45話 stereotypes. more to life.
「それで檻の中ってわけ。ニコが作っただけあって、叩こうが何しようが壊れねえ」
「あの後、セーレさんがこっそりソコルルの体力も奪ったので両者気絶。私たちとドラゴンの翻訳者がいなくなってしまったことで、あの場はお流れとなりました」
「……ふざけやがって」
感情が無になった俺はなすがままに担ぎ上げられ牢屋に放り込まれた。
ニコに。
全員踏みつぶされて終わりって可能性もありえたが、綱渡りみたいな奇跡で俺たちは生きている。
「2人とも殺害して、ドラゴニュートとビートル人を同時に相手するのは流石のドラゴンも避けたかったんですよ」
「……気分は複雑だな」
俺は手のひらのナンバーを見ながらそう呟く。
「セーレとリイはどうしてる?」
「あの時はああせざるを得なかったとはいえ、ソコルルをぶっ倒せなかったのが残念だそうですよ」
「一生の不覚だ……」
元気なお姫様たちだこと。
って。
そろそろ触れてやるか。
「あんま落ち込むなって、トカゲ人間」
「その呼び方、ワザとだろ!!」
ソコルルが激高して跳びかかってきたが、檻にぶつかって終わった。
自分が鎖で縛られていることも忘れてんだ。
「いたい……」
檻の硬さを顔面で体感したソコルルは、再び憂鬱モードに入りまたぶつぶつと独り言を唱えだした。
ソコルルもセーレの鎖で縛られニコの檻に収容され、そして俺の対面にいる。
「ユッキー元気してる?」
「お、ヒータンが俺の体調を気にかけている」
「僕のことは気にかけてくれないのか……」
羽ばたく音が聞こえて檻の上から赤いドラゴンが降りてきた。
「あ、ユッキー。あんね、里の代表たちが事情を聞くから、明日広場に来るようにって。私も行くよ」
「今からじゃないのか」
「ソコルルの回復待ち」
ヒータンから明日の予定を聞かされる。どうやら明日、里のお偉いさんたちによる事情聴取が行われるらしい。
しかも、ソコルルも同席して。
あ、自分の名前が出てちょっと嬉しそうな顔してるソコルルがヒータンの羽根の間から見える。
「へい、ユキノ!なんかよくわかんないけど、明日ソコルルをぶっ倒すために頑張りなさい!」
「頑張れー!!」
ヒータンの背中からセーレとリイが叫ぶ。
知らないうちに仲良くなってんじゃねえの。
てか、お前ら、それをしないために俺を眠らせたんじゃなかったのか。
「さっきはさっき、今は今よ。私たちもヒータンと一緒じゃないと外にも出られなくなっちゃったし」
「お前らにも不自由かけるなあ」
「ヒータン曰く里はソコルルの味方するみたいだよ」
「そうなのか、ヒータン」
「うん、やっぱり馴染みのあるほうに傾いちゃって、止められなかった」
「私が自由なのもそのおかげです。ここでは亜人のほうが人間より優遇されます」
「ははは、終わったなビートル人!正義は最後に勝つのさ!!」
無視しよ。
てかリイ、いつの間にドラゴン語を理解した。
「言葉は分かんないけど、雰囲気で」
「だから実力でねじ伏せるしかないってことよ。私たち2人の肩書は残念だけどここじゃ役に立たない」
「実力って……トーク力ってことか?『異議あり!』とか叫ぶの恥ずいんだけど」
「ハートランドでは最終的に喧嘩で片をつけるのが定石です」
とんだ脳筋大陸に来ちまったな。
結局は拳で解決するんだ。
「ユッキー。そろそろ面会時間が終わりだよお。盛り上がってるみたいだけど、言い残したことはない?」
俺はヒータンの言葉を3人に伝えて、
「俺から1個。ドラゴニュートの弱点を教えてくれ」
「ない!!ない!!そんなもの!ドラゴニュートは龍と人間を足した最強の種族だ!!」
夜
ニコに作ってもらったサンドバックを前に俺は、リイとの闘いを思い出していた。
ドラゴニュートは空が飛べる。
だから、必然的に迎撃する闘い方を強いられる。
