断崖への旅路3(断崖登坂)
紺碧の空に映える白い雲
雲に蓋をされる広大な台地
広がる台地から流れ落ちる水の柱
水の柱が生む巨大な湖
湖の上に佇む人と獣人と妖精
■コークリットの視点
ついに辿り着いた。
リートの大断崖に。
ふうぅーー。ふうぅーー。落ち着け。
胸がドキドキと高鳴って苦しい。
圧倒的な迫力の大自然を目の当たりにして、胸が激しく拍動しているんだ。
人は驚異の絶景を目の当たりにしただけで、心を動かされるものなんだな。叫びだしたい! 声の限りに、叫びだしたい!
そう思えるほどの絶景が、俺の前に広がっている。
「ふううーー、ふううーー。大断崖、瀑布群、湖……何てことだ!」
何だこの気持ち。
何故か、生まれて来たことに、無事に成長してこれたことに感謝してしまう。
そして神殿騎士になれたことに、仲間ができて俺を支えてここまで連れて来てくれたことに、ただただ感謝してしまう。
「皆さん! ありがとうございます!」
「ぶはは! 突然何を言ってんだ!」
「フ、何の礼だ?」
「でしし! お礼を言うのはこっちだよ!」
「うふふ、おかしなコークリットさん」
圧倒的な存在に触れ、全てに感謝したくなった俺。
でもその気持ちは皆も同じようで、お互いに握手をしてここまで辿り着いたことを喜びあう。
ここがリートの大断崖か!
何て高さの大断崖だ。
高さ千メートルはあろう断崖は、断崖上からの小さな滝が流れ落ちるも、その高さゆえ空中で消え失せ、雲や霞、霧になる。それはまるで薄いスモークのヴェールを纏った歌劇舞台のようだ。
そんなヴェールを纏った大断崖には、一際濃いヴェール、水煙を上げる場所がある。
断崖を引き裂くような渓谷状の大瀑布、そう大瀑布の階段だ!
高さ百メートルくらいの階段状に、奥へ奥へと続いているであろう大瀑布の階段だ。水煙が濃すぎてよく分からないけれど、奥に奥に続いている!
大自然というのは、ただただ自分の想像を越えるな!
世界はこんなに広大で、圧倒的な存在が、誰にも知られず存在するなんて。
しかし……あまりにも大きすぎて遠近感がおかしい。
遠く数キロ先にあるハズの大断崖と段階瀑布が手で触れられそうな近距離に感じる。
何だこの錯覚?
触れられそうなので手を伸ばすと、横から柔らかな声が。
「うふふ、私もです。錯覚ですよね。何だか手を伸ばせば触れられそう」
隣に来たシスさんもまた、手を前へ伸ばし水の羽衣に触れようとする。
と俺は不謹慎にもその細くて、形のいい白い指にドキリとする。何て綺麗な手指だろうか。実に女性的で繊細な手と指で、俺のごつくて大きな手と指が恥ずかしくなる。
いつもならここでローレンさんが割り込んでくるんだが、ローレンさんは既に俺の逆隣りにいて動けない。くく、シスさんはローレンさんにやきもちを妬かせようしてるのかな? 魔性の女か。
遠くに立ち昇る美しい羽衣を見つめる彼女の横顔は儚げで、繊細な美しさで、思わず目を奪われてしまう。おっとマズイマズイ。心までも奪われてしまいそうだ。
俺は一回深呼吸する。
「ふぅーーー。水の楽園に目が奪われてしまいますが、改めて見ると凄い大断崖ですね」
俺は両手を広げる。リートの大断崖を模するように。
そんな俺を見て、普段笑うことが少ない神経質そうなローレンさんが、自慢気に口の端を少し上げた。
「フッ、これがリートの大断崖だ。人間で到達したのは、神殿騎士殿が初めてだろう。気の済むまで眺めるがいい」
「言い方っ! もう、何なのそれ。ローレンの所有物?」
「フンッ」
逆隣でブツブツと文句を言う可愛い声。くく、儚げが一転、プルっとした唇がとがって。本当にいいコンビだな。
しかし、ローレンさんの気持ちも分かる。大断崖を知っている人からすれば、初めてそれを体験する者に自慢したくなるのは当然かもしれない。俺は呟く。
