フラグってどこで売れますか?
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――なんでこの子、私に懐いちゃってんだろう。
こんなはずじゃなかった。ちょこっと台本の存在そのものを忘れてたりしただけで、本来なら私が「弱小」と言われるはずだった。
それがなんで……。
「マキナ様と言うのですね! 私は……あれ、そういえば、何故私の名前を……?」
「ノア・アステリオ様……ですよね? あの、えっと……知ってたもので」
「すごいです! 国の者は誰一人私を知らないのに」
「あ、あはは……」
やばいやばいめっちゃ悲しいごっさ悲しい可愛いんだけど見てられないよ。
何よりそろそろ台本様がお怒りになる。台本の顔も二度まで、もうサイドストーリー作りは止めないと。
「私を受け入れたのはマキナ様だけです」
けれど、この恍惚とした顔をもっと見たいと思ってしまう私がいる。
「そんな、ほら、エクシア様だって」
……あれ? 私ってまだエクシアのこと知らないんだよね、ストーリー上。
…………あっ。後戻り機能とか、無いよね。
「アイツはただの猫かぶった何かです。そんなことより、もっとマキナ様のこと、知りたいです」
「……はっ……あっ……そ、そーですかあ……」
違うんだよノア、君は今『吊り橋効果』的なやつにかかってるんだ。
精神的にやられてる時に優しくされると恋みたいなやつ、恋もどきにかかるあれなんだよ。
「いや、マキナさん……君の思うような人じゃないしなあ、はは」
「いえ、私にとってマキナ様は唯一私を気にかけて下さった……」
「違う、違うんだよ……」
だらしなく着られた服から見える白い肌が眩しい。もう無理。
「なら、ならばこの気持ちはなんですか?」
「一時の迷いですッ!! 貴方は、エクシアと結ばれなきゃいけないんです」
「何故ですか?」
「そんなのはどうでもいい。とにかく、エクシアは意外と良い奴だから、ね? 貴方は混乱してるだけ。分かったらさっさと私を忘れて――」
そこまで言いかけた時、遠くから少し聞き慣れた声がした。
「――お嬢様? どこですか? ……可笑しいな、ここから声が聞こえたような」
「はーい、今行きますよーだ。……じゃあ、できれば私のこと嫌いになっておいて」
台本的に。貴方がマキナ側だと恋愛ゲーム成立しないから。ただの血みどろの争いになるから。
「お嬢様、誰かと話してました?」
「いや? なあんにも無いけど」
もうそろそろ2つ目のイベントかな。
エクシアに見つからないように人通りの少ない道を通って馬車まで行った。
「――嫌いになる所か、忘れることなんてできる訳ないじゃないですかあ……」




