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98話 ドローンと多重影分身

今回登場したビートル人


ヒイラギ(35) チート名 【Vertigo】:ドローン兵器。

シスウ(37) チート名 【With or Without You】:多重分身。数に上限はないが2の階乗でしか増えれない。また、本体もない。

「追撃?マジかよ!?」


 ルナたちを撃退してからまだ数日しか経っていない。

 なのに第二陣を送り込んでくるなんて、タオユエンがそんなに重要な都市だっていうのか?

 それとも俺への当てつけか?


「敵は2人!コロアネデパートから少し離れたところの国立公園に突然現れたって!!」

「ってことは、AWLが連れてきたんだな」


 突然現れたっていうのなら、確実にAWLが連れてきたんだろう。


 だが、その国立公園にいた中で、AWLを目撃した人はいないそうだ。

 背の高い白髪に白メガネ。Yシャツにベージュのスーツパンツ着ていたな。やる気なさそうな顔しておいて、やるべきことはやる。

 そんな無能風有能サラリーマンみたいな格好した青年が、このタオユエンの街で目立たないわけない。

 その2人を連れてきて、すぐワープして消えたのだろう。


「じゃあその2人の目的は?」

「そもそも話通じなかった。しかもいきなり攻撃してきた。手あたり次第町を破壊しているみたい。ロウセエネたちが応戦してるけど……」

「ユッキーこれマジだかんね!!あいつら無茶苦茶」


 世界語覚えてないってことは最近転移してきた下っ端ってことか。

 何にせよ、俺たちが必死こいててめえらが壊した街を修理しているのを邪魔しやがってムカつく輩だ。


「パリキール王、アピア。そう言うわけで急用が出来た」

「ええ、我々は海から離れることのできない存在。故に皆さんの力となれぬのが残念です」

「ユキノっ!あっ、その……ゆ、ユキノとみんななら、勝てる、勝てるよ。無事を祈ってるから、その、が、頑張って」

「それなんだが……」


 俺は思う。

 そのビートル人2人の目的がわからない以上、とっととアピアたちはタオユエンから離れた方がいい。

 チュラに不審な動きをされると心配だが、海中で人魚とミリゥに勝てるやつなんていないだろうから。


「確かに……もっともです」

「だからリイとソコルル。先に一緒に行って、挨拶しといて」

「おまかせあれ。アピアちゃんは私がしっかり守るから」

「構わないが……連絡はどうするんだ?」


 比較的しっかりした2人を先に人魚王国に向かわせれば、俺たちがいないことの失礼もうまく収めてくれるだろうという人選だ。

 しっかりしている証拠に、ソコルルは連絡方法を気にしている。


「それは心配無用。ニコの作った携帯がある」

「携帯?」


 携帯をみんなに配る。

 機能と使い方を説明すると、みんなから驚愕と称賛の声が上がる。


「すっげええええええ!!未来だよ未来!!お姉ちゃああああん!!聞こえますかああああああああ!!!」

「うっさ!うっさすぎてわからんなあ」


 なんてことを言いながら、姉妹で少し距離を取って通話してみて確かに声が聞こえると楽しんでいる。


 ただどうしてか、ニコは俺が褒めた時より口角の上りが小さい。不思議だ。


「アピアたちの分はないんだ。すまんな」

「い、いえいえ全然…………あ、あの、やっぱり、欲しいです。つ、作ってくれますか……?」


 コミュ障特有の謎の気遣いで反射的に断ってしまったが、やっぱり欲しかったみたいだ。

 持ってくれれば連絡も簡単になるし、後で作ってもらおう。


「ユキノお!早く行こうよお!!」

「アキナちゃん、やる気だね」

「へっへーん!カクラ・アキナちゃんは、タオユエンのために頑張るんだから!」

「それじゃ。俺たち4人と1ドラゴンでそのふざけたビートル人を叩き潰してくるからよ」


 アピアとパリキールに別れを告げて、俺たち4人はヒータンに乗ってタオユエン市街に向かった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「はい!というわけで、俺は今タオユエンという街に来ておりまーす!」

「録画したところで見るやついないでしょ」


 タオユエン国立公園。

 大都市の真ん中に存在する緑のオアシス。

 そんなタオユエン市民の憩いの場が2人のビートル人によって破壊されていた。


 1人は少年で名前をヒイラギという。

 身長もそれほど高くなく髪の毛に少し癖がある。何より童顔なので現代日本で高校1年生だったとは見えない。

 そんな彼が破壊された公園をバックにスマホのインカメに何かしゃべっているのを、隣に立つ青年は冷ややかな顔で見ていた。

 

