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ヴァチカニアの神殿騎士と森の妖精の物語  作者: 藻屑のもずく
人外の地(オークとの戦い)
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オークとの戦い05(断崖上)

 


 雲を抜けたボスオークたちは目を疑った。

 いるはずの獣人たちがいない! なぜ!?

 あるのは闇夜を照らすように並ぶ、目印のかがり火の列のみ。

 もぬけの殻、といった様相を見せる空間が広がっている。


「「ナゼッ!?」」

「「獣人ドモハ!?」」

「アッ! アレハッ!」

 ボスオークの一匹が指差す先に、さっきよりも小さくなった層雲! ハッキリ見える防塁!

 その防塁の上に、獣人たち!

 そこは当初から獣人たちが待ち受けていた場所! そう獣人たちは一歩も動いていなかった!


「「馬鹿ナッ!!」」

「「アソコカラ槍ガ届ク訳ガナイ!!」」

 そう、届くハズがない!

 ボスオークたちが混乱するなか、獣人たちは防塁に突き立てた槍を手に持つ! その時、ボスオークたちは気づいた。

 獣人たちは、靴べらのようなものを持っていて、槍の尻に重ねてから引き抜き、構えたのを!


「「ナ、何ダ!?」」

 何だあの靴べらのようなものは!?

 そう疑問に思っていた時、背後から雲を吹き飛ばしながら飛び出すオークとオーガーが追い付いた!


「「ドゴダアアッ!!」」

「「獣人ドモガアアッ!!」」

 恐怖を与えられていた反動で怒りに火が着いたオークたちは、獣人をグチャグチャに殴り殺さずには腹の虫がおさまらない状態だ! 棍棒をグルグルと回す!


「「イネエガッ!!」」

「「ドゴイッダガ!?」」

「射てえええっ!!」

「「ブヒッ!?」」

 その時!


 ドガガガガッ!

 ドガガガガッ!

 ドゴンッ! ズガンッ!

 ドガガガッ!


「「ブギャアアアアアッッ!!」」

 雲からあらわになったオークとオーガーたちは、獣人の投げ槍の格好の的だった。

 獣人は狙いを定めて的確に投げ槍を当てていく!


「クソガアアッ! 槍ヲヨク見ナアッ!」

「「ブギャアアアッ!!」」

 槍を見ようにも、闇夜で飛来する点のような槍は、雲の中にいる時と変わらず、避けにくい!

 さらには速い!

 獣人が投げたと思ったら、二秒後にはオークたちに突き刺さって、貫通している!

 近づいた分だけ、威力が増している!


「クソガアアッ! 死ンダ仲間ヲ盾ニシナアッ!」

 ボスオークの指示に、慌てて仲間の死体を盾にするオークたち。

 しかし分厚いハズの死体を貫通して、槍の切っ先が突き刺さり負傷する!

 槍をよく見れば、ドリルのように螺旋状の溝が入っているではないか!


「「グアアアッッ!!」」

「「何ダッ!? 何ナンダゴノ威力ハッ!?」」

「「ネジネジ状ダガ!」」

「「手ニ持ッデルアレノセイガカッ!?」」

「「アノ靴ベラガカッ!?」」

 そう、靴べらのような器具の正体は投槍器(アトラトル)と呼ばれる攻撃補助器具だ。

 テコの原理で槍を飛ばすゆえ、手で投げるよりも飛距離が伸び、威力、速度、全てが向上する。

 何より、人よりも肉体的に優れた獣人が使えば、なおのことだ。

 槍を投げる獣人たちはアトラトルの威力に驚く。


「オウオウ! こりゃあスゲエな!」

「全くばい! こがん距離から届くったい!」

「助走もつけなくてこの威力とは!」

「連射も速い! 凄い!」

 神殿騎士からこれを受取った時は何の器具か分からなかったが、練習してみてびっくりしたのを覚えている。

 大地に刺した槍の尻側にアトラトルを重ねて引っこ抜き、構えて投げる。

 一本投げるのに十秒もかからないから、一分間で七~八本は投げられる!

