空飛ぶ布団みたいなのはどのお店にもありませんか?
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何考えてるか読めないレヴィアに少し痛めのキスをされた。しかし本人は何でもない顔、知らない奴だったら炙ってたね。
腕の傷もハッキリ言うと処置はしていない。そして私とレヴィアの支度早い組は寒くて広い、馬鹿みたいな玄関にいる。
あ、支度早い組とか言ったけど大して早くないし、もうすぐ皆支度が終わるんじゃない?
「というか、出発する準備も何も、荷物広げてないですよね」
「まあ、そうだな」
「早く起きても朝ごはん無いんですよね」
「……まあ」
「それより何でこんな所でキスもどきみたいなことを?」
「思っていたより寒いな……ここを早く出たら目的地よりも、まずは暖かそうな所に向かおうか」
今度は何のことやら顔だ。そういう時だけ大人の余裕見せるのなんなの? マキナちゃんも余裕欲しい。
そう心の中で拗ねたって、窓から見える霜が溶ける訳でもないし、ドアノブが温かくなる訳でもない。
ただ、レヴィアの心が温かくなった。……上手くなかったから記憶改竄しておこう。
「マキナ様! 次はどこに行くのですか?」
馬鹿みたいに寒い……馬鹿は寒いのか? どうでもよすぎた。馬鹿みたいに寒い玄関にへライトも来た。
寒いのか、鼻と頬ががほんのりと赤くなっている。もう冬認定していいよね。
「……あー、どっかそこら辺。有能なレヴィアが探しておいてくれたんだ」
「……え……っと、それは、私は無能ってことですか?」
「今の発言撤回していい? ごめん、誤解です、誤解。私が無能だった」
仲のいい人ほど謝りづらい人はいないと思うんだ。とりあえず私流で誤解を解こうとしたら、「マキナ様は無能ではありません! 何て事を言うんですか!?」と言われ、悪化してしまった。
そういう意味で言った訳では無いことを言った訳では無い説明が求められる。
寒い。目の前の絶対零度のへライトがいるからかな、だからごめんね、そう言う訳では無いんだよ。
「マキナさん、お待たせしました!」
「おお、おはよう。……あとはノアだけなんだけど」
まだかな、と言おうとした瞬間に、ガチャリとドアが開いた。何奴? 何者? ああ、曲者か。勢いよくドアの方を見る。
「呼びました?」
――――2秒くらい思考が停止した。この状況についていけてない、何で、何で待ってた人が予想した方向と真逆の方向から来るの?
あれか? 期待を裏切って行くタイプかな、別に期待してなかったよ、あくまでも予想だよ。
その本人はさっきのレヴィアよりも何でもない顔をしていた。何その日常的に起こってる感。私が知らないだけ? しかもドアが開いたせいで冬感が玄関に溜まっている。
「ノア、何してたの。寒かったでしょう」
「何故そんなに驚くのですか? 共に寝て共に起きたでしょう」
「いつの間にか消えてたじゃないですか」
「そんな人のことを幽霊のように……」
うん。昔からノアは儚げ幽霊くんだったよ? 今回でしっかりと自覚を持てるかな?
「ちゃんと生きてます!」
可愛らしく怒りながら手を握ってきた。薬指が凍りついたと思うくらいに冷たかった。この冷たさは誰もが幽霊見習いと思うだろう。
「昨夜の子供体温は何処……」
「一時の子供体温より持続性ある大人体温の方がいいと思うぞ」
「私だったら一番年下だから一番体温上がりやすいかもしれません!」
大人体温って確かに長続きしそう。へライトはツンを発動しなければ温かいかな。
急に可愛らしい笑い声がしたから声の方を辿ると、シアが断捨離を終えた顔つきになっていた。
「私、今までこんな人達に恋してたんだなあ」
「あはは……一応容姿は良いでしょう」
「諦め切れてない部分もありますけど、案外あっさりと諦めつきそうです」
「それはよかった……よかったのかな?」
寒い玄関で誰が温かいか争いは決着がつかなかった。その頃には玄関は冷蔵庫と同値の寒さになっていた。外は冷凍庫だな。