「さてどこから登るとするか」
「やっぱり、水の階層を一段ずつ登って行く方針ですよね? 大断崖を千メートル垂直に登るんじゃなく」 とシスさん。
「そうなるでしょう」
彼方まで続くリートの大断崖は、ほぼほぼ絶壁で頂上まであるから登れそうにない。
でも水の棚壁は複数の段状に流れ落ちている。一段一段、休みながら登って行けそうだな。
「フッ。ならば滝と滝の間の岩場が狙い目だな」
「はい、そうだと思います」
瀑布は横幅が数キロあるものの、良く見ると所々途切れている。岬のような突出した岩場で幾つも区切られている。その突出した岩場はデコボコとおうとつがあり、縦一列に樹木が森を形成しているから、乗れそうではある。
「うーん、僕たちでも登れるところがあるといいけれど」 テルが腕を組む。
「うん。そうだな」 俺は頷く。
人間や妖精なら最悪ロッククライミングすれば登れなくはないが、ケンタウロスやウォーエルク、一角馬は難しい。後続隊の獣人たちのためにも、登坂ルートを確立しておきたいところだ。
「フム、水の精霊魔法で滝を登れなくもないが、重さがネックだな」
「うん、そうね」
「水の精霊魔法ですか?」
便利な魔法があるんだろうか。
「フッ。水の精霊で蛇を作るイメージだ。蛇の頭に皆が乗り、鎌首をあげていくような感じだ」
「なるほど」
「う~ん。でもウォーエルクに一角馬、さらに荷物とかあるから、ちょっと重くて限界があるかも」 シスさんは難しい顔になる「一人一人で行く方法もあるけれど、回数が増える分ちょっと霊力が心配かしら? 湖妖精ならなあ」
「ニンフだと何か?」
「ええ。基本的に妖精はどの属性の精霊魔法も使えますが、特に自分の属性の精霊は強くなるんです」
「自分の属性の? なるほどニンフなら水系の精霊魔法が強いと」
「そうなんです。ニンフなら一度に運べるくらい強い精霊を出せそうだけれど、他の妖精には限界かなあ。霊力を使いきるくらい頑張れば……」
「そうですか。でも魔物の襲来に備えて霊力は温存したいところで──」
とその時、ドドドドッと湖の中央が盛り上がる!
あっと驚く間に、角と牙を持つ巨大亀が! トドに似た大型の生物を咥えて! うおおお!
ドッバーーーーンッ!!
「「うおおおっ!」」
大波が次々に押し寄せる!
エルクに乗っているのに、舟に揺られるようだ! テルメルクだけが揺れる足元に大喜び!
「魔獣対策に霊力の温存は必須! 水の精霊は最終手段で、やはり水棚を登れる場所を探しましょう!」
「ウム、それがいい!」
「ぶっはっは、とりあえず湖を迂回して行ってみよう!」
「「了解」」
かなり遠回りになるけれど、湖の周辺部を通りながら進む。
久々の広大で平らな足元にケンタウロスもエルクも一角馬も喜んで湖畔の水面を走る。特にテルが「ひゃっほ~~!」と叫びながら先頭を行くと「待て待て~~!」とシスさんが嬉しそうに追いかける。「フン、いつまでも子供だ」とローレンさんが優しい目で見ていたのが印象的だった。
湖畔に沿ってグルリと進めば、色々な事が分かる。
湖からは何本もの川が流れていて、青砂が下流へと流れ続けている。
どうやら俺たちが見つけた青砂の流れる川は何本もあるうちの一本であり、マヌー湖沼帯に流れ込む「最初の一本」を見つけたに過ぎないようだ。もしかしてもっと楽な道があったかな?
一時間も馬に乗っていると、気づけば瀑布が見えなくなっていて、リートの大断崖近くまで辿り着いていた。
「はわぁ~~、す、凄い断崖……」
「でし~~~、こ、怖い……」
「ぶはは、笑うしかないなこりゃ!」
リートの大断崖を仰ぎ見て、感じるのは畏怖。
圧倒的な質量をもつ剥き出しの地殻が発する重圧。そう、地殻。岩というには大きすぎる!
