

「頭から尻まで二メートルくらいです」

「「それでも充分デカい!」」

「それぞれに人面がある! 目を開いて獲物に笑みを向けている……」

「「キモッ!」」

 周囲を見れば、身の丈二メートルくらいの小振りな蝶蛾が犇めいている! 気持ち悪い!

 小さいから子供かと思いきや、これはこれで成虫のようだ。二種類の蝶蛾がいて、翅の色が茶色いものはメスだ! 一方で水色の翅はオスだ! 巨大青蝶蛾に比べれば、圧倒的に薄い! 薄い薄い翅の色だ!


「何でこんなに違うんだ? 色といいサイズといい」

 たぶんこのサイズと色が普通なんだろう! じゃああの巨大青蝶蛾はいったい!? 突然変異か!?

 小さな蝶蛾たちは、巨大ネズミや巨大ウサギに群がって、口吻を獲物の心臓付近に突き刺している! 吸いながら、水色の鱗粉を撒いているように見える。


「「心臓付近に口吻を!?」」

「「血を吸ってるのか!?」」

「血は出ていません!」

 そう、血は出ていないし飲んでいない! しかし何かを吸い取っている!


「生命エネルギーを吸っています!」

「「生命エネルギー!!」」

 この蝶蛾たちはこうやって生きているんだ! 魔法の鱗粉で意識を奪い、誘導して、生命エネルギーを吸う!


「「じゃあ竜も生命エネルギーを!?」」

「可能性はあります! ですがおかしい! 竜は眠っていないのに、むざむざ生命エネルギーを奪われているのか!?」

「「確かに!」」

 今分かった謎はこれだ!

 ・一体だけ巨大化し、見事な青さを持つ巨大青蝶蛾が存在する謎。

 ……突然変異? 突然変異なら、今後も巨大青蝶蛾が続々と出現する可能性は低い。進化なら今後も続々と出現する可能性が高い。

 ・霊力に満ち溢れ、操られていないのに目を閉じて動かない竜の謎。

 ……動けない? 動かない? 動けないなら、病気かケガか? 動かないなら何か目的があるのか?


「竜は動けないのか、あるいは動かないのか、眠っているのか、起きているのか……」

 俺は千里眼を竜の近くへと移動させる。

 竜は体の至る所から蒸気が出ている。鱗の隙間から出ているんだ。

 眠っているんだろうか? 起きているけれど目を閉じているだけだろうか? 寝るとしても、よりによってこんな危険なところで眠るか? いかに霊力に満ち溢れるドラゴンでも、これだけの青い霞の中にいて鱗粉を吸い込んでいたら、いつかは霊力を奪われるぞ?

 と美しい青い霞の中で!


「あ! オークが!」

「「オーク!?」」

「オークがドラゴンの近くにいて、草食獣の肉を竜に運んでいます!」

「「何だって!?」」

 オークたちは大きな草食獣を解体するかのように肉を削いでは、目を閉じたまま動かない竜の口に入れる。その行為は!


「竜は動けない! 眠っているのか、起きているのかは分からないけれど、竜は自ら動けない! だからオークは竜の口に食糧を運んで餓死しないようにしている!」

「「何だって!?」」

「だとすると、オークを操っているのは巨大青蝶蛾ゆえ、巨大青蝶蛾が竜を生かすためにやっている!」

「「マジか!」」

 青蝶蛾が竜を生かすためにやっている!

 竜に何が起こっているんだ? 何で動けないんだ!?

 病気か!? 竜に病気なんてあるか分からないが! あるいはケガ!?

 調べるんだ。俺は竜の体に近づいて何か異変がないかチェックする。美しい白い鱗には傷もなく、千里眼越しでは特に異変は感じられない!


「「竜は生かされているってことはどういうことだ!?」」

「「献身的な介護?」」

「あるいは」 俺は千里眼を動かしながら「巨大青蝶蛾は、竜が動けないことを良いことに生命エネルギーを継続的に吸い取るために、竜が死なないよう食糧を与えている」

「「マジか!?」」

 千里眼は竜の顔に。ああ何と美しいドラゴンだ。目を開けたらどれほど美しいだろうか?

 もしかして脳にダメージがあるとかか? 脳に損傷があるとしたら外からは分からない。

 瞳孔の反射でも診られればと瞼のそばに行ったその時、ドラゴンの瞼がわずかに開いた!


「うおっ!?」

 目と目が合う! デカイ!

 ヴァルパンサードの時もそうだが、鋭敏な感覚を持つ幻獣や魔獣は、意識を向けられた場合、すぐに反応する!

 竜の目に吸い込まれるような感覚! 続いて思念のようなものが俺の脳に届く!


 “タスケテ……”


「えっ!?」

「「どうした!?」」

 次の瞬間、俺の脳裏に映像が飛び込んできた!





やっと怪異の正体まで来ました。

モルフォにしたのは、今年に入ってからで、それまで「青い粒子の正体はどうするかな~」と悩んで執筆に時間がかかっていました。

候補は幾つかあったんですが、悩みまして、まあ行き当たりばったりです。

最後までもう少々、お付き合いよろしくお願いします。

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