オークとの戦い(断崖下)
またキリのいいところまでアップします
影に支配される大峡谷
暗い大峡谷内に響き渡る悲鳴と怒号
獣人と妖精たちの声
■コークリットの視点
薄暗い峡谷内に、悲鳴と怒号が走る。
「いやあああっ! あなたぁ~~っ!」
「しっかりしろ! 傷は深くないからな!」
「誰か! 治療薬を! 頼む!」
俺は周囲の悲鳴と叫び声を聞きながら、非情で冷静な判断を要求される。
助けられる命と助けられない命の選別を!
「騎士様! 魔法で治していましたよね!? この人を助けてください!」
ケンタウロス女性が、若いケンタウロス男性を抱きしめながら俺に懇願する。涙と鼻を流しながら、俺に懇願する。
「残念ですが、その方は!」
彼女の腕の中にいる獣人は、もう助からないと一瞬見ただけで分かる。なぜなら腹から下がもう……
「私をかばって……私をかばってっっ!」
「抱きしめて、自分が無事だったと、彼を安心させてやってください!」
今は、そんな言い方しかできない! すまない!
この断崖の下には、獣人や妖精たちの多くが倒れ、治療を待っているんだ。
「騎士殿! こっちの奴は息がまだあります!」
「分かりました!」
別の獣人の叫びに俺はダッシュで駆け寄る。
倒れているのはサテュロス男性で、刀傷で深く切られている! 欠損はない! 治せるぞ! 俺は癒しの聖魔法で助ける。
「騎士様! こっちも! こいつは毒で紫色だっ!」
「分かりました!」
「こっちにも! 足が捥げて血が止まらない!」
「こっちもだ! 早く!」
「「誰か! 治療薬を!」」
「「こっちにエルフの秘薬が!!」」
断崖下は正に野戦病院のごとくだった。目まぐるしく動いていたその時、俺は腕をガッと掴まれた!
「戦士の兄ちゃん、癒しの魔法ば使えるとか!?」
そこにいたのはずんぐりむっくりした髭面の男性だ。見た目と言葉遣いから地妖精だと一瞬で分かった。
「使えます!」
「よか! なら妖精の負傷者ば、癒しの魔法をメインにせんね! エルフの秘薬ば獣人に使うったい!」
「何か理由があるんですね!?」
「その通りったい!」
そのドワーフは、脇腹を抉られた仲間のドワーフを運んできて、癒しの魔法をかけるよう迫った。
「聖魔法は欠損個所は復元できません! このまま抉られた状態で傷が塞がります! エルフの秘薬を塗ってからでないと!」
「大丈夫ったい! 魔法ばかけるばい!」
何か考えがあるのだろう、俺はそれを信じ魔法をかける。
すると、欠損箇所の肉がモリモリと膨らんできて、瞬く間に傷がなくなって行く!
「何と! 欠損部分が再生した!?」
「そうばい! 元々妖精ば、何もせんと傷が再生されったい! 癒しの魔法ば使うと、一気に復元されっばい!」
そういうことか! 再生力の違いだ!
妖精は腕を失っても時間がたてば再生し生えてくるが、人間や獣人は傷が塞がる程度で腕は生えてこない! 癒しの魔法は魂が持つ生命エネルギーを治癒力に変換するようなものだから、妖精の場合は治癒能力が高められて腕が生えてくるんだ!
「ではご提案通り、エルフの秘薬は獣人の欠損した部分に使い、それ以外の傷は魔法で治しましょう!」
「「おうよ!」」
「神殿騎士殿!」
俺の素性を知る呼び方と聞いたことのある声に、もしやと思って見ればそこにはエルフの皆さんが!
