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ボトルレター

作者: 尚文産商堂

海岸を散歩していると、流れ着いていたそれに気づいた。

浮き沈みしつつ、海岸へとようやくたどり着いたボトルレターだ。

ガラス瓶に密閉された、昔の人からのメッセージがある。

瓶の口は、蝋で固めてあるが、それ以外にも、藻やよく知らない貝が付いている。

開けようとしたところ、手を切りそうだと思って、専門家に任せようと考えついた。


持ち込みで調べてくれるのは、そう多くはない。

ただ、手野総合博物館の寄付館部門では、持ち込んだ品物に対して様々な検査を、専門家がしてくれることで有名だった。

それで隕石が見つかったということもあって、50年は続いている事業の一つだ。

「こちらです」

担当の人に見せる。

あらかじめ、写真やどこで採取したものかといった事柄を一通り言ってあるので、古文書と材料工学の研究員の人がやってきてくれていた。

「確認させていただきます」

藻は枯れて見る影もないが、貝はまだ殻が引っ付いている。

彼らは皮手袋をして確認を始めた。

作業台は少し明るいくらいの、オレンジ色をした照明が注がれていた。

「これ、19世紀か18世紀くらいの瓶の構造ですね。欧州のものでしょう」

材料工学の人が一目見るなり言った。

詳しく調べたい、ということで1週間後、ここに来ることになった。


1週間後、テレビカメラが数台ある玄関を通り、建物の中に入る。

少し興奮気味にしている古文書の人、それとは対照的に冷静沈着そのものの材料工学の人。

「何かわかりましたか」

「ええ、分かりました」

興奮していて言葉がうまく言えていない古文書担当に代わって、材料工学担当が教えてくれる。

英国アマーダン、というスコットランドの北海に面している町から流されたものだという。

流した理由としては、潮流の調査とともに、連絡が欲しいからということのようだ。

流した日付、報告する住所、放流した人物の名前が書かれていたらしい。

が、その古文書を見せられても、何かをなめした河のように見えるとだけで、文字は模様にしか見えなかった。

しかし、それでも十分のようだ。

「1841年5月1日、当時のグッディ子爵がバックにある、カリエ・イグニドールというアマーダン大学哲学教授が放流を指揮していたようです。アマーダン大学へ連絡をくれたら、いくばくかの報酬を支払うとあります。また、報告書の書式も決まっていましたので、こちらで作成させていただきました」

ここまではサービスのようだ。

「それで、どうされますか。この報告書を送付しますか。もちろん、こちらとしましては報酬はいただきません。全てあなたのものです」

「……よろしくお願いします」

少し考えて、その報酬というのに興味があったため、送ってもらうように言った。

外にいたテレビカメラは、この珍しいボトルレターについての報道のようだ。


さらに5日後、事情を聴いたアマーダン大学総長が、飛行機に乗ってやってきた。

記録を探したところ、確かにあったということで、当時に担当教授が指定した報酬を携えてきたという。

受け取るとあれば、とりあえず正装、といってもスーツぐらいしかもっていなかったが着飾って、総長と出会った。

その報酬というのは、アマーダンで作られたエールと10ポンドだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 中にはどんな内容が書かれているのか、ワクワクしました。 報酬もなにかなと気になり、最後まで楽しめました。
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