落としたスマホ 十四
「…ゲーム!?」
俺は、その一言にひっかかる。
「そう、ゲーム!
それであたし、残り少ない高校生活、色々やりたいことがあるんだよね~!
そう、あたしには叶えないといけない『願い』がいっぱいあるのです!」
「は、はあ…。」
俺は完全に彼女のペースに呑まれていた。
「それで正人くんには、その『願い』を、一緒に叶えて欲しいのです!」
「…は?
ちょ、ちょっと待てよ…、」
「それで、あたしの願いが叶ったら、あたしの秘密を1つずつ正人くんに話す、ってのはどう?」
「…ああ、とりあえずいいよ。」
俺は気づいたら、なぜか反射的にそう答えてしまっていた。
やっぱり、彼女の勢いに呑まれてしまっていたみたいだ。
「やった~契約成立!あたし、一度こういうのやってみたかったんだよね~!
ん?ってことは、もうあたしの願い、1個叶ったってわけか。じゃあ…、
あたしの秘密、1個言わなきゃね。」
「いや別に次からでいいから…。」
「ダメダメ!
じゃああたしの最初の秘密!
あたしの好きな食べ物は…、カステーラです!
あの、露店とかで売ってるやつ…ね!」
その「最初の秘密」を聞いた瞬間、俺は吹き出した。
「ちょっと~何笑ってんの?」
「い、いやだって、そんなのが秘密なのかよ。」
「ちょっと~バカにすんの?」
「いやバカにはしてないけど、そのチョイスといい、『秘密』の内容といい…ハハハ。」
俺は、笑った。
「やっぱりバカにしてんじゃん!じゃあ正人くんはカステーラは食べないんだね!」
「いやいや祭りの時は食べるけどな。」
「じゃあバカにできないじゃん!」
「…まあそうか。」
そのやりとりがおかしくて、また俺は笑ってしまう。
「あと、秘密の内容は、叶えてくれた願いの大きさで大きくなったり小さくなったりするからね!
だから、もっと大事な秘密もあるのです!」
「あ、そうなの?」
「もちろん!だから…、
あたしの願いを叶えてくれたら、あたしの秘密を教えてあげる!」
「分かった。じゃあ楽しみにしておくよ。」
「…あと、じゃあ連絡先、交換していい?」
「いいよ。」
そう言って、俺は自分の携帯と、さっき拾った携帯の連絡先を交換する。
「あと、これは願いじゃなくて、約束!このゲームのルール!
あたしは『正人』って呼ぶから、あたしのことは『風花』って呼んで、ね?」
「分かったよ、風花。」
「じゃあまたね、正人!」
そう言って、彼女、風花は去っていった。




