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断崖への旅路(渓谷)

また、キリのいいところまで連投します

 


 閉ざされた大地の隙間

 陰を抱く渓谷

 渓谷の隙間を流れる渓流

 静かな水面の上を歩く一団

 ケンタウロスとエルフと神殿騎士



 ■コークリットの視点



 ああ凄いな。涼やかで、密やかな渓谷が続いている。

 密やかさを生み出すのは、断崖。川を挟むように、のっぺりとした縦に筋張った断崖が伸びて、日の光を遮り独特の暗がりを作る。

 はじめの頃は、高さ数メートルしかない岩場だったのに、進むごとに崖が伸び上って今や見上げること二十メートル近くあるだろう。

 きっと日が射し込むのは一日のうち、一時間もあるまい。太陽が渓谷の頂点に来たわずかな時だけ、光が真上から射し込むんだろう。断崖の途中から生える木々は、そのわずかな時に光合成をするに違いない。

 こんな渓谷で生きる草木は可哀想かな?

 生きることに恵まれないこの場所では……

 そんな「恵まれぬ環境」を思うことで、自分の置かれた子供時代のことを思いだし、わずかに心が痛む。

 自らの不幸を呪ってしまう……


「……ふぅ」

 いや、そんなものは自己憐憫だ。

 自分を可哀想に思って気持ちよくなろうとしているだけ。過去から抜け出せない、未来を見ようとしない弱い者の考えだ。だから、そんなことを思い出すな。考えるな。過去は変わらないんだ。今は日の当たる場所で、好きな場所へ行けるだろう?

 気分を変えるように周囲を見る。


「……」

 深い水の色だ。

 その色は苔緑モスグリーン。淀んでいるのかと思わせるも、水底に広がる砂や岩が透過してよく見える。

 綺麗だ。実に。自然の奥深さを感じる。

 水底の断崖には穴が空いていて、ウツボに似た巨大魚がこちらを覗き見ている。水底からはどんな風に見えるんだろう?

 何せ、精霊魔法で水面の上をウォーエルクや一角馬で歩いているんだから。エルクたちの蹄が水を踏みしめると、膜があるようにわずかに沈みこむが水の中に突き抜けることはない。本当に凄いな、精霊魔法は。


「凄いな、精霊魔法は」 独り言を呟いたつもりだったが。

「うふふ」 シスさんが嬉しそうに「でしょう? でしょう?」

 どんな時も明るく愛情深さを感じるシスさんに胸が癒される。ああ、切れ長の目が糸を引いて、赤ん坊のような艶々な頬が朱に染まる。


「フン、なぜお前が誇る?」

 くく、氷のような美しい顔に、眉間のシワがもったいないローレンさん。シスさんは頬を膨らませプイっと顔を背ける。相変わらず息の合った仲のいい二人のやり取りだ。明るいシスさんに冷静なローレンさんは理想のカップルだと思う。と索霊域に反応が。


「あ、ハルさん。左後ろから大きなウツボが襲って来ます」

「よし! 食材だな? 任せろ!」

「食材!?」

 いや? そう取る!? 俺より屈強なハルさんは足元を見ると、「ぶはっはー!」と槍を川面に突き刺す。一瞬、水面が布のようにへこむも、そのまま突き破り、槍が半ばまで沈みこむ。引き抜くと、槍に絡まるようにしてもがくウツボが!

 デカッ! 三メートル級だ!


「ぶっはっは、昼飯ゲット! ホレ、お嬢ちゃん」

「ひゃあっ! 『ホレ』と言われても!?」

 ぐねる魚を目の前に差し出されて目を白黒させるシスさん。くく、ハルさんは相変わらず豪快でおおらかで。一緒にいるとこちらの気持ちも大きくなる。


「シス姉ちゃん、焼いてタレを塗ってパンに挟んで食べようよ!」

 イタズラっぽい顔で笑うテルメルク。くく、故郷の弟たちを思い出してこっちまで子供に戻ってしまいそうだ。


「おお~、サンドね~~」 切れ長の目が垂れる「うふふ、いいわよ」

「でししし、やったあ~~!」

 シスさんとテルメルクのやり取りは見ていて微笑ましい。と眉間にシワを寄せた神経質そうな美青年のローレンさんが続く。


「フン。しかしこの渓谷を抜けんことには調理場もあるまい?」

 最近分かったことだけれど、この眉間のシワは緩みそうな顔を必死に隠しているためじゃないかな? シスさんの朗らかな笑顔で緩みそうな自分の顔を。くく。ひねくれものだなあ。


