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ウメコのテンプル 並行世界の風水導師  作者: うっさこ
初めての反抗
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後の先を得る

そんな事があるだろうと思っていたのだ。当たり前だろう。

『犯行の終息宣言はまだ出ていない。』


 二度目の悲鳴がどこからか響いてくる。手にじっとりとした汗がにじむのが解る。

 身体をやんわりと覆っていた眠気が払われる。


 なぜこんな事が起こったのか、なぜ事件が必要だったのか。

 そして事件の後のこと。

 そう、まだ終わってないのだ。この事件の目的は明らかになっていない。


 事件の過程であるから、それが解らない。

 そういう考え方をついこの間、私は提示した。推測はできる。

 でも『何処までを求めているのか』の事件の完成形が未だ見えてこない。


 ただ可能性が一つある。

 それは、事件に何らかの不確定要素が混じり始めた場合だ。


 計画通りに進んでいかなければ、それを放置している訳がない。

 例えば、シリアルキラーによる快楽殺人であれば、致傷者が助かってしまうこと。

 例えば、組織的な主導者による目的犯罪であるならば、障害となる要素の発生。


 どちらにも該当する、イレギュラー。或いはそうした取り組み。


 額に汗がにじむのが解る。三度目の悲鳴。

 私はその場を動かない。街で最も見通しの良い場所。大通り。


 先日の蜘蛛の事件で、祭りに来ていた馬車の行商人などは行政の庁舎や管理地にて、衛兵が逗留する場所に集められている。そう、日中にポンコツから聞かされていた。

 勿論それを狙うと言った凶行も考えられる。


 でも違う。あの行商人たちは役割を持っている。

 「恐怖の伝播」だ。あるいは「混乱」そのものだ。

 彼らが居ること、そして何処かのタイミングでそれを「外へ持ち帰ること」。

 それが不要ならば、あの晩の蜘蛛の凶行は、漏れず、全ての馬車に襲いかかっていただろう。


 だから狙われるとするのなら。


『次に狙われるとするならば、庁舎や、事件解決に尽力している者です。』


 私はそう、ポンコツに伝えていた。

 これがどう作用するかはわからないけれど、私の一つの懸念としてだ。

 当然、そういう着眼点をもって推測すれば、私でなくてもその考えにたどり着く人はいるはず。

 その懸念に一票となるように。


 ココロの中で呼びかける。必死で平静をかき集める。

 そして、力を込める。


 私が「自分を確実に防衛できる手段」を行使する。

 陽はもう殆ど沈みかけている。まずは視界を確保しないと。

 そのための手段を偶然、私は獲得していた。


 ふわり。ふわり。ふわりふわり。


 足の早い羽虫たちが集まり、蛍光を照らす。その数はじわじわと増えていく。

 そこへ地平の間合いを抜け、雲の隙間から月の明かりも漏れて差し込んでくる。


 異常を作り出す。異常という空間を作り出す。

 犯人の想定していない空間を作り出す。


 叫び声が幾度も上がっているということはもう犯行は行われているはず。

 それも、恐らく直接的な方法。犯行者の接触による、直接の凶行。


 平穏という空間への死界からの襲撃。


 では、空間そのものが犯人視点から見て異常であったなら。

 そこへの手出しを躊躇するだろう。


 『貴方に気づいています。』そういう、主張が空間規模で起こっているならば、だ。


 仕事を重ねて、それほどの期間があったわけではないのだけれど。

 虫たちが大きくなっていることには気づいていた。


 弊社職員は、「日雇い社員」ではなく「雇用社員」だったのだ。

 その点を私は少し勘違いをしていた。


 豊富な栄養状態。それに依って培われ積まれていく、何らかの変化。

 経験を重ねた職人が、新しい技術を組み上げていくように。

 弊社職員は、何らかの成長なり、能力を獲得していっている。


 ちょっとした異常。これ自体が異常だったのだろう。

 これは昨日気づいたこと。


 『蛍』など、この世界で見たことがないのだ。

 だから『何処からか飛んでくる』はずがない。


 弊社職員、それも契約社員が、業務上の経験や、与えられた資産を担保に、何かを開拓したのだ。

 自ら光ることなどなかった虫たちが、それで光るようになった。

 なってしまった。


 他のバグマスターがそうだとはわからない。でも、事例としては知らない。

 件のバグマスターが存命であったのなら、それを語らう機会もあったかもしれない。

 けれど、それも叶わない。


 だから、今はこれが「そういうこと」なのだとして棚に上げておく。


 あえて言うならば幻想的、そんな空間が周囲には出来上がっている。

 そしてそれが出来てしまっている自分に、ため息をつく。

 本当は逃げ出したいし、隠れていたい隠していたい。


でも、その先の結果が、私には解ってしまっている。


 襲われるのが庁舎であり職員であるならば、『同時に患者も被害者になる』。

 日中に看病をし、治験というのもお粗末であるが、治療を試みている真っ最中である、患者たち。

 あのバグマスター一家の、青年の、最期に残された肉親も。

 傍で見守っているであろう、彼自身も。


 希望を照らしてしまった、『責任』を私は持つ必要がある。

 ほんの少しだけ、恐怖より、嫌悪より、その『責任』が上回っている。


「イザワウメコ、大丈夫。大丈夫。私は、無力じゃない。」

 弊社職員たちに呼びかける。臨時招集手当は、今度まとめて払うから。


クラリ。クラリクラリ。

 空間に異物が迷い込む。黒い影が、偲ぶでもなく、ゆっくりとはっきりと近づいてきていた。

Attention:コンソールコマンドが開いています

https://twitter.com/Chimena_LalkaOS/status/1425482500772532229

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アマテラス干渉システム Chimena
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