彼女の夢 十
「正人、今すぐ家に帰りなさい!」
「そうよ正人。正人はこれから勉強しないと…。」
その乱入者とは、俺の両親である。
そして、その父親のあまりの大声に俺たちの観客たちは一気に静まりかえり、照明も元に戻される。
「父さん母さんごめん。今ライブの途中だから…。」
「何がライブだ!」
俺の父親は俺のその一言を聞くとさらに大声になり、言い返す。
「お前、最近よく家を出ているなと思ったら、こんなことにうつつを抜かしていたのか!
こんな無駄なことをしている時間があったら、勉強しなさい!」
周りの目も気にせず、父親は大声を出し続けている。
「…でも父さん、最近俺の成績は上がってるよね?それはこうやって頑張れる…、」
「口ごたえする気か!」
父は俺の発言を遮る。
「それに…、ここに集まっている生徒たちは、西高の生徒たちだけではないな?この辺の生徒たちは…、もしかして北高の生徒か?」
「うん。そうだよ父さん。」
観客の中の少し派手そうなグループを見て、父はそう言う。
「正人、だったらなおさら、お前は家に帰るべきだ。こんな定時制の、北高の生徒と遊んでいる暇なんて、今のお前にはない!」
「こんなって何だよ!」
今度は、俺が大声を出す番であった。




