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65話 ロックスター、奴隷を買う

ロックスターことフジオウさんは現代日本にいた頃、クラスの女子に話しかけるたびに罰金を払わされていたそうです。

 フジオウが入った奴隷市場は薄暗かった。

 エントランスにいるボーイ的な黒服の人がフジオウに近づいてくる。


「いらっしゃいませ、どういった奴隷をお探しで?」

「ああ、えっと、そうっすね……。冒険のメンバーとして」


 ロックスターを目指すのだから正直に「胸のでかいエロい女」と言えばいいものの、フジオウはボーイの口から出た奴隷というワードに面食らって無難な答えをしてしまった。

 フジオウは奴隷がいる奥に通される。

 通路には窓もないし一人しか通れないほどせまい。


「こちらのエルフは魔力に優れますが、性格の面で難があります。エルフは長命で年を取りませんので10代後半に見えますが、年齢は160を超えています」

「はぁ」


 目立つところに檻が置いてあるということは、イチオシの奴隷たちなのだろう。

 ボーイのセールストークは慣れたものだった。来る客来る客に販促してるのだろう。

 

 なんか俺、自由を得てからセールストークばかり受けてる気がするが。

 そんな他所事を考えながら、フジオウは聞き流していた。

 控えめにつけられたタグの値段が超高価だったからだ。

 エルフだけじゃなく、元ロンドの軍人も、女騎士も。


「じゃあ、全員戦闘向きの奴隷か」

「仰る通りでございます。ここにいる奴隷たちはみなA級冒険者並の実力を備えております」


 ボーイは鼻高々だった。

 反対にフジオウは落胆していた。


「ってことはあのハゲ程度ってことじゃねえか」

「……どうされました?」

「いや、独り言だ。そうだな……」


 考えているふりをしながら、フジオウは行商から奪った【鑑定】のスキルを発動する。

 その結果、ボーイの言ってることが嘘だと分かった。

エルフも軍人もあのハゲより弱い。


「……向こうの奴隷は?」

「あー、そちらはもう買い手がついたものです。まあ、見る分には構いませんよ」

「買い手、だと?」


 フジオウは早歩きである檻に近づいた。

 檻に貼られた「SOLD」のテープ。

 その向こうに、おびえた様子の少女がいた。

 少女は檻の隅にうずくまって、フジオウの様子を不安げに窺っている。

 身体は痩せていて、髪はボロボロ。全身から不幸オーラが漂っている。

 だが顔自体は悪くない。

 何よりの特徴は、頭の上に犬耳が生えていることだった。


「その子に興味がおありなんですか?彼女はビートルバムの戦争で家族と死に別れ故郷の村を破壊されてここに流れ着いた、ただの一般人ですよ。お客様の希望する冒険の助けとなるかどうかは……」


 冒険の助けになるよ。と、とっさに言い返しそうになったのをこらえる。


「こいつを買ったのは誰だ?」

「えっ?いえ、すみません。お客様の情報は守秘義務があるので」

「俺が買値の倍を出すといっても?」

「はい、先着順です」


 瞬間、ボーイが膝から崩れ落ちた。

 気絶して白目をむいた顔が眼前に向けられたので、犬耳少女は小さく悲鳴を上げた。


「おい、しっかりしろ」

「……え……あっ、す、すみません!お客様の前で転んでしまうなんて!いらっしゃいませ。どういった奴隷をお探しで?」

「ああ、いいよもう。顔と名前を覚えたから」

「はい?」


 なぜかここ数分の記憶がなくなったボーイにお礼を述べて、フジオウは奴隷市場を後にした。



数時間後。

 

 灯りの消えた奴隷市場の前に豪華な馬車が停まる。

 降りてきたのは丸々肥えた貴族の男だった。


「お待ちしておりました、カルルス様。奴隷のほうも用意が出来ております」

「ボーイくん、こんばんは。今日は、オヂサン、疲れチャッタ(;^_^A」


 この地域では有力な貴族であるカルルスが、その巨体に似合わぬ軽快なステップで奴隷市場の中に入る。

 エントランスにはすでに犬耳少女が立っていた。


「ラハルチャン!!お待たせしちゃったネ、でも、オヂサンだって忙しいんだ泣。ラハルチャン、とてもいい匂いだね。お風呂に入ったんだ。オヂサンも、一緒に入りたかったな!ナンチャッテ!」