「だってヤマナミが成長したら日本と繋がるかもしれないだろ。異世界YouTuber、このすごさ、わかる?」

「はいはい、すごいね。そんなことより、俺たちに怒った現地人たちが来るけど」

「やれやれ。こうやって“成る人”と“成らない人”は分かれてくんだ。あとで媚びてきても無駄だから」

「今は目の前の仕事に集中する時間だから」


 真剣さに欠ける少年をもう一方の青年がキレ気味に冷たくあしらう。

 この冷えた関係から、2人がバディではなく即席のコンビであることがわかる。


 そしてこのもう一方の青年はシスウというのだが……これといって特筆すべき特徴がない。

 長めの黒髪に人畜無害な顔。その顔の造形には、ウララのような美しさもなく、ユンクァンのような思想の強さもケンのような図々しさも表れていない。

 中肉中背。白地に細いボーダーが入ったTシャツにベージュのパンツ。

 休日のショッピングモールに網を放てば同じ格好の男が大漁だろう。

 それくらいの量産型男子だった。


「いたぞ!!ビートル人だ!!!怯むな!!討てーーーーーー!!!」


 ロウセエネとは違う別の将軍が攻撃の号令をかける。


 木々を焼いたことでヒイラギとシスウは周囲から丸見えだ。

 あっという間にタオユエンの兵士たちに発見される。

 その数はすでに数千人は下らない。


「えー、今公園の森を焼き払ったところなんですが、だいぶ異世界人怒ってますね。あーしまった、焼く前も撮っとけばよかったな」

「……代わりに撮ってやろうか?」

「お、サンキュー。俺のチートって精密操作だから、カメラマンがいた方が楽なんだよね」

「そもそも録画が要らないと思うが、まあ、俺に手は無限にある」


 そう言ってヒイラギのスマホを受け取った瞬間。

 シスウが2人に分身した。

 まるでコピーアンドペーストみたいに、一瞬にして全く同じ人間が2人並んでいる。


「スマホ持ってるお前が殺られたら分身したほうも死ぬって感じのチート?」

「「いや、そういうどれが本体とかない。意識も記憶も共有している。みんな俺だ」」


 2人同時に喋るシスウが再び分身して4人になる。


「「「「特徴は、2の階乗でしか分身できないところだ。だから3人にはなれない」」」」

「ハウリングうっざ。1人にしろよ」

「はいはい」


 そんな会話をしている間に、あっという間に2の4乗、16人に増えた


「まったく……つーか、かいじょう……?コンサートでもすんのか?」

「はぁ……高校生のくせに2のn乗とか知らねえのかよ。お前、配信で飯食ってくとかいうだけあってバカだな」

「あん?」


 32人のシスウが、ヒイラギの逆鱗にうっかり触れてしまったことに気づいた。


「てめえ!!俺のことバカっつったな!!!俺が赤点取りまくってさあ!高校留年して退学寸前だってことなんか、異世界で関係ねえだろがよおおおお!!!」


 ヒイラギはバカと言われることに我慢がならないようだ。

 勉強ができないのがコンプレックスで、言われるとプッツンくるらしい。


 と、64人のシスウが理解した時。

 上空からモーター音が響いてきた。


「中将!!上空に何か浮かんでます!」

「それに、いつの間にかビートル人がすごい数に!!」

「怯むな!浮かんでいるのはきっと蜂のモンスターかなにかだ!!敵は召喚能力を持っているぞ!!」


 その聞きなれない機械的な音にタオユエンの軍勢がわずかに乱れる。

 確かにモーター音は羽音のようだが、ヒイラギが召喚したのは蜂よりも殺傷能力に長けた兵器だ。

 特徴的な4つのプロペラに、メタリックな白い機体。

 それは空中でホバリングして、静かに銃口をタオユエンの軍勢に向けていた


「はっ!蜂なんかじぇねえよバーカ!!ドローンっつーんだよ!今から異世界人全滅生放送だ!!ちゃんと撮っとけよシスウ!」

「撮ってる撮ってる」

 

 256人のシスウのうちの1人が見境なくブチギレているヒイラギをスマホカメラで映していた。


「まずは派手にいくぜ!この公園を一撃で焼き払ったナパーム弾!!」


 タオユエン側の射程圏外から、白いドローンがナパームを発射。

 数千人いた兵士たちが一瞬にして火に包まれた。





いかがでしたか。

おもしろかった・続きが気になるという方は、ページ下部の☆☆☆☆☆をクリックして★★★★★にしていただけるとありがたいです。

私たまたま読みに来ただけですねんという方は、また気が向いたら読みに来てください。

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