落としたスマホ 十二
「ありがとう!拾ってくれたんだ!」
「あ、ああ、まあ一応…。」
その子は、派手な茶髪とメイクで、とてもこの学校の生徒とは思えない。
ただ、その子の目はパッチリした目で、大きく目力もある。一般的に言って、その子は「かわいらしい」部類に入るのだろう…とは思う。
「で、君、名前は?」
「…二階堂正人だけど。」
名前を訊かれた俺は、反射的にそう答える。
あと、その子の声は少し高めの女の子らしい声で、人懐っこい笑顔が印象的だ。まあ、一般的に言う、「モテる」タイプなんだろうな…と思わなくもない。
「あ、あたしの名前言うの忘れてたね!
あたしは、間宮風花!携帯ありがとね!
あと…正人くんって、西高の生徒?」
西高とは、うちの学校の略称だ。
「ああ、そうだけど…。」
「そっか~じゃあめっちゃ頭いいじゃん!」
『…ん?
その言い方、この子、間宮さんはうちの生徒じゃないみたいだ。
じゃあなんで職員室前にスマホが…?』
そのわずかな疑問を、次の彼女の言葉が打ち消す。
「あたし、ここの北高に通ってるんだ!
定時制の方、ね!」
ああそうか。そういえばうちの校舎は昼間が西高、夜が定時制の北高に使われている。俺は、その事実を思い出す。