上空は霞んでよく分からないが、重厚で荘厳な地殻の絶壁が聳え立って……
なんなんだ、この巨大な地殻の壁は! クラクラする!
「オ、オーバーハングしてる、のね……こ、怖」
「で、でし……上から迫ってくるみたい……じゅ、重圧感ってやつ?」
「ぶっはっは、本当に上の大地に立てるのか!?」
皆が上を向いて歩く。
上を見ずにはいられない、圧倒的な存在感。
重そうなもの、大きいものは畏怖や畏敬の念を禁じ得ない。
「断崖絶壁だけど、幾つも森があるんだね」 とテル。
「絶壁に棚地があるのね」
そう、断崖絶壁には棚のような出っ張りがあるようで、そこには樹木がこんもりと繁っている。鳥が飛び交っているから実をつける樹木が多いんだろう。
「ああ! シス姉ちゃん! 断崖から細い滝が落ちてるけど、途中で消えちゃう! それが霞雲になるんだ!」
「ほ、本当だわ! 霞みの正体は滝がそのまま雲になるからなのね!?」
そう高過ぎて、水が大地に届く前に、風で水蒸気になってしまうんだ。
凄いな、前人未到の地は!
想像を軽く越える自然現象がある!
「フッ、上ばかり見ているなよ? そら、前の方に水煙が見えてきたぞ」
「「おお!」」
大断崖が先の方で途切れていて、そこから水煙が出ている。
瀑布はあの断崖の角を折れた奥にあるようだ!
ドドドドドッという水の炸裂音と肌に感じる多量なミストが期待感を高める!
「さあ、断崖を折れるぞ……」
「「おおおおおっ!!」」
再び沸き立つ歓声。でも爆裂音に掻き消される!
何て音! 何て衝撃! 何て水量!
断崖を折れると、水の大景観が!
「はわぁ~~、遠くから見るのと全然違う!」 声が微かに聞こえる!
「でし~~~、すっごい迫力!」 こっちも微かだ!
「ぶっはっは、こりゃあ大瀑布だな!」 微か!
そう、大瀑布だ。
破壊力たっぷり、巻き込まれれば粉砕を免れない圧倒的な瀑布!
繊細さも優雅さもない、豪快でけた外れな瀑布!
水煙が積乱雲のように立ち昇っている!
「フハッ、凄い音の爆弾だな!」 大声のローレンさん!
「体が揺さぶられてますね!」
瀑布が放つ振動が体を揺さぶる。
ドドドドドッという音と共に、体を、というか全身の細胞が揺さぶられる。
気持ちいい! 心と体が、波動で活性化させられているようだ!
そして風! 水の炸裂で風が前方から! 粉砕された水の粒子を含む風が、嵐のように押し寄せる!
シスさんが美しい金髪を抑えながら俺の近くで叫ぶ!
「これ! 大声も大変だし! 水の暴風もつらいし! 風の魔法で音と風の伝わり方を和らげます!」
「お願いします!」
シスさんが精霊魔法を唱えると、水の爆音と台風のような風が一気に和らぐ。凄いな!
「ぶっはっは、やっと普通に喋れる!」
「でしし! 耳がおかしい~~!」
「凄いな、精霊魔法」 俺は感心した。
「えっへん!」
ローレンさんに先を越されずにすんでご満悦なシスさん。可愛い!
髪が水に濡れて独特の色香が……まさに妖精といった神秘的な美しさで俺の胸に迫る。マズイマズイ。彼女は俺の心など気づかず、瀑布を見て目を輝かす。
「はわぁ~~、綺麗な虹~~」
「でし~~~、綺麗だなぁ~~」
瀑布に近づくと、水煙の中の至るところに虹がかかっている。これは綺麗だ。
砕かれた微細な水の粒子が太陽光を纏って虹を生み出している。さらに砕かれた水の粒が大気中に放出されていて肌にひんやりとして心地よい。これは凄い。
とシスさんがハッとした。
「コークリットさん。そういえばこの水煙を吸い込み続けて大丈夫でしょうか?」
「なるほど。確かにこの大気中に『 青砂 』が放出されている可能性もありますね。調べてみましょう」
俺は探索圏を使うと、大気中に青砂が舞ってないか調べる。
「ああ、舞ってますね。念のため風の守りをお願いできますか?」
「分かりました! では──」
「フッ、『 風精霊よ、風の守りで彼の者を守れ 』」
「ああっ!!」
くく、ローレンさんはまたシスさんより先に、俺に風の守りをかける。
シスさんは「もうっ! もう~~~~っ!!」と頬を膨らませて、可愛い! リスみたい!
