冷ますための水は身内から無料で貰えますか?
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「部屋、取れた」
「何部屋取れました」
「二部屋」
「……なんで」
あからさまに嫌そうな顔で帰ってきたと思ったらそういうことか。このホテルは相当有名かつ人気なのか?
「お前が思っていそうなことに関しては、一泊の値段が高かったとだけ返しておく」
「読心術持ってるんですね凄ぉい。……部屋割りどうします? ベッドの数にもよりますけど」
「ベッドは二つずつだ。大変嫌だが男女で分けるしかない、あの二人が悔しがって女装でもしない限りな」
「流石にそこまでは――――」
しそう。シア、嫌いな人と同じ部屋に、自分で言うのも何だが好きな人が放り込まれると知ったらあの二人は何しでかすか分からない。
ああでも女装している二人を見たいってマキナK辺りが猛烈に叫んでいる。人間の興味は沼より深い。
ここで注意すべきはレヴィアだ、レヴィアは多分マキナのことが好き。そこで私ができることと言えば様子を伺うことくらいだ。
「えっとぉ、レヴィアは」
「俺、なら大丈夫だ。俺はそこまで心が狭くない、そう狭くない」
「めっちゃくちゃ嫌そうですけど」
やっと好きな人を抱きしめられると思ったらまた遠くに行くんだもんね、隣の部屋だけど。
心做しかレヴィアの気高いオーラがしゅんとしていくのが視える。こんなとき私はマキナとして何をすべきか。
「あと、は三人を待つだけですねえ……」
「マキナ、その、変なことを言ってもいいか」
「レヴィアの変なことは大抵可愛らし――いえ、まともなことですからね!」
最近は心の声が漏れるようになってしまったらしく、少し気を抜いたらこれだ。
今度こそ真面目に聞こう。そう思い直してレヴィアの目を見つめると、レヴィアはわざとらしい咳をしたあとに両手をこちらに差し出した。
「だ……だ、きしめて」
「可愛っ、いえ、そんなことですか。なんだ、もっと重大なことかと思いましたよ」
「そんなことって。俺からしたら、精神的苦痛の種にもなりかねなかったんだぞ」
「そんなに!? ……何が原因でそこまでになったんですか」
人がこちらを気にしていないのを確認してから抱きしめた。宿屋で抱きしめ合うとかなんだろうね。最早一種のスキンシップなんだろうね。
満足したのか、小さなため息をついてからレヴィアは少しずつ話し出した。
「どうして俺がお前に甘えようとしたらこんなことになるんだろうと」
「前から解けないままだったんですね、結局」
「それが俺にとっては重大なことだったんだ」
二人は何も邪魔は無いのになんで自分だけ、と。そのもやもやは何を話しても消えなかったらしい。
この人達に言葉は無効なのかもしれない。今度からスキンシップ多めに接してみよう、そうすれば何か進展があるのかもしれない。
そう思ってはいるけれども。イケメンとこんなに接近していつまでも平常心は保ってられない。顔が熱くなっていく。
「……いつまで抱きしめてるんですか」
「わだかまりが塵も残さず消えるまで」
「それはだいぶかかりそうだ」




