この関係って地底に行けば白紙にできますか?
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――要約してしまえば、私のファインプレーにより、家は潰れずに済んだ。
けれど二次元の原則として「一難去ってまた一難」と言うのがある。ストーリーを淡々と進められるよう、大きなイベントが一、二週間毎に起こることだ。
今だって旅に何を持って行くか悩んでいる。
「私の体意外とタフだからこんなに薬は要らないかな……でも誰か怪我とかしたら」
「そんなの俺が回復してやる。お前の命が最優先だ、荷物のせいでお前が死んだら元も子もない」
「そんなものですかね」
「俺はお前を護る為だけに行く、それだけ覚えてろ」
そこらの女性だったら一瞬で惚れると思うけど、生憎私はイケメン慣れなるものをしてしまった。我ながら生意気。
いやあそれにしても美しい。非の打ち所の無い人というのはこういう人を指すんだろうな。
「兄様は準備はある程度できたのですか?」
「少しはな。まあ、あと約一週間はあるから」
「そうですか……私、荷物整理は苦手なので」
「……なあ」
血色のいい唇に目が行く、どこまでも完璧な人。ノアとヘライトはどこかしら欠点があるから親しみやすい。
でも、兄様はどこか慣れ親しんでは行けない気がする。
「俺のことは嫌いか?」
「…………へっ、は、へ?」
「いつも俺だけ除け者で、あの二人ばかり優先する。お前には俺だけでいいだろう?」
「あ……え……ど、いうことです」
「あの二人ばかり優先する」は嫉妬に分類できる。これはノアとヘライトによく見られる。
「俺だけでいいだろう?」は初めてだ。これは二人と違う所か。
「俺にはお前しかいない。でも、お前の周りには沢山の邪魔が蔓延っている」
兄様は感情が声に出やすいのでは。今だって普段の清涼な声ではなく、何かを責めるような低い声。
目には何も映っていない。透き通っていたはずの水色がじわじわと濁っていく。
「いや、マキナに全て押し付けるのは違うか。……せめて、お前を想うことだけは許してくれ。ああでもそれでは足りない」
「あ、えと、何だったら足ります?」
「一番いいのはお前と恋仲になることだが……名前で、呼び捨てで呼んでくれ」
「呼び捨てですか。呼び捨て!? れ、レヴィア……って呼ぶんですか!?」
兄様は疲れてるのだ。そうに違いない。そうとしか考えられない。そうじゃなかったら失神してやる。
しかし本人は「レヴィア」と呼ぶことを強制しようとしている。それにしても、なぜ急に。
「後で元の呼び方に戻せなんて言っても戻しませんからね、に……レヴィア」
「嗚呼、それでいい。それでやっと『兄』から解放される」