 神殿騎士が考えた戦術の一つがこれだ。少ない人数で十数倍の敵と戦う戦術。

 距離を置いての戦いだ。

 少ない人数で十数倍の敵と戦うには、まともに当たらない戦術が必要であり、遠くから一方的に攻撃する方法が一つの正解だとコークリットは考えた。

 今のところ考え通りに進んでいると思う。

 とオークたちは死んだ仲間を盾にし始めたのが見える。

 こちらの槍が少ないと見て、尽きる時を待つ作戦だ。予想したオークたちの対応の一つだ。

 コークリットは叫ぶ!


「投擲止め! 無駄射ちになります!」

「「止め!」」

「「おう!」」

「くそ! もっと槍があれば!」

「仕方なか! エルフば一日でここまで作ったんば、さすがたい!」

 そうこの槍はエルフが作った。

 神殿騎士が昨晩依頼したのはこの槍作りだ。

 エルフならば樹木を加工して槍を作ることは造作もないことだと考えたからだ。

 実際に、数人のエルフがたった一日で千本ほどの槍を作り出してくれた。

 しかも高速で投げた時回転するように槍の尻側に羽状の加工がしてあり、貫通力が格段に上がっている。

 もし人間が同じ人数で一日かけたとしても、二~三十本作れたらいいほうだろう。

 防塁と防塁の間にある中央通路に仁王立ちして戦況を注視しているコークリットは、投擲の止んだ戦場に魔法を使う。


「『 索霊域! 』」

 突き出した手のひらの前に魔方陣が出現すると、薄い光が球形に広がり半径三百メートルを包み込む。

 それは大まかに範囲内の生物の存在を察知する神殿騎士魔法だ。

 域内にいる生命の状態をざっと関知するコークリットは、心の中で呻く。


「(想定より少ない……)」

 死亡や戦闘不能状態の魔人たちはざっと百五十ほど。

 まだ六百超は戦闘に支障はない状態だ。つまりは、まだこちらの主力部隊の十倍近くはいる!

 対してこちらは、槍を半分の五百本ほど投げ、目隠し用の雲を半分使った。

 それで百五十ほどしか減らせなかった。


「(ボスオークたちは相当頭が切れる)」

 彼の考えでは、突然襲い掛かる雲の獣に混乱し、統率がきかない状態でどこから飛んでくるか分からない槍で三百は戦闘不能にできると考えていた。

 だが、予想以上にボスオークたちの統率と戦況把握は的確で、対応が早かった!

 雲の中で二~三分は足止めされ槍を喰らうと思っていたが、実際にはたった数十秒で統制を取り、一分ほどで雲から出て来たのだ。

 そしてこちらの武器の数を考え、素早い防御態勢に移行し、被害を最小限にした!

 ボスオークたちは、相当頭が切れる!

 もっと倒したかった!

 いや! 一~二分で百五十もの魔人や巨人を戦闘不能にしたのだ!


「素晴らしい戦果です! たった数分で約二百ほどを戦闘不能に出来ました!」

「「おお! マジか!!」」

「「よしよ~し! この短い時間で二百も!」」

 ちょっと多めにサバを読むコークリット! 士気を高く持たせるのだ!

 コークリットの元に、甲高い声が届く。


「"神殿騎士様! 雲の目隠しをまた使いますか!?"」

 隣にいるかのように聞こえるが、風の精霊魔法で遠隔地にいる味方と交信している。

 その甲高い声の持ち主は、小さな妖精コロボクルの戦士だ。

 ドワーフ以外の妖精たちと小柄な獣人たちは、別の場所を担当してもらっているので、何か役に立ちたいのだろう。

 自分たちの後ろには雲のストックがあるから、また動かして貢献したいと考えたのだ。


「"いえ! これは『 次の戦略 』で使います! 持ち場について例の準備をお願いします!"」

「「"分かりました!"」」

 しかしその前に、コークリットはオークの集団に呼び掛ける。


「降伏しろ! たったの数分で多くの犠牲が出たぞ! さらにこちらには様々な兵器がある! 無残な死を遂げることになるぞ!」

 コークリットはあくまでも降伏を呼び掛ける。

 その時!


「「グオオオオッ!!」」 ドドオオ!

