生気って10Gあれば買えますか?
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頭おかしくなりそうなくらいに疲れてきた。と言えば嘘になるが。
見たことも聞いたこともない道を歩くのは疲れるものだ。毎日台本から離れて独り歩きしてる途中だからというのもあるとは思う。
なぜここまで行かなければいけないのだろう、なぜこんなにも歩いているのだろう。
最早国語の問題文に出てもおかしくないレベル。私はどちらかというと理系だったけど。
「――ああ、ほら、やっと着きました」
「ようやっとこのグダグダに終止符を打てるのか」
若干汗ばんだ顔を上げ、辺りを見回す。そこには良い意味で何とも言えない風景が広がっていた。
鬱蒼とした木々は消え、花が咲き誇り、陽は葉を照らし……えっと、葉は……光合成なう。
現代だったら人が映えるとかほざきながら集まりそうだ。でも、ここにはスマホなんてものは無い、インターネットなんて尚更。
「この先に町があるのでしょう? さ、行きましょう!」
今までの不安を吹っ飛ばすくらいの元気さを持って二人に話しかける。
話しかけた、のだが。二人は変な者を見るかの様な眼差しとどこか冷え切った声を携えて言い放った。
「町? 何を言っているのですか? そんなの、ある訳ないでしょう」
「マキナ様。私達は貴女が見ていない所でアイツから手紙等を貰った。ならば、貴方が見ていない所で私達が何しても不思議ではないでしょう」
「え。私、騙されたの?」
ドッキリ? 何かのドッキリ? 新手のやつかな。
それとも……暗殺、とか。私の見てない、知らない所で手を組んで計画立てて……。でも私は死にたいし、これが利害の一致とかいうやつ? 違う?
「ええ、騙されたのです。貴女はまんまと私達に騙された」
「けど、ここはもう一本道。家はもう遠い所。……ねえ、ここまで来たら最後まで着いてきてくれるでしょう?」
そう言われると逃げたくなるんだな人間って。
人間の性に逆らうことをせず、元来た道を戻ろうとする。誰しもが持ってるほんの好奇心。
しかし今の二人には通じない好奇心だったらしい。腕が痩せたんじゃないかと錯覚するくらいの力で掴まれる。
「ね、来てくれますよね」
「…………ひゃあい」
多分今は骨が引っ込んでる。間もなく軟体生物。二人とも私のことを大切に思ってるんだか思ってないんだか。
「行きましょう。この世界は私達が嫌いみたいだったから」
「ねえ、何を企んでいるのですか?」
その問いには何も返さず、組織にまで退化しそうな腕を掴んだまま綺麗な花畑へ入って行く。
皆が『天国』『楽園』『理想郷』と言われてやっと想像するような場所には不自然なくらいに人がいない。
それもそうだろう。誰もあんな鬱蒼とした先にこれがあるとは思わない。
……まあ、綺麗なんだけど、それを超える不安がある。何故かは知らないけれど。虫の知らせの最上級版。
「マキナ様、綺麗でしょう? 偶然、見つけたのです。瞬間、私達は『ここがいい』と思いました」
「へ、へえ……ちょおっと、いやかなり、理解し難いのですが……」
そう言うと、「じゃあ、直球に言いますね」とノアが満面の笑みを浮かべた。
「此処は最期の場所です。此処は、私達と貴女の死に場所です」
ぬいぐるみも持ってくればよかったかな、なんて小さな子が遠足に持って行く物を決める感覚で言い放った彼はやはり可笑しい。
エクシアとの縁談も終わってないのに。まだ両親は二人のことを探しているというのに。
「此処には誰も来ません。此処には何もありません。私達に似合ってますよね」
「誰も来ないから、私達が引き離されることはありません」
そして、あれだけ死なないとと言っていた私が急激に死ぬ気を無くし、死なせないと言っていた二人が死にたがっている。
何事も二対一は卑怯だよね。逃げ場がないんだもの。




