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状況把握/断片_02

20YYMMDDHHMMSS.wav

 私の名前は枌木博美(そぎきひろみ)

 何故このような当然の名乗りを復誦せねばならないのかというと、端的に言わせて貰えれば、自分の記憶に自信が無くなったからである。

 まぁ待って欲しい。そこで脳神経外科に行けと言いたい気持ちをぐっと堪えて、私の話を聞いてくれると話が進みやすくて助かるのだ。

 私の職業はしがない新聞記者である。うだつの上がらぬままにかれこれ五年程度働いてきたが、自分の本当に求めたいものと仕事の中身との乖離が進んできていた所だった。

 何か、どんな些細な事でも良いから、私の心を突き動かす話のネタは無いものか――そもそも、たかが地方のブン屋に出来る事だって限界があるはずで――などと呻吟していた所に、一つの話が舞い降りた。

 魔法少女という単語である。

 魔女という言葉は馴染みがある。それは当然ながら中世の頃の負の歴史を代弁するに等しい、言葉にするのも憚られる単語のはずなのであるが――それがなぜ今になって、そのような形で取り上げられるようになったのだろうか? それとも、何か新しい若者言葉の類だろうか?

 普段であればきっと切り捨てていたはずのその単語を、私は気が付けば追い始めていた。





「あ、すいませーん。私、新聞記者をやっておりまして」

「はぁ」

「」

「魔法少女って言葉、知ってる?」

「それは……まぁ」

「それなら話が早い。この後十五分ぐらいお時間よろしいですか? プライバシーには丁重に配慮いたしますので」



×



「じゃあ、最初にお名前を教えて貰えますか?」

「高山です」

「高山さん、ね。どこの中学に通ってるの?」

「あ、えっと、私ハタチです」

「え? ――こう言っては何ですが、かなりお若いですね」

「よく言われます。ご心配なら学生証出せますけど」

「いえいえ、結構です。出過ぎた真似をして申し訳無い。――それでは本題に入りたいのですが」

「枌木さん、それってボイスレコーダーですか?」

「あ、はい。……できる限り口述筆記を心がけているのですが、記載に漏れが無いかを確認するのは、やはり機械的に行う必要が有りますので。内容については今日中に消去する予定なので、ご心配なく」

「はぁい。――それで、何のお話でしたっけ」

「魔法少女って言葉に、聞き覚えがあるというお話だったはずですが」

「はいはい! そうでしたそれでした。それで私、見たんですよ魔法少女!」

「そうなんですか、話が早い。見たのは具体的にいつ頃?」

「二週間前に、トラックの事故があったじゃないですか。あの、駅前で電柱にぶつかって全国ニュースにまでなっちゃったやつ」

「記憶に新しいです。運転手が重傷になったぐらいで、その他の被害がゼロだったのは奇跡に近い状態だったという件ですね」

「その時、見たんですよ魔法少女! スーパーマンみたいに颯爽と駆けつけて、トラックの真ん前に飛び出して、あわや歩道に乗り上げる寸前だったトラックを、まるで赤子を捻るかのように逸らして、側にあった大きな電柱にぶつけたんですよ!」

「結構、一部始終まで見ていますね」

「そ、そうなんですよ! だってあの魔法少女が、会えると思ってなかった魔法少女が現れたんですから! 鮮明に覚えちゃいますよ、ねぇ!?」

「はぁ」

「で、その魔法少女なんですけど、わ――小さくて、可愛らしくて! だけど表情は凜々しくて! もう幼いプラスカッコイイで、『(おさな)カッコイイ』という言葉が今すぐに流行語大賞を狙えるのでは無いかと思ったほどですね!」

「なるほど、状況とその存在についてはようく分かりました。――それ以降、魔法少女に出会ったことはありますか? もしくは、ご友人でそのような話をご存じの方が居れば――」

「んん~。これが不思議なんですけど、見た人ってあんまり居ないみたいでぇ。何というか、普段は見えないように活動してるのかも知れないですね~」

「普段は見えない……なるほど。ありきたりな表現で申し訳ないですが、妖精みたいなものだと」

「小さくて可愛いという意味ではそうかもしれません!」


<次の曲を再生する>

<もう一度再生する>

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