「ソールさん! 皆さん!」
「やはり神殿騎士殿か! 魔法で怪我を治している者がいると聞いてもしやと!」
ソールの他に、男女数名のエルフがやってきた。
ヴァルパンサードを治してエルフの里から離れたとき、ソールはサテュロスを保護しながらニンフの集落へ向かうようなことを言っていたから、獣人と妖精の混成軍にいるような気がした。何せ族長のジーク自ら青砂調査の部隊に来てくれているから、それに次ぐエルフ族の有力者が混成軍にいるだろうと。
「しかし青砂を追って断崖上へ登ったはずの貴方がここにいるということは、もしや……!」
「はい! その通りです! 青砂とオークらの獣人狩りは繋がっている!」
「やはりですか!」
と、他のエルフが話しに入ってくる。
「神殿騎士殿、族長やスランには会えましたか!?」
「はい! つい一時間ほど前に、断崖で!」
「「一時間前!? ついさっき!?」」
凄いタイミングだったのだろう、皆がビックリしているその時。
「コックリ~~!!」
騒々しい中でも分かる、透き通る声が!
声の方向を探ると、光精霊の光に照らされた断崖下の巨大な洞穴内で俺を探す華奢な少女が! キョロキョロと必死な! 必死に俺を探す少女の後ろには美しい美女たち!
シスとアル、さらに湖妖精のレリー、アグやエカが来てくれた!
「おおっ! シス、アル!」 ソールが気づき、ウィスプで合図する。
「あっ、あそこにソール! 皆も!」 アルがこっちを指す。
「あっ! コックリ!」 シスが俺に気づく。
美女たちは駆け寄って来ると、ソールたちとお互いの無事を確かめ合う。
だが、懐かしさからの挨拶もすぐに終わり、緊迫したシスが俺に向く。
「コックリ、ケガはない!?」
「ああ大丈夫! 来てくれてありがとう! 助かる!」
「うん! 何をすればいい!? 遠慮せずに何でも言って!」
ありがたい! 俺は今ドワーフの戦士が提案してくれたことを伝え、秘薬は体の一部を失った獣人に使い、さらに状況に応じて皮膚を移植して聖魔法で治すことを伝える。
「分かったわ! 任せて!」
「無理はしないでくれ!」
◇◇◇◇◇
夜の帳が降り、空には星々が瞬く。
峡谷内の要塞の至るところには、滲むような霞むような、儚く脆い幻想的な光が灯る。エルフやニンフ、ドワーフや草妖精が灯したウィスプや松明の光だ。淡く輝くもの、激しく輝くもの、場所や用途によって、変えているようだ。
冷水で顔を洗っていた俺の元に、獣人の女性がやってきた。
「神殿騎士様。たった今狐獣人の戦士が息を引き取りました」
「そうですか……残念です。ご冥福をお祈りします」
胸に手を当て、しばし黙祷する。
顔を戻せば目の前には明かりが灯る無数のゲル。
オークが獣人の集落から奪ったゲルを使って野戦病院とし、ケガの重い患者ごとにグルーピングして治療をしているところだ。この獣人女性はオークたちに連れ去られた人質だったのだが、助けに来てケガをした仲間たちを看病したいと言ってくれて。くだんのリーフロスの戦士は、秘薬と魔法でギリギリ助かると期待したんだが、ダメだったか……ふぅー
「神殿騎士様、大丈夫ですか?」
「え?」
「顔色が優れないようですが……」
ああそうか、魔法の使い過ぎで霊力がかなり減っている自覚はある。
「ありがとう、大丈夫です。今夜が峠の戦士たちが多くいると思います。なるべく応援の声で励ましましょう」
「はい!」
獣人女性はゲルに走ると、入れ替わるように別の獣人の若者がやって来た。
「神殿騎士殿、各種族の主だった者が集まりました」
「ありがとうございます。今、参ります」
若者に従って向かうと、断崖を登る巨大洞穴の入り口付近に幾つものウィスプが光輝いている。天井が高い洞穴の陰影が浮かび上がって、何とも雰囲気がある。俺は疲れが顔に出ないよう気合を入れる。
「神殿騎士殿! こちらへ」 ソールが手を挙げる。
そこには各種族の長やそれに近しい人物が集まっていた。
