やり直す方法はどこに落ちてますか?
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ずっと誰にも期待されて来なかった。居ないことを望まれてきた。
小さい時からずっと一緒。兄様達の周りには色んな人がいるのに、私の傍には何も無かった。
その癖政略結婚の道具に使おうとしてくるのだから、呆れを通り越して笑えて来る。
「でも、マキナ様だけは違う」
今日会ったばかり、面識なんてない。
それなのに、あの人は私を心配してくれた。気にかけてくれた。
今まで罵詈雑言を存在証明としていた私にとって、彼女は甘過ぎる。
そして決して潤うことのなかった心に、初めて何かが芽生えた。
温かくて、居心地のいい、形容しがたいものだった。
あと、私に聞こえないように言っていたのかもしれないけど、「可愛い」とか、「尊い」だとか、私には釣り合わない言葉をかけてくれる。
けれど、彼女は「自分のことは忘れて、できれば嫌って」と言う。
「忘れられる訳、ないじゃないですか、ねえ……」
彼女のくれたハンカチをそっと撫でる。まだ仄かに温かいそれは、心に芽生えたそれに少しだけ似ている気がした。
『エクシアと結婚しろ』なんて……する訳ないじゃないですか。貴女を見つけたというのに。
貴女は『一時の迷い』と言った。じゃあ、ずっとその一時に浸っていたら、私のことをもっと見てくれますか?
貴女を手に入れるその時まで、母様の罵りにも、父様の無視にも、兄様達の暴力にも執事とメイドの陰口にも耐えて、生きるから。
だからその時は、私のこと、また受け入れて、愛して。
「……あ! ノアさん! 奇遇ですね。でも、そんなにフラフラしてて大丈夫で――」
「貴女には関係ない」
何とも思っていないコイツとよく会うのは貴女が思った通りですか?
もしかして、未来を知っていてああいう事を言ったのかも……。
だから、私は本当に結婚して、心の底から愛してたんだ!
そう思ったら目の前のヤツが――
余計に憎くなった。
私と結婚したけど、何かが原因で逃げたくなったんだ。
だから、嘘を言って私の目の前から消えるつもりなんでしょう。
「ノアさん、あの、政略結婚だし、それも2人と同時に……だけど、その、仲良く」
「貴女はルノマースに譲ります。テネプエラから出て行くか、兄様達に擦り寄って下さい」
絶対に離れないから、離さないでいて下さいね。