「「死ネガアアッ!!」」 ドドドドオオッ!

 オークたちが、盾の向こうからお返しだとばかりに、次々と投げ槍を投げる!


「「おおっ!?」」

「「うおおお!?」」

 しかし! 投げた槍は獣人たちの元には全く届かず、三十メートル以上手前で失速し、大地に刺さる!

 オークたちはあくまでも交戦を変えない。


「ぶははは! 助走もなしにそりゃあ無理だ!」

「こっちば防塁の上ばってん、アトラトルもあるたい!」

 届かない槍に笑顔を見せる獣人たち。

 コークリットは嫌な予感がした。これは慢心からくるものだ。

 実際には敵の方がまだ十倍近く多いのだから、こちらが慢心するには早い!


「"ダメです! まだ笑うところじゃないわ!"」 そう叱ったのはリーフロスのセシルリーフだ。「"まだ向こうの方が多いです!"」

「そうです! あれは距離を測る様子見! 近づいて投げられたら一気に形勢逆転されます!」

 コークリットの言葉に呼応するかのように、守りを固めたオークたちがゆっくりと前進し始める。


「「オッ! オッ!」」

「「オッ! オッ!」」

 威嚇の鬨を上げながらゆっくり前進しながらも槍を投げる! 徐々に近づいて来る槍!

 と、大地に突き刺さった槍の一本が、大地ごと崩れてなくなる!

 用意していた落とし穴が壊れ、蓋をしていた地面が崩落したのだ!


「「全体止マレイッ!!」」

 ボスオークの号令に前進が止まる!

 落とし穴があることに気づき、そして他にも罠があることに気づいたのだ!

 鎧男のいう兵器とはこれか?


「クソッ! 罠がバレた!」 ハルデルクが忌々しく吐き捨てる。

「ヌウッ、あのまま気づかずこっちに来ればさらに罠に嵌められたのに!」 ローレンが渋面を作る。

「フム、罠の存在に怖気づき、無様な姿で撤退しないだろうか? 数分で二百近くの仲間を無様に倒されたのだから」 色気のある言い方でいうクレイ。

 そう、コークリットも撤退を希望している。

 オークたちが奥地の巣窟に増援要請するために撤退すれば、さらに二日は猶予ができる。

 その二日で城並みの堅牢な城塞を作ることができるし、投げ槍もさらに三千本は用意できるだろう。

 また断崖下で静養している獣人たちが快癒し、断崖上の戦力を増強できるようになる。

 現状、優利に戦闘を進めているように見えるも槍が半分無くなり、戦力も少ない状態で戦うより、二日後に今よりも圧倒的に万全な体制で迎え撃つ方がいい。その時。


「「オッ! オッ!」」

 威嚇の雄叫び! アンデルサルクスに騎乗したボスオークたちが慌ただしく動き回る!

 ボスオークたちはお互いの感じたことを手短に疎通させる。「ここで退くのは危険だ」と。

 そう、ボスオークらは防塁や落とし穴の存在を見て「数日前までなかった防塁や罠があるゆえ、日を置くとさらに罠や武器を用意され、危険である」ということを理解していた。

 そしてボスオークらは単純な力押しで戦おうとして相手の用意した策にはまり、大打撃を受けたことも理解していた。


「「左右両翼! 突撃! 中央デ合流シテ、鎧男ヲ目指シテ突キ進メ!」」

「「オオオオオッ!!」」

「「オオオオッ!!」」

 野太い雄叫びがしたかと思えば、オークの右翼と左翼から百ずつの魔人たちが動き出した!

 左右から中央に!

 コークリットは悪寒が走る!


「「うおおおっ! 来た!」」

「「左右が中央に動き出したぞ!?」」

「「中央は動かない!?」」

「くっ!」 コークリットはボスオークの鋭さに焦燥を覚える。

 恐らく待機した中央が主力で、左右両翼を中央に合流させ突撃させたのは、①どこにあるか分からない罠を潰すためのローラー役と、②こちらの武器を全て使いきらせるための囮、を目的にしているはずだ。

 そう、主力部隊突入のために罠の存在を全て潰した上で安全な通り道を確保し、なおかつこちらの武器を全て吐き出させる!