本当にいいコンビだな。
「ぶっはっは! 鳴き方は牛で、頬はリスか?」
「でしし~~、膨らんだ~、膨らんだ~!」
「フッ、子供っぽいことこの上ないな」
うう~ん。シスさんのこんな表情を引き出すのはローレンさんだけだ。やはり二人は深い絆があるんだろう。羨ましい。彼女が気を許している証拠だ。俺にもそうして欲しいから、俺もからかう。
「ふふ、じゃあ自分も」
「☆ж◎~~~~~っ!?」
「ナッ、ダメだ!」
「ふふ大丈夫です、反対側の頬なんで」
「何が大丈夫なんだ!?」
「ぶはーっはっはっ!」
振動が心地よくて皆リラックスしているのが分かる。いいなあ、大瀑布群。
見上げると、流れ落ちる瀑布と瀑布の間に岩のしきりがあって、樹木が茂っている。僅かな土地を使って樹木が天を目指すように生えている。よくもまあ、あんな僅かなオウトツに生えるよなあ。瀑布とは逆に天に向かって伸び上る、緑の滝登りだ。
「樹木が崖を遡ってますね。凄いなあ、あんな狭い場所で」
「フ、凄かろう? それが植物の強さだ。見習うがいい」
「言い方っ! もう! 何で偉そうなのよ!」
「フンッ」
くく、この二人の掛け合いは様式美だな。
以前はアルさんがいたから、都度アルさんにブーブー言っていたけれど、もう直接本人に言っている。むう、やはりとても気安い関係なんだろうな。いいなあ。そういえばシスさんは俺の前だと緊張した感じだから、ローレンさんの前でだけ自然体の彼女がいるんだ。二人の仲はそういう物なんだろう。
羨ましくて、二人を見つめてしまった。
「フッ、どうしたマジマジと?」
「いえ何でも。そういえば土を砦や宿坊に形成していましたが、岩でもできるんでしょうか?」
「フム、もしや岩で階段を作る気か?」
「はい。できませんか?」
もしそれができるなら、地殻そのものであるリートの大断崖さえも登れるが、どうだろうか?
「フ、結論から言うとできない。残念だったな」
「そうですか」
やはりそんなムシのいい話はないか、残念だ。
そんな俺の内心を慮ってか、シスさんが申し訳なさそうに言う。
「言い方っ! もうっ。あの、岩は土と違って組織の変成や結合に不向きなんです。時間をかければ変成できるんですけれど」
「それは残念」
「あるいは地妖精なら土や石などに強く干渉できるから、他の妖精よりは短時間でできるかなあ?」
「なるほど、ドワーフか」 俺はふと思い当たった「お二人はエルフだから、草木を橋や家、あるいは皿やコップにするのが得意なんですね?」
「うふふ、そうですね。他の種族ならもっと時間がかかります。草妖精や花妖精も草木を操るのが得意ですよ」
そうか、やけに簡単に木工品を作るもんだと思っていたが、森の妖精だからか。そういえばエルフの里の『 迷いの森 』なんかもエルフ特有なんだろうな。
と俺は断崖に根を張る蔦を見てふと思った。
「じゃあ、蔦で橋を作るとかか」
「そうですね、できると思います」
「なるほど。ではできるだけ登れそうな断崖を……」
調べようとしていたら、突然テルが大きな声をあげた。
「あっ、山羊!」
「「え?」」
テルは瀑布ではなく、瀑布が削った断崖を見ている。水煙に霞む断崖を見れば、百メートルほど上の断崖を山羊の群れが移動している。
ほお~~、凄いな。
ほぼ垂直か逆にオーバーハングしてさえいる崖をヒョイヒョイと移動して行く。そう、リートの大断崖はオーバーハングしては出っ張りの棚地を作り出し、そこに空中庭園とも思える森を作り出しているわけだが、瀑布を挟み込む側面に多くの棚地ができているように思える。
瀑布が永い年月をかけて削ってできた断崖の出っ張りという感じか。
棚地が多いから餌場が多く、きっと山羊たちはそんな餌場の棚地を渡り歩いているんだろう。草木は水煙の水を集めて育つんだな。
「う~ん。山羊が行けるなら僕も行けそうだな」
「「え?」」
「あの二十メートルくらい上にロブナの巨樹が生えてる場所があるでしょ?」
「え? ああ、あるな」
そう、ここら辺の断崖では最も大きな棚地だ。棚地から、水煙の中でも分かるほど、樹冠の勢いが旺盛なロブナの巨樹が生えている。
「ちょっとこの荷物、置いておくね」
「「え?」」
テルは馬体の両脇に括りつけていた荷物を下ろすと、手近なお椀型の岩に飛び乗った。
「お、おいおい!」
「ほら、この岩からこっちに飛び乗って」
テルはピョンと一メートルほど離れた断崖のコブに飛び乗った。
「「おい!」」
「テル君!?」
「ほら、今度はこっちの出っ張り、次は逆を向いて」
「ま、待て待て!」
そのままヒョイヒョイと!
