やっぱり記憶って売れますか?
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お母さんは案外……いや、予想通りかな? 極々普通の、理想的と言うべきか、そんなお母さん。
お父さんも、存外普通のお父さん。アニメとかにいる、太っ腹な優しいお父さん。
この夫婦を言い表すなら「仲のいいモブ夫婦」と言ったところ。主人公達に少し関わるような人達。
「そこまでは予想通りと言うべきか……」
予想外の家族構成が出来上がってしまった。
朝、目が覚める、親と他愛もないする、そこまでは予想通りと言い切ってしまおう。問題はそこからだ。
「……お前、今日、いつもに増して様子可笑しくないか?」
「ああえっと……心配ご無用です。……兄様」
「……そうか」
絵に描いても描ききれない美形が目の前にいる。切れ長の透き通った水色の目が一層美貌を引き出している。非の打ち所のない美形。
おまけにスタイルも抜群、身長高い、脚長い、小顔、隣に並びたくない人NO.1だ。
この条件はノアとヘライトにも該当したが、あの二人は依存度が摩訶不思議な子達だったので何でか一緒にいられた。
「もう何ボケっとしてるのマキナ!! 早く行くわよ!」
「ああ、はい……」
この人達から産まれたとはお世辞にも思えない、言えない。
――あ、そうそう、今度生まれ変わったこの世界は普通に魔法がある。というか魔法が使えて当たり前。
私? 私は残念ながら弱魔法しか使えなかったよマキナB。残念だったねマキナD。
脳内で大量にいるマキナに話しかけながら現実逃避をする。因みに見た目がチート級の兄は魔術も武術もトップクラス。
「チートチーターチーテストやんなあ……」
「何言ってんの? 早く行きましょっ、美形は補給しておかなくちゃ」
「兄様もかなりの美形だと思うんですけど」
「あの子は自分の子だし、何より冷たいわね。……ああ、あの子を除いてだけど」
あの子……? ダメだな、知らない。けど、お母さんは『私』が『マキナ』であると思っているから話は合わせないといけない。
今も前世も『私』は『マキナ』だったけれど、『私』は『私』のままだ。
要約すると、記憶がすっぽり抜けた。どんまいとマキナAが言った。
「あの子? ……えーと」
「あら、覚えてない? シアちゃんよ、お隣の。貴女より二つ歳下」
レヴィア、シアちゃんの方を妹みたいに扱ってるからさ。簡単に言えばぞっこん。
「この子本当に自分の子だっけ、本当はシアちゃんの家の子なのでは」なんて思っちゃったりした訳よ! とお母さんは明るく言う。
いや、お母さん。それは明るく言うものではないと思う。
しかしこれで私の置かれている状況、家族関係が分かった。要はシアちゃんとやらと兄……レヴィアをくっつけりゃいいんだろ、神様。
「にしても、シアちゃんねえ……幸せのシアから取ってるんかなあ」
「そんなに知りたきゃシアちゃんの御両親に聞きなさい」
「兄様の方が知ってそうだからいいや」
――――そんな会話をしている内に目的地に着いた。まあ、今世は国の中にお家があるので。
もう、あんな花畑には行かないだろう。その前にこの国に殆ど全部揃っている。
目的地には人だかりができていて、その中心に二人がいるみたいだ。
「ちょっとだけすみません……あ、いた」
容姿は変わらず美しいままだった……が。
ノアには濃いクマが復活していた。お前まで転生してこなくていいよクマ。
ヘライトは前よりふんわりとした空気に包まれていた。責任がなくなったもんね、そりゃそうだよね。
ヘライトと目が合った気がしたので、「ノアのクマは治らなかったのね」と言う意味を込めて涙袋の辺りを触っていると、
「――――マキナ様!!」
大型犬に飛びつかれた感覚がした。ヘライトは前よりフレンドリーになったようだ。
勿論辺りはざわめいた。お母さんだって目を丸くしている。私も目を丸くしている。
「マキナ様、よかった。もう会えないと思っていたから」
「私のクマのことしっているのマキナ様くらいですよ」
「最後に死んだ私の気持ちを考えてくれません? あのじんわり死んでいく感覚」
「折角生まれ直したと言うのに、私達……また、遠い存在に」
「いいですよ。貴方達が今度こそまともな人生を送ることができるのなら」
「……何ふざけたこと言っているのです? 今度こそ、貴女は私達の妻になるんですよ?」
「……はえ?」
ふざけてんのそっちじゃない? あれ嘘じゃないの? 本当に妻にするの?