 左右両翼は囮だとはいえ、圧倒的なパワーを持つオークとオーガーであることに変わりはなく、槍を温存していい相手ではないことを理解して!


「投擲開始! 突撃部隊を!」

「「おうっ!」」

 獣人たちは一斉に投擲を再開する!

 ビュドドドドドッ!!


「「ブギイイイイイイイイッッ!!」」

 左右両翼のオークとオーガーたちは降り注ぐ槍をものともせず、お構いなしにドスドスと走り来る!

 凄まじい振動! 闇夜の中で迫り来る異形の巨体は、恐怖を駆り立てる!

 思わず震えたのはアグリッピナたち女性獣人だ。


「「あわわっ!」」

 アグリッピナほか女性獣人たちは、肉弾戦を得意とする戦士とはいえ、これほどのオークとオーガーの大群と戦うのは初めてであり、自分たちを殺傷する意志を持ったオークたちの走り寄る様に腰が引ける。

 獲物を狩るために襲いかかってきたセンチピードとは異なり、悪意と殺意を持って向かってくる巨大な魔人に恐れを感じるのだ。

 ディアオロスから投擲が減ったことに気づいたハルデルクがいち早く声をかける。


「"お嬢ちゃんたち! センチピードの大群と戦ったお嬢ちゃんたちは勇敢だ! 大丈夫だ!"」

「「はい!」」

「"多くの仲間がいる! 大丈夫だ!"」 ローレンも励ます!

「「はい! ローレン様!」」

「「投擲!」」

「「オラオラアア!!」」

 ズドドドドドッ!

 獣人たちは上から槍を投げ下ろす!

 ペース配分など考えず、圧倒的な速度と威力で、次々に走り来るオークとオーガーたちを串刺しにする!


「「ブゲエエアアアアッッ!!」」

「「投擲! 急げ!」」

「「おらおらおらぁ!!」」

 左右両翼で約二百匹が一気に押し寄せる!

 中央に集まることで槍に当たりやすくなってはいるが、多勢に無勢!

 槍の雨を抜け出せたオークたちは残り四十メートルを切る!

 そう残り四十メートルを!

 その時、先頭を走るオークとオーガーたちが突然転倒する!


「「ブギャアアアアッッ!?」」

「「ウゴオオオオッッ!?」」

 オークたちは次々に転倒し、盛大に大地を転がる!

 その転がった者たちにつまづき後から来る者たちも転倒する!


「「今だ! 投擲!」」

「「おらおらおらああ!!」」

 ズドドドドドッ!!


「「ブギャアアアアッッ!?」」

 大地に転がったオークたちは目の前のそれに歯軋りする!

 大地には高山植物が生えているが、たくさんの結び目があってこれに引っ掛かって転倒したのだ。

 単純な仕掛けだが、闇夜では非常に効果的だ。

 槍が刺さる痛みを感じたその時、さらなる痛みがオークに走る。思い切り踏まれる痛みだ。

 ドスドスドスッ! ゴキンッ!


「「ブゲエエエッ!!」」

 次々に踏みつけられる激しい痛み。

 倒れた仲間を踏み台に草の結び目地帯を飛び越えて行く別のオークたち。

 だが飛び越えた先にも結び目があり、何匹ものオークたちが転倒するも、その度に後続部隊は倒れたオークを踏み台に罠地帯を抜ける。

 そこに広がるのは倒れたオークとオーガーの作り出す架け橋だ。

 残り二十五メートル!

 あの鎧男まであと少し!

 オークたちの目が光る!


 バズン! バズズン!


 突然地面が陥没し、オークが吸い込まれる。落とし穴地帯だ。

 オーガーも吸い込まれるが、胸から上で引っ掛かる。

 後続のオークやオーガーたちは、落ちた仲間を助けることなく、逆に踏みつけながらコークリットの元に走る!


「「死ネアアアアッッ!!」」

 コークリットは剣を引き抜くと持ち手を変えて大地に切先を刺す。

 刃身に手を添えるとその時を待つ。

 残り十五メートル!

 二十匹ほどが突撃してくる!