獣人はケンタウロスにディアオロス、リーフロスにサテュロス、さらにディアオロスと獅獣人がいて、妖精はエルフにニンフ、ドワーフにコロボクルが、精霊魔法で作った蔓草の円卓を囲んでいる。
俺が到着すると皆がハッとしたので、人間に警戒しているのかもと思った俺は、怪しまれないようここまで来た旅のキッカケを話すことにした。
「お待たせしました、神殿騎士コークリットと申します。人間世界で不可解な怪異が起こり、痕跡を辿ってやって参りました」
「「よろしく、神殿騎士殿」」
と面々はわざわざ立ち上がり、一人ずつ俺に握手を求めて来た。
おお、意外だ! 人間に警戒するかと思いきや……魔法で怪我人を治しまくったからかな? 人間に対して悪い第一印象は与えなかったかもだ。
「あらあら、大きな人だこと。同胞を救っていただき、ありがとう」
「いえ、こちらこそです」
最初の挨拶はリーフロスの女性、セシルリーフだ。二足歩行の獣人で足が狐の後足そのものだ。身長はシスより小柄で百四十くらいだろうか。ふわふわの尻尾が可愛い獣人女性だ。頭に狐の耳がついてるのが何とも可愛らしい。
と次の獣人が。
「お話は伺っていますぞ。何度も同胞の危機を救ってくれたようでありがとう。よろしくな、神殿騎士殿」
「よろしくどうぞ」
それはケンタウロスの最大氏族から来た戦士長のホルベルクだ。
ハルさんより少し年上といった感じの戦士で、やはりハルさん同様逞しい。腕や頬にまで入れ墨があって氏族で異なるのかな。どうやらスランとアルから色々と俺の話を聞いていたらしい。
と羊の角を持つ女性獣人が微笑み、おっとりした物言いで話しかけてくる。
「子供たちがお世話になったとのこと、感謝いたします~~」
「ふふ、自分が遊んでもらいまいたので」
サテュロスの女性、アリエステーラが頭を下げる。
子供たちのお世話というのは、エルフの里でのことだ。筋トレと称して一人ずつ真上に投げてはキャッチして遊んだので喜ばれて喜ばれて、俺も久しぶりに子供たちと遊べて楽しかったんだ。
そう思っていたら次は凄まじい獣人がやってきた。
「オウオウ強えな、兄ちゃん! あの巨獣を倒すとは! だが我々が地表で巨獣の気を引いていたってのもあるよな!?」
「もちろんです。皆さんのお陰です。皆さんが地表で善戦してくれていたので、真上は隙だらけでした」
「オウオウ、だよなあ! ガハハハ! よし、今度手合わせ願おうか!」
ドスの利いた声でそう言ったのはライオロスの戦士長、ガノンレオルだ。
おお、身長は百七十未満だけれど、俺が細身に感じるほどの筋肉隆々ぶりだ。四足歩行の重そうなライオンボディを合わせると、おそらく体重は四百キロはあろう。体の厚みが威圧感を与えるが、それ以上にライオンのごとき厳つい顔つきに威圧感が半端ない。
次にやってきた女性は、正反対の存在だ。
「でもあんな巨獣を一撃だなんて! 凄いですね!」
「剣と魔法によるところがあります」
子供にも似た高い声は、小人と呼ばれるコロボクルのパララ・ピルペ・パランだ。身長百二十センチほどの女性で、子供体形ではなく童顔でもなく、人間の女性をサイズダウンした、れっきとした大人の女性だ。六頭身はある、スタイルの良い女性だけれど、とにかく小さいし細い。
「その剣ばドワーフ産じゃなかろか? いい鍛えっぷりたい!」
「はい、その通りです。だからこそ、安心して振れるのだと思います」
独特の言葉はドワーフの戦士長ギムドワッハ。
剣を貸してくれと言われて渡すと熱心に見る。そう、俺の魔法の鎧も剣も、人間世界にいるドワーフが鍛えたもののはずだ。歴代の神殿騎士に敬意を表し、聖戦士に協力してくれる妖精もいる。俺の剣を作ってくれたドワーフも、その一人のはずだ。
「断崖上でクレイロールたちには会えましたでしょうか? さきほどレリーヴィアがいましたが」
「はい、良いタイミングで助かりました」