「調べてみますね」

 俺は千里眼を渓谷の先へと飛ばす。緩やかに蛇行を繰り返す渓谷は静かでとても神秘的で、神殿のように思える。自然が作り出した神殿だ。


「数キロ先に岩場があります。そこでなら」

「よ~し」

「でししし! やったあ!」

 今、ここにいるのはこのメンバーだけだ。俺、ハルさん、テル、ローレンさん、シスさんの五名だけだ。

 オークとの戦闘から早くも三日。

 隊を割った後、俺はこのメンバーを連れてさらに川を遡っていて、ずいぶんと険しい旅路になってきた。何せ、川の上を通らなくてはならない状況になったから。

 隊を割ったのには理由がある。

 三日前の晩のことを思い出した。



 ◇◇◇◇◇



「「隊を分ける!?」」

「はい。川を遡る組と獣人の護衛組に分けようと思います」

 俺の言葉に皆が口々に問いかけてくる。


「なぜ?」

「分けるくらいなら、皆で獣人の護衛をした方がよくないか?」

「うん、その方がいいですよ」

「なぜわざわざ分けようと?」

 皆がワッと集まってきた。俺は説明の要点をまとめる。


「当初は皆で獣人の護衛をと考えましたが、青砂が原因でオークらの徒党が起こっているということなら、その根を断たないとどんどん状況が悪化する懸念があります。例えば、青砂に操られるオークがさらに増えていくと」

「「さらに増える!?」」

「「マジか!?」」

「最悪の想定ですが」

「そうか……なるほど。確かに」 スランさんが顎に手を当てた。「オークにも数多くの部族があると聞きます。山海や樹海に沢山棲息していると。元来、部族同士で争いが絶えないオークが青砂に操られて徒党を組む、なんてことも考えられる」

「「ええっ!?」」

 今回の部族もそれに近い。樹海に巣食う一つの部族が、操られた強力なオークに従属し、獣人たちを襲う。もしそれが増えたら……?


「はい。元を断たない限り徒党が増え続ける。そうするとここにいる獣人の皆さんを守れても、それ以外の場所にいる獣人の皆さんは救えなくなります」

「むう」「なるほど」

 これだけ広大な樹海地帯と徒党を組む神出鬼没なオークたちを、対処療法で捌くにはこの人数では無理だ。カバーしきれない。

 元を断つためにも川の先へ進んで青砂について調べておきたい。


「神殿騎士様。じゃあ、この獣人の皆さんを別の集落へささっと送り届けて、皆で川を遡った方がいいんじゃない?」 テルが言うと皆が「そうだ、そうだ」と頷く。

「うん。でも実は、別の集落へ送り届けたらやってほしいことがあるんだ」 俺は答える。

「「やってほしいこと?」」

「かなり重要な役割で、時間がかかる可能性がある」

「「重要な役割!?」」

「「時間が?」」

「はい。まず護衛組の方は、三つやってほしいことがあります」 俺は一呼吸置くと指を三本立てた「まず①ここには女性や子供が多いことから獣人の集落に着くまで護衛すること。さらに②『 砦 』を作ってほしいこと。できれば小さく分布している集落は合流して大きな集落になったうえで、砦を作った方がいい。そして③青砂を一緒に追う戦士たちを募ってほしいこと。獣人だけでなく妖精の戦士も」

「護衛」

「砦を」

「「青砂を追う戦士を募る?」」

 最後の部分だけ皆さん意外だったようだ。


「はい。この青砂は、放っておくと獣人や妖精、さらにもっと大きく樹海や山海の動植物に甚大な影響を与える可能性があります。私一人の問題でなくなって来ました。獣人の皆さんは守りを固めたうえで、有志を集めて川を遡り協力して解決に当たった方がいいと考えています」

