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166話 2人で同じ方向を

現代日本にいた頃のセラセラはお金持ちでした。得意の占いでギャンブルやFXを的中させ続けることができたからです。一生遊んで暮らせる金を手にしたこともあるのですが、納税等の手続きがからきしダメなのがあだとなり、逮捕寸前までいったことがあります。

「ありがとう。礼を言うわ」


 知らない間に自分を守ってくれていたナツメに、セーレが頭を下げる。


「あ、いや。そんなお構いなく」


 あまりにもきれいな45度に恐縮するナツメがわたわたと両手を振る。


「こういうことはきちっとしておきたいの」

「いや、というか、そんなことしている場合でもない……」


 さっとナツメが右手をさっとかざして魔法障壁を展開すると、その瞬間セラセラのゼビウスが衝突。

 ゲリラ豪雨みたいな騒音が中庭中に広がる。


「すご。このカーブはなかなか作れない」

「それほどでも」

「おい、お前。これで何十個目だ、魔力障壁展開するの」


 欄干から身を乗り出してハヤブサが煽る。

 この2vs2の闘いで、文字通り高みの見物を決め込んでいるのがこいつだ。


「忙しいところ悪いが、俺もいるんだからな」


 ハヤブサが【X&Y】に向かって、キャンディを投げつける。

 この部屋のテーブルの深皿に積んであったお菓子だ。

 それが【X&Y】の座標を通ると、セーレたちの頭上に巨大化して出現。

 カラフルな飴玉が勢いよく降り注ぐ。


「こっちは私が防ぐ」


 セーレの展開した大きな一枚の魔力障壁に飴玉がぶつかる。


「すごい、密度が均一だ。ドラゴンが飛び降り自殺したって割れやしない」


 そのけたたましい音の中で、セーレとナツメが作戦会議をする。


「セーレさん、この闘いでの目標を共有したい」

「おっけ」

「まずあのハヤブサが要る部屋にアキナさんの身体がある。それを奪還するのが最優先だと思う。あの身体についていけば、きっとアキナさんの首を確保できるはずだから」

「私も」

「このまま魔力障壁で防ぐだけではジリ貧だ。攻撃に転じたい」

「それは難しい相談、ね」


 セラセラのゼビウスも尽きないしハヤブサの飴玉もまだまだあるが、セーレとナツメの魔力もまだ豊富にある。

 お互い魔力をぶつけあって、どちらも平気で、ただただ中庭が破壊されていくだけだ。


「言いたいことはよくわかるのだけれど、今の私には攻撃手段がない。自分の能力で敵から攻撃を受けるってかなりムカつくわね」

「あ、で、そこを私の能力でカバーして……」

「言ったら余計ピキってきた。やられっぱなしって性に合わないのよね」

「あ、ちょっと、待って話はまだ終わってない!」


 手のひらに球体の魔力を展開したセーレは、無駄だとわかっていながら思いっきり投球。

 さっきから何回か投げているがフォームは相変わらずぎこちない。

 魔力の球は、みんなの予想通り明後日の方向に飛んでいった。死にかけの蛇がのたうち回っているような軌道を描いて、ルビンの街の向こうに飛んで行って見えなくなったと思ったら、巨大な爆発が山の後ろで巻き起こった。


「威力だけなら、カクラのガキにそん色ないな」

「あなた、お友達の家を吹き飛ばす気?」


 セラセラもハヤブサも、攻撃の手を思わず止めてしまうくらいの馬鹿げた一撃だった。


「自分の身の心配をしたらどうかしら?次は直撃させるから」

「威勢がいい。だが運勢は悪い」


 セラセラが表情をピクリともさせずにそう呟いた瞬間、セーレの背後から鎖が飛び出し、脇腹から胸にかけて貫いた。


「んっ……!どうってことないわ!」

「セーレさん!」


 歯を食いしばって強がるセーレ。

 引き抜こうととっさに掴んで少し引っ張ってみて、鎖に返しがついていることに気づいて手を離した。


「性格の悪い女……!」

「せっかくの高高度な回復魔法も、自分には使えない」


 逆側の地面からもう一本鎖が飛び出してセーレの脇腹を突き刺す。

 両サイドから貫かれ、足が浮いてしまうセーレ。


「痛くないわね……!こんなもん……!」


 セラセラしか見えていない顔をして、セーレは鎖を強引に引き抜こうした。


「ああもう!いい加減に!!」


 ナツメがセーレに刺さった鎖を握りしめた瞬間、鎖がボロボロとスポンジみたいに崩れ落ちた。

 セーレが落下する間に、ナツメは回復魔法を発動。

 地面に崩れ落ちる前に刺し傷を防ぐことができ、地面には血の一滴も流れなかった。


「してください!!」


 怒りの混じった声でナツメは、倒れたセーレを抱え起こして思いっきりビンタを食らわせた。


「……ナツメ」

「一人で突っ走るのは、あなたの悪い癖だ!」


 ヒリヒリした頬で急激に冷静になったセーレに、ナツメの言葉はよく響いた。


「……リイと同じこと言う」

「前から言われていたんだ……」

「結構短気なところあるから。なんにせよ、冷静になれたし、回復もありがとう」


 2回目のお辞儀。王国仕込みのきれいなお礼だ。


「だからしている場合では……魔力板!」


 ナツメが屈んで地面に手をかざすと、丸い板状の魔力障壁が出現。

 二人を載せて地面から浮上。その瞬間、地面から鎖が飛び出して裏面にガツンと当たる。


「魔力の軌道が、わかるのすごいよね」

「起こりを見ているんです。魔力が世界に放出される前の、体内での魔力の流れが。それからどんな魔法が出るのかを予測している」


 そうなの、と気軽に受け流すセーレだったが、内心ビビっていた。


(そんな高度なこと、私出来ないんだけど……!)


「だから、大丈夫です。次は当たります!!」


 ナツメがビッと指さした先で、セラセラが鎖にエネルギーを溜めている。


「自分から足場を狭めるなんて悪手。悪運尽きたね」

「なんか言ってるけど、当たるって?」

「思いっきり投げてください!私が真っすぐ飛ばして、あのチャイナドレスに当てさせる!!」

「……信じるわ。あのレベルの魔力は防ぐより壊さないと、中庭が吹き飛ぶ」


 セラセラは内心焦っていた。さっきした占いの結果、自分たちの生存率がセーレたちの生存率を下回っていたのだ。

 【Get Lucky】の能力解除まで残り3分。セラセラの計画は大きく遅れていた。

 賭けに出る必要がある。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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