おいおい! 待て待て!
怖いな子供は! 考えなしで怖いものなしだ!
「ちょっと湿ってるな!」
「「危ないぞ!」」
「「帰って来い!」」
と説得しても、どこ吹く風!
どんどん登って行って、滝の音で声が届かない場所まで行ってしまった! おおい! 慌ててシスさんが風の精霊で声を届ける。
「"テル君、戻ってきて!"」
「"テル! 分かったから! 戻ってこい!"」
「"でしししっ! ほら簡単! もうさっき話した場所に着いたよ!"」
なんて奴だ! 本当にロブナの巨樹が生えている棚地に着いてしまった! おいおい! 二十メートルって言ったら、ローマリア王都の王城を囲う城壁並みだぞ!? しかも早い! 五分もかかってないぞ!
「"ぶはは! そういえば昔の偉い人が言っていたな! 『 鹿にできるなら馬にもできる 』って!"」
「"山羊でしょ!? 崖を移動してたの"」
「"おい! 降りられるのか!?"」
「"あれ!? ここから道があるよ!?"」
「「"ええ!?"」」
「"下からだと見えなかったけど、斜面に五十センチくらいの道がある!"」
そういうと、テルはトコトコと斜面を歩き始めた! 本当に道がある! 水煙も相まって下からじゃ分からないんだ!
皆が心配しているというのに、テルはお構いなしに壁伝いを歩んでいく! おいおい、本当に待て! っていうか、たぶん俺も子供の頃そうだったから、親代わりのシスターの気持ちが今、まさに理解できた! シスターあの時はごめん!
と意識をテルに戻せば、霞む断崖のなかでもうあんなに小さい! マジかアイツ!
テルはそのまま進んで行くと、何と滝の裏側に入って行く! あいつマジかっ!!
「"スゲェ! 滝の裏側だ! スゲエ!"」
「「"帰ってこいって!"」」
「"テル君!"」
「"うわ、滑りやすいな!"」
「「"分かったから帰って来い!"」」
「"スゲエスゲエ! まだまだ続いてる!"」
「「"分かった! 分かったから! 本当にもう帰ってこいって!"」」
「"あっ! 洞窟!"」
「「"ええ!? 洞窟!?"」」
何だって!? 滝の裏側に洞窟が!?
「"ま、待てっ! 魔物の巣かもしれない!"」
俺は慌てて千里眼を飛ばす。
うおお、滝の裏は洞穴状になっていて、ものすごい高い!
何だここは!
巨大なホールか!?
断崖と流れ落ちる水が作り出すアーチ状のホール!
荘厳というか、雄大というか、大自然の作り出した天然の巨大ホール!?
テルはもう五十メートルくらいの高さにいる! よく怖くなかったな! 水煙や霞で下が見えにくいからか!?
と確かに崖には細いけれど道があって、歩ける! 濡れて滑りやすそうだが、歩ける!
そしてテルの目の前に、断崖の中へ向かう洞窟が!
デカイ!
亀裂のような洞窟!
「"千里眼で調べる! そこで待機だ!"」
「"了解!"」