「は、はい。これからよろしくお願いします」

「声が、少し小さいカナ?(^_^;)そんなんじゃ、立派な奴隷になれないヨ!オヂサン、飽きちゃうカモ!?」

「申し訳ありません!一生あなた様に尽くします!」

「うん、とってもステキなオンナノコだね!ベッドの上でも、それくらい元気だと、嬉しい♡ナンチャッテ」


 少女の服従の言葉を聞いて、カルルスはとても気持ちよさそうだった。

 ボーイにとってカルルスのこのねっとりした会話はいつものことだった。

 本人は優しくユーモアを交えているつもりなのだろうが、太った中年のおっさんが若作りしているみたいでとても気持ちが悪い。

 ラハルの笑顔がとても硬い。

 カルルスの性癖はこの街では有名だった。

 娘以上に年の離れた女の子を支配下に置いて犯すのが好きで、飽きるたびに奴隷を買い替えていることも。


「奴隷契約完了です。ラハルはの身体と人格はカルルスに所有され、この所有権はカルルスが放棄しない限り消滅しません。もし万が一ラハルがこの腕輪を破壊しようとした場合、ラハルは死亡します。またカルルスが死亡するとラハルも死亡します。」

「ヤッタネ、ラハルちゃん!これで、ずーっと一緒だよ!なんだか、夫婦みたいだネ。親子に、間違われちゃったりして!?」


 死亡という言葉に恐怖しているラハルには構わず、カルルスはうきうきで馬車に乗り込む。

 今からの初夜が楽しみでしかないという表情は、フジオウのいる奴隷市場の屋根からもよく見えた。


「どの世界でもキモい親父の喋りって似るんだな」


 カルルス邸に向け走り出した馬車を、屋根伝いに追いかける。

 市街地を抜け人気がなくなったあたりで、馬車に飛び乗った。


「お~い、どうしたのかな?心配だよ!?」


 車の中からカルルスの声が聞こえる。

 御者がふところから短刀を取り出し、馬車の中から護衛が出てくる。

 だがフジオウの敵ではなかった。


「ひぇ~っ!これは、ちょっと、勝てないカナ。ラハル、時間稼ぎをして、ちょうだい」

「え、きゃあっ」


 カルルスがラハルを馬車から蹴り落として、自分は反対のドアから逃げ出した。


「うわ、卑怯者!」

「あ、あの……う、動かないでください!」


 腕を広げて奴隷として命令を実行するラハルをフジオウは飛び越える。


「エッ!?」

「どうしてすぐに手に入らないのか。最初から素直に買えれば、こんな手順踏まなくてすんだんだ」

「ラハルが欲しいって、それは、出来ないよ!オヂサンを殺すと、ラハルも死ぬよ」

「死なねえよ。俺はロックスター、欲しいものは何でも手に入れる」

 

 フジオウはロックスターを発動。

 カルルスからラハルの所有権を奪った。


「え!?いったい、なにを?」

「ラハルの所有権を破壊する」


 手に浮かぶクラウドをフジオウは握りつぶす。

 その瞬間ガシャンと音がして、ラハルの腕輪が外れた。

 

「あっ!」

「エッ!」


 驚きすぎてカルルスの顎が地面につきそうになっている。

 それはラハルも一緒だった。

 自分の腕と落ちた腕輪を何回も見比べている。


 一方、フジオウは勢いよく握った拳を見つめながら焦っていた。


(やべえ……所有権無くしたらラハルが自由になっちまうじゃねえか!何やってんだよ、俺!!せっかく奴隷買って、思い通りにしようとしたのに……)


「ありがとうございます!このご恩は忘れません!…………あの、どうして動かないんですか?」


 目に涙を浮かべながら頭を深く下げるラハル。

 だがフジオウがこっちに目も合わせてくれないで拳法家みたいな体勢でずっと固まって額に汗しているので、首をかしげる。

 

(仕方がない、ラハルは諦めよう)

 

 ラハルが何か言ってた気がするがよく聞こえなかった。

 かなり欲しかったがしょうがない。

 どうせ俺なんて奴隷契約でもしない限り、女とつながりを持つなんてこと不可能なんだから。


 フジオウは肩を落としラハルに背を向ける。


「え、あ、ちょっと待ってください。解放してさよならなんて、む、無責任すぎます!」


 いきなり解放されたって途方に暮れる。

 天涯孤独となったラハルに行く当てもなかった。

 だからこの強さだけはありそうな少年についていこうと決めたのだった。

いかかでしたか。

おもしろかった・続きが気になるという方はページ下部の☆を押していただけると嬉しいです。

ふらっと来ただけだよって方は、また気が向いた時に読みに来てください。

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