見た目も話し方も妖艶な女性ニンフのセリーヴィアが問いかける。おお、人間でいう三十代後半くらいの熟れた妖艶さが何ともゾクゾクする。肉感的でムンムンと色気があって、ハルさんが好きそう。上で挨拶したレリーも人間でいうと二十代くらいで艶やかな感じだが、ニンフは皆色気があるってことか。
これで一通り挨拶が終わった。俺は人間を代表しているから、人間に対する変な先入観を持たせずにすんだと思う。
「あらあら、立ったままでは何ですし、食事をしながらでも」
セシルリーフが合図すると、若いリーフロス女性たちが食べ物と飲み物を運んで来た。ふう、そういえば腹が空いていたんだ。果物ばかりだが、栄養価が高い。疲弊した身体にはいいかも。
果物を食べながら何から話すかなと思っていたら、パララが話を振って来た。
「神殿騎士殿。先ほど『 人間世界で不可解な事件が起きてここまでやってきた 』と話されましたね。どのような事件だったのですか?」
「はい。実は──」
俺は子供たちの行方不明事件の捜査から発見した「青砂」とその特徴、炎属性で恒温動物の体内で集合し、対象者の霊力を集めて意識を奪い、操るという不可解な事件を説明した。
「「何と……」」
「「そんなことが……」」
ソール以外の獣人や妖精たちはにわかに騒ぎ始めた。聞いたことのない怪異だという。やはりここ数年で起こったものなんだろう。
「青い砂ということから何かの鉱物だと思うんです。そして意識を奪われた子供は『綺麗な場所の夢を見た』といい、行きたくなったと話してくれました。それは美しい鉱石のある場所なのではないかと」
「「なるほど」」
と俺は以前から気になっていた話をギムドワッハにした。
「砂や土、石といえばドワーフの領域というイメージがあるんですが、ギムさんは心当たりはありませんか?」
そう、砂や土、石のことなので、ドワーフに訊いてみたいと思っていたんだ。砂や鉱石ということなら、地属性のドワーフの知識や感性が一番だろう。俺は以前倒したボスオークの鼻奥にあった青石を皆の前に置く。
「「おお、それが!」」
「はい。断崖の洞窟で倒したボスオークはこれを『 フェラトゥの霊石 』と呼んでいましたが、皆さんの中でご存知の方はおられますでしょうか?」
「「フェラトゥ?」」
「もしかしたら、オーク独自の呼び方だというだけかも、ですが」
「どれ、見せんね」
ギムドワッハは俺からフェラトゥの霊石を受取ると、食い入るように見つめ、光に透かしたり、霊力を調べたりしている。だが、眉間にしわをよせ、首を傾げる。
「ううむ、何ばよう分からんばい。こりゃあ、ほんに鉱物か?」
「砂が固まってできた鉱物じゃないですかね?」
「んにゃんにゃ、鉱物じゃなかけん」
「鉱物じゃない? 固まる前はかなりの微粒子でして、例えば大陸南部に降り注ぐ黄砂や火山灰に似てるんですが、違いますか?」
「間違いなく鉱物じゃなかね」
なんと言うことだ。
鉱物生命体のような存在がいると仮説を立てていたが、違うだろうか……
いや、まだ分からない。
例えば竜が鱗を落とし、砕いて粉状にして散布したとかなら、その粉は『 鉱物じゃない 』と言える。
逆に、鉱物じゃないと断言して貰って、何らかの生物による怪異だと証明してくれたのかもしれない。
鉱物じゃないが鉱物に似た性質を持つ生命体。
いるんじゃないか? 未知の天空大地ならば。
思わず自分の怪異捜査に没頭没念しそうになっていると、ソールが俺の意識を戻す。
「一連のオークの侵攻がこの『 フェラトゥの霊石 』のせいだとすると、これからどうするか、ですが……」
「ええ。原因の元を絶たないことには、オークの侵攻は止まらない、ということですね?」 しっとりしたセリーヴィアが頷く。
「神殿騎士にお願いするばい!」
「はい、そのつもりなのですが幾つか問題がありまして」
「「幾つか?」」
俺は捕らえて尋問したオーク数匹からの情報を伝えた。
・断崖上の奥地にはオークの巣窟があり千匹以上のオークとオーガーがいる
・連行した獣人たちは、少しの間巣窟の牢屋に入れられている
・その後獣人たちをどうするかは知らないが、さらに奥地へ連れていく部隊がいる