「聖剣技!『 雷陣の太刀 』その変形!」

 ガカッ! と稲光が大地を走る!

 剣を始点に、イチョウの葉に似た広がりで稲光が大地に浮き彫りになると、迫り来るオークとオーガーの足に接する。

 本来の雷陣は蜘蛛の巣のように自分を中心に円陣になるものの効果範囲が狭くせいぜい七~八メートルだが、イチョウの葉のように変形させることで一気に二十メートル超まで伸ばした。


 バリリッ! 「「ッッ!!」」


 稲光に触れた魔人たちは叫び声も上げられず、走り来る姿のまま硬直し、静止する!


「今です!」

「ブリャアアッ!」 ハルデルクが槍を投げる!

「フン。『 戦乙女よ! 魔人どもを貫け! 』」 ローレンが戦乙女の槍を投げる!

「『 美しき戦乙女よ、醜い敵を貫け。できれば顔を 』」 クレイが戦乙女の槍を投げる!

 硬直した状態の魔人たちに向け、無数の槍が飛んでいく。

 魔人たちは叫び声をあげることもできず絶命する。


「「よし!」」

「「うおおおおおおっ!!」」 防塁の上から歓声が上がる!

 オークとオーガーの左右両翼を完全に撃破したからだ。

 心たる霊力の色が視える妖精たちには、空間を満たすほどの「喜びの色」が明るく輝いて視えた。


「ぶおお! 何とかなるもんだな!」 ハルデルクが大きく息を吐く。

「フッ、私のとどめが利いたな」

「うむ、実に美しい色だな」 クレイが空間を満たす色を視て髪を掻き上げる。

 一方、コークリットは目の前の状況に目を見張った。


「橋が……」

 広範囲に罠を作っていた彼は、よもやこのような方法で罠を突破する道を作るとは予想だにしなかった。

 彼の前には橋ができていた。

 オークとオーガーの橋が。

 一段も二段も高くなった橋だ。

 そして橋の先には、無傷のオークとオーガーの大群が佇んでいる。


「……」

 コークリットは維持していた索霊域で調べると、倒れ込んだ二百余りの魔人たちは瀕死の重傷か絶命している。

 オーク襲来から約七分。

 およそ魔人の半分を戦闘不能に落とし込んだが、こちらも武器と罠を使い果たした形だ。


「「オッ! オッ!」」

「「オッ! オッ!」」

 橋の向こう側で、四百近いオークやオーガーたちが威嚇の声で大気を震わせる。


「「全体、前進ダヨッ!!」」

「「オッ! オッ!」」

「「オッ! オッ!」」

 ついにオークたちの主力部隊が前進し始めた!

 槍の心配も、罠の心配もない状態で、やっと思う存分暴れられる! その喜び!

 そして仲間の死にざま! 主力である自分たちを通すために犠牲になったその姿!

 今、それらを踏みしめ歩む!

 優越感に興奮を隠しきれない!


「「オッ! オッ!」」

「「オッ! オッ!」」

 お前らの仇は討ってやる。

 そこで死んで見ていろ。


「ムウ、一段と邪まな……」

「何と醜い。美しさの欠片もないとは……」

 心の色を視る妖精たちは、そのどす黒い色に不快感と恐怖を覚える。

 コークリットもまた、空間を満たすどす黒い殺意に「投降して去れ」という言葉の無意味さに気づく。

 もう無理だ。こちらがいくら忠告しようと、あの殺意は止まらない。

 残酷だが、二つ目の策をするしかない。


「総員退避! 第二の持ち場に!」

「「おうっ!!」」

 獣人と妖精たちは防塁の上から飛び降りるとそれぞれが持ち場に走る。

 これが本当に最後の砦だ。

 一方、魔人たちは壁の向こうへ逃げ込む敵を見て、勝利の快感に声が高らかになる。


「「オッ! オッ!」」

「「オッ! オッ!」」

 オークとオーガーの屍の橋を踏みしめながら、ついに主力部隊は鎧男が立っていた通路の入口へと到達した。

 到達したものの、目の前に広がる景色にざわめく。


「「何ダガッ!?」」

「「ゴレハ一体!?」」


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