「「なるほど」」

「「そうだな」」

「遡上組は護衛組③の斥候も兼ねる。先見隊として進むということです」


 まとめると遡上組は

 ①青砂調査

 ②上流にいるかもしれない獣人救助

 ③後から来る別動隊の斥候。


 護衛組は

 ①助けた獣人護衛

 ②砦造り

 ③別動隊の組織化、というところだ。


「フム。では組分けはどうするか」

「護衛組の方なんですが」 大変な役だから俺はドキドキしながら言った「リーダーはスランさんに頼みたいんですが」

「はい、そうですね。任せてください」

 おお、さすがスランさんは俺の意図が分かったようだ。

 彼は広範囲に危機察知能力が高いからオークらの動きに鋭敏に反応してくれるだろうし、さらに交渉が上手だから多くの獣人と妖精たちを連れてきてくれると思うんだ。良かった、断られなくて。


我々(エルフ)はちょうど四人いるし、二対二で分かれようか。ローレンは遡上組に行ってくれるかい?」

「フ、そのつもりだ」

「じゃあ、あとは姉さんとアルだけど遡上組は」

 スランさんがシスさんとアルさんを見ると、二人は顔を見合わせた。そしてシスさんが手を挙げようとしたとき。


「フム、遡上組は未開の地ゆえ危険だろう? 私一人でもいいんじゃないか?」

「!」 俺はハッとした。

「ええっ!?」 と手を挙げ途中で固まるシスさん。

「どうだろう、神殿騎士殿?」

「そ──!」

 俺は、即答できなかった。

 実は当たり前のようにシスさんは遡上組に来てくれると思っていて。当然のように戦力として考えていた。彼女はいつも協力してくれているから……

 彼女を見ると目で訴えてくる。「遡上組に入りたいから反論して!」と。

 でも「未開地だから危険」と女性に配慮するローレンさんが正しいような気がして。

 そ、そうだよな。でも……


「……」 どうしよう。

 彼女に来てほしいというのは、ただ単に俺の願望じゃないんだろうか……。彼女がいると楽しいし、そばにいてほしいという、協力体制とは関係ない俺の願望じゃ……? 彼女は尚も俺の言葉を待っている。

 どうしよう? どうしよう?

 来てほしい。彼女について来てほしい……

 悩んでいると助け船がやってきた。


「ふふ、コークリットさん。その葛藤で、気持ちが分かりますよ」 スランさんが優しく笑うと「姉さん、姉さんは遡上組に行った方がいいと思うけど、どうかな?」

「!」

「う、うん! 私も遡上組の方がいいと思う!」

「ホウ? なぜだ?」

「え、えぇっと」

「うん。食事や身の回りの世話を専門に行うサポート要員がいた方がいいと思ってね。未開の地へ向かう旅だからこそ満足な栄養、衛生面を考えないと続かないかなって。でも男の人が食事とか寝床とか衛生面とかまで考えながら調査の旅って大変じゃないかな?」

「そう! そうだよね! そう思う! 私もそう思う! 実はそれを言おうとしていたの! 先に言われてしまったわ!」 本当か?

「フン、取って付けたように」 うん、本当。

 でも彼女が来てくれる。俺は、思った以上にホッとしている自分に驚いていた……


「いいですよね、コークリットさん」

 優しげに微笑む美青年のスランさん。その優しげな笑みは、俺の心を見透かされているようで、恥ずかしくなる。


「お願いします」

「ぶっはっは。ではケンタウロス側からは、まず私が遡上組に入るとして」 ハルさんが他のケンタウロスを見ると。

「じゃあ、僕もサポート要員で色々な荷物を運ぶよ! シェルパが必要だよね! ハルさんも神殿騎士様も戦闘のときとか、荷物があったら邪魔でしょう? 大事なときに邪魔な荷物があったり荷物を運ぶのに常に疲れていたら大変だし! それ意外でも、捕まったケンタウロスを助けるときも、子供という存在が絶妙に相手を油断させられたし、女性や子供って使いようによって大きな戦力になるんじゃないかな!」