そのために下から上への攻撃を練習中することにした。
だからサンドバックを高いところに吊るして、蹴りを主に練習している。
「はーはっはっはっはっは!!!なんだそんな砂袋を吊るして、僕を倒す練習だと?笑い殺すつもりか!!!??」
うるせえな。今何時だと思ってんだ。
こちとら鎖で縛られてる以上、足技の練習くらいしかできないんだから仕方ないだろ。
「黙って寝てろ。お前をぶっ倒さないと、ヒータンに迷惑がかかるだろ。」
「え、お前、自分のために闘ってるんじゃないのか?」
それがどうかしたか。
「お前、本当にビートル人か?」
「うそだろ。こんなことで疑いが晴れ始めるとか、ビートル人評価悪すぎるだろ」
「ビートル人といえば自分の利益のためなら他人を傷つけても平気なやつらの集まりと聞いている。お前の優しさにも裏があるに違いない!」
ぶつぶつ喋ってるかと思いきやいきなり立ち上がって俺の裏を読んでやったみたいな顔を見せつけてくる。
こいつあれか、自己完結して突っ走るタイプか?
だとしたら、偶然にもやつの世界観にほころびが生じた今がチャンスかもしれない。
「だったらなんでセーレは俺のためにこんな明るい光魔法を残していってくれた?」
「そ、それは……きっとお前に脅されてるんだ。お前は家族を人質に取りあの女の子を言いなりにして……ケダモノめ!!」
腕と翼まで縛られているのに立ったままよくバランスが取れるな。
で、そんな高い位置から睨み付けるのは裏を取ってからにしてほしい。
こちとら異世界転移してきたってのにエロ描写が少なくて退屈してんだ。
「だったらもう少し俺の鎖はゆるいよ。それで、お前は警告に来たんだろう。ドラゴンたちもビートル人に襲われるだろうからって」
「そ、そうだ。我々ドラゴニュートの領土はハートランドの入り口。今朝だ、今朝。我々ぐらい背の高いビートル人がやって来た。そいつは言った、仲間を探している」
「なおさら俺じゃねえな。俺にビートル人の仲間なんていねえし」
背の高いビートル人か。
新キャラだな。ラクもヒャクイチも背が高いって程じゃない。
「我々の領土にビートル人などいないし入れたくもないから、門前払いした。そしたらこのざまだ。私一人だけ逃げて、ドラゴンに警戒を伝えに来た」
「強えんだな、そいつ。ドラゴニュートは最強の種族なんだろ」
「そ、そうだ。何だ貴様、人を褒めるなんて、ビートル人らしくない」
「だからビートル人の評判悪すぎん?」
さてはこいつ、実際にビートル人と会話したの俺が初めてか?
あの敵意むき出しの態度は人伝えに聞いた悪い噂で頭でっかちになってたとか。
まあ、あるよね。ソコルル多分17くらいだし、その頃って信じやすい年ごろっていうか。
好きなバンドの歌が世界の真実だったりするし。
あんまいうと俺にも刺さるからやめよう。
「うぐ、いったい何なんだ、貴様は。さっきからずっとドラゴニュート語も話しているし」
マジか。気づかなかった。
てめえしれっと性格の悪いことしやがったな。
「い、いや。貴様が私の独り言に反応してきたんだろう。けれどそのせいで、貴様をどう見ていいかわからなくなった……明日の決闘にどう臨むべきか……」
「そもそも決闘しなければいいのでは?まあ、サンドバッグで蹴りの練習していた俺が言うことでもないが」
ソコルルはずっと悩んでいた。
敵だと思ってたやつと話が通じてしまい、純粋に敵意を持てなくなって、自分の信念が揺らいでしまった。
俺はそんなソコルルの気配を背中で察知しながら、ソコルルが眠った後に寝た。
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星が2。5つ星あって、2。どうしたもんかな。どうしたもんかなって、3目指すしかないじゃん。