・人質の獣人がここ二日間巣窟に連行されないので、異変があったと出撃準備を始めている
「出撃ば始めとるとか!」
「はい。斥侯部隊を全滅させこちらの正確な情報が伝わらないようにしましたが、それゆえオークの巣窟は『 斥侯部隊さえも倒す敵が存在する 』と判断したハズです」
「「マズイだろう!」」
「「相当数が襲来するぞ!」」
「現状の混成軍の戦力はどうなのでしょうか?」 ソールが問う。
「怪我から復帰できる獣人もいますが、時間がかかる怪我人の方が多いです」
俺は一人一人患者を診たので確かだ。
元々混成軍の人数は各種族合計で四百ほどいた。そこから死者は五十、重軽傷者で二百を超える。最後の巨獣さえいなければ、死者・重軽傷者は数十人で済んだはずだから非常に痛い打撃だった。俺は説明を続ける。
「重軽傷者二百余名は、エルフの秘薬と癒しの魔法で軽傷者から順に一日十~二十名ずつ回復していくとは思います。それ以外の無事な戦士たちから五十名ほど選りすぐって、明日の朝一番に断崖上に送り、防備を厚くしましょう」
「オウオウ、明日の朝一で大丈夫か!?」
「そうばい! 何なら今すぐ行くばい!」
「でも闇夜に断崖を登るのは~~」
「はい、闇夜の移動は危険です。無事な戦士たちもここまでの疲労が大きく、少し休ませ回復しないと断崖上の環境にやられるかもしれません」
「「環境!?」」
俺は断崖上は寒く空気が薄いこと、寄生虫や吸血虫によって病気になりやすいこと、魔獣が多いこと、天候が急変することなど説明した。
「むう、確かに万全じゃないとか!」
「神殿騎士殿こそ休んだ方が……顔色が悪いです」 パララが心配そうに覗きこむ「魔法の使い過ぎでは? 貴方の方が心配です」
「ありがとうございます、大丈夫です」 皆が心配そうな、不安げな顔に。申し訳ない。「今夜は断崖上は大丈夫です。問題は明日の夜です。オークたちは大軍で必ず来ます」
「「むうう~~」」
「今、上にはどのくらいの戦士がいるのかしら~~?」
「四十名ほどいます」
「オウオウ、それで上に送り込む戦士は五十でいいのか!?」
「正直、足りませんが『 策 』はあります」
「「策!!」」
「このような役割分担で、これから話すものを用意しておいてください」
俺が説明すると、皆が驚く。
「「そんなものを!?」」
「「それでいいのか!?」」
「「凄い量だな!」」
「はい、ソールさんが主になると思います」
「ええ、そのようですな」
「明日の昼くらいに半分できていれば」
「よし、任せてください!」
「随時断崖上に運ぶ役はホルベルクさんになるかと」
「任されよ!」
「その他の方はこの要塞の修繕を。ドワーフの方が主になるでしょうか」
「ばり任せんね! 土や石のことならドワーフったい!」
そう、ドワーフがいて助かった。彼らは地属性の妖精ゆえ、他の妖精たちよりも土や石への干渉力が高い。
「残りの方々はエルフ、ドワーフのサポートを。恐らくまだファラレルの森やルーパスの丘、それ以外にも多くのオーク部隊がいるようなので防備を怠らないよう」
「「そうだ! まだいる!」」
「ばってん解放した人質ば、まだここで匿うばい!」
そう、ここで解放して集落へ送っても、また襲われる可能性もある。
「あらあら、食料確保も急務ですね。籠城ですし、断崖上へも物資を届けないと」
「そういえばオークたちに奪われた家畜が峡谷の奥にいたわ」 パララが手を打つ「そこかしこに池もあるし、何とかなるかしら?」
「断崖上なら~~、さらに防寒着も必要ですか~?」
その後も色々な問題に対応すべく、協議をする。
夜が更けて、峡谷に夜の帳が降りて来る。
「勝負は明日です。しっかり休養してください!」
「「おう!」」
「神殿騎士殿こそな!」
「はい!」
と言いつつも、俺は怪我人を診ることにして、会議は解散となった。
ふぅー、体が重い。霊力の枯渇が体にも影響を与え始めてきたか……
でも怪我人を助けたい。
俺はゲルへと急いだ。