「「真似すんな!」」

「ぶっはっは! 分かった分かった!」

「くくっ」 俺はおかしくって苦笑が漏れた。

 スランさんもテルも本当にうまいことをいう。


「「あ、またちょっと笑顔が!」」

「えっ!?」

「あ、消えた」「意識しない方がいいですね」

 むう、そうだな。意識すると笑みが消えるのかもな。楽しい仲間といると自然に笑みが生まれるのかもしれない。


「では遡上組はハルさん、テル君、ローレンさん、シスさんで。残りのメンバーは獣人の皆さんの護衛をしつつ、仲間を集めて川を遡って来てください。先発隊がどのルートを通っているかは目印を残しておきますので」

「「はい!」」

「さて、あとは」

 俺は戦場跡を見た。そこにはオークやヘルハウンドが倒れているが、いくつかうめき声が聞こえてくる。さすがの生命力だが、こんなときは苦しさが長く続くから悲惨なのかもしれない。


「む、まだ生きているか。止めを刺してやろう」 とハルさん。

「その前に知っていることをすべて話させようと思います」



 ◇◇◇◇◇



 切り立つ渓谷の日暮れは早い。

 細く狭い天にはまだ青空が見えるものの、川面付近は闇が広がっている。目が慣れると、ゆらゆらと揺らめく水面にわずかな光が陽炎のように見えて、奥深い神秘性を感じる。

 早めの野営に取り掛かった俺たちは、狭まった峡谷の宙に宿坊を作る。おお、空中リゾートホテルだ。


「本当に精霊魔法は凄いなあ」

 水面から数メートル上に蔓草を編み込んで床を作り、エルクや馬まで休めるようにした時は、心の底から感服した。凄すぎるよ、精霊魔法は。法王庁の支援者ではできないような方法で支援してくれる。これは百万の味方をつけた思いだ。

 光の精霊が放つ淡い光の中、程よい湿気と心地よい川音、そして不思議なゆらめきを感じながら、俺は黙々と青い石を調査する。

 子供たちや動物から見つかった青い石とオークから見つかった青い石の違いを調べるんだ。

 そう、二つは明らかに違う。明らかに違う。

 なぜ子供や動物たちとオークでは「操られ方」が違うんだろう?


「『 操る 』ということは……『 命令を出す者がいる 』と言える」

 そう、操るわけだから、命令を出す者がいる。

 マリオネットが良い例だ。マリオネットは糸で操作する人形だが、その糸を操る者が命令を出している者だ。今回、糸などないから「見えない糸」で操る。

 すなわち精神支配。

 精神を支配して、操る命令者がいるということ。


「だがマリオネットとは違い、『 大多数の被害者を一挙に直接的に操るというようなものではない 』と考えられる」

 そう、それは子供たちの証言からだ。

 子供たちは「綺麗な場所の夢を見て、そこに行きたい、誰にも教えたくないという焦燥感を持った」と証言した。驚くべきことに全員だ。直接的に操ることができるなら、そんなまだるっこしいことをせず、無理矢理操ればいい。

 あくまでも「夢を見せ、自分たちで移動する」という弱い指令、精神支配だ。


「だがオークたちは違う。他種族を誘拐してでも連れて行く、という行動は、綺麗な場所の夢を見るなどというものではない」

 どんな夢を見させられているんだ? 誘拐する夢? どんなだ?

 いや、もう夢などではない可能性もあるか。直接的に「誘拐して連れてこい」という指令が出ているとか?


「青砂を取り込んだ対象で指令が変わる? としたら、条件があるか?」

 考えられるのは、体の大きさで変わったり、霊力の質で変わったり、青石が形成される場所で変わったり?

 小さい体の者は夢を見させるが、大きい体の者は直接的な指令が出る?

 霊力の質が善良だと夢を、邪悪だと直接的な指令になる?

 青石の形成が腸内だと夢を、鼻奥だと直接的な指令になる?


「考えたらキリがないか」

 様々な可能性を考えておく。

 この場で実験や調査は限界があるから、ありえる可能性を考えておく。


「生物を操るのはなぜだ?」

 やはり、補食のためだろうか。

 効率的に食料を得るために罠を張る……マリオネットのイメージからは蜘蛛か? 蜘蛛が糸や巣の代わりに青砂を撒く。

 とすると、捕食者は生物か?

 例えば『 鉱物生命体 』のような捕食者がいる?

 鉱物と動物の中間的な存在は人間界にもいる。代表的なものは海の生命、珊瑚だ。

 珊瑚は種類によっては宝石にもなる鉱物的な要素もあれば、イソギンチャクのように捕食する個体もいる。擬似鉱物生命体と言えよう。

 未知の天空大地には、思いもよらない捕食者が存在していてもおかしくない。

 仮に『 鉱物生命体 』がいるなら、なぜこのタイミングで大規模な活動を開始したのかが謎だな。


 仮説はこうだ。

 ①鉱物生命体が存在する

 ②鉱物生命体は動けないため、自らの体を砕いて散布し、獲物に取り込ませて操る

 ③操った獲物を自らの元に連れて来て食料とする

 ④獲物によっては、指示を与えることもできる


 謎や矛盾も残る。

 ①今まで活動しなかったのは謎

 ②仮に活動していたとして、大規模になったのは謎

 ③自分の体の一部ないし大部分を砕くなど利用して獲物が取れないなら、生命体として存続不可能な矛盾も孕む。


「コークリットさん」

 声をかけられ俺の意識が現実に戻る。

 蔓草のカーテンを開けて入って来たシスさんの手にはお盆。

 途端に良い香りが広がるから、今日もエルフの紅茶を持ってきてくれた。ありがたいなあ。


「お疲れ様。青石の調査、何か分かりました?」

「いえ、それが何とも」

 実験や調査ができないことを言うと、可愛らしい顔が少し曇る。

 ああ、こんな表情も可愛いなあ。


「コークリットさん、そういえばそれを持っていて、貴方まで霊力を吸い取られたりしないんですか?」

「ええ、持っているだけだと霊力は吸収されないようです。体内に入れて初めて霊力を奪うようです」

 そう、霊力は体内を巡っているから、体内に入れない限り青石も外からは吸収できないようだ。

 霊力は血液のようなものだ。体内にあって外には現れない。まあしかし稀代の聖職者などは、溢れる霊力が体の内からほとばしり、周囲を包み込むほどの者もいたというから、そういう人だったらどうかな?


「実験で体内に取り込めば、どんな精神支配か分かるんですが」

「ちょ、ちょ!」 焦る彼女は可愛い。

「ふふ、しませんよ? しても自分は霊力が大きいので相当な時間と相当な量が必要になると思います」

「そ、そうですか~」

 ホッとして緩んだあどけない表情。可愛い。

 俺は無性にからかいたくなってきた。


「しかし、行き詰ってしまった時は自分の身で実験するのもありか。何か掴めるかも」

「は? ダ、ダメですって!」

「仲間がいると思うと実験に躊躇しないですみます」

「はっ!? はあっ!? 何言って?」

「仲間が助けてくれると信じて青砂を」

「はあっ!? 怒りますよ!? そんなことのために仲間になったんじゃないです!」

 彼女は本当に怒り始めた。

 おっと、もうやめておいた方がいいな。俺は目を細めて「申し訳ない、冗談です。からかいたくなってしまって」と言ったら、彼女は途端に頬を膨らませた。可愛い!


「もうっ! もうっ! もう~~~っっ!!」

 彼女は赤くなって怒ると、俺の二の腕の肉をつねって捩じり上げる。


「いたたたたっ! 痛い痛い!」

 結構痛い!

 え、あれ、こんなことするんだ?


「もうっ、今度からかったらホッペですからね!?」

「はい、すいません!」

 彼女はまだ唇を尖らせている。

 ふふ、でもいい気分転換になったな。彼女といると何だか癒される。

 後日、本当にホッペをつねられることになるとはこの時は思っていなかったな。



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