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台本を装備した悪役令嬢があらわれた!  作者: ぱつぷぇ
台本の中で狂気を綴ることはできない
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夢の記憶って自分からしか買えませんか?





 魔法使える世界だとは思わなかった。そんな描写ゲームになかった。


 あったとしても精々二次創作物だった。


 でも、今思ってみれば、魔法の一つや二つ使えてもよかったのかもしれない。



「私、一つしか使えなかったけど、初めて役に立ちました……」



 魔法の一つ使えてもいい世界らしい。


 まあ、人間なんて言う器に膨大な魔力と呪文は入らないわな。もしかしたら一人一つの魔法なのかもしれない。


 空では鳥が優雅に青色を泳ぎ、湖では魚が得意気に透明に飛んでいた。


 ――ここどこ? 割と本当、意外と本意でここどこ?


 お世辞にも「きゃあ、ここ素敵」だなんて言える場所ではない。


 いや、自然美に触れられる点では素敵なことこの上ないが。



「飢え死に、襲われて死、崖から落ちて死、上から岩が落ちてきて死……死後の世界で悠々自適に過ごすのも悪くないのでは?」


「ヘライト様は傲慢極めてますからねえ」


「はあ?」


「そんなことより、早く帰りましょう。家に」



 それにしても……ノアは瞬間移動魔法か。ヘライトはどんなのなんだろう?


 ゲームではモンスターしか出て来なかった。けれど、モンスターが出て来たからって魔法が使えないとは言ってなかったもんな。



「家に帰ると言っても、マキナさんは地理に疎いですよ。それに魔女だし」


「はいはい後付け設定はもう結構です。ちゃんと血の通った人なのに」


「……ふざけてないで早く帰りましょう。エクシアが追ってでも来たら大変です」



 エクシア、は私達を殺そうとでも考えているのか。


 急すぎる展開に頭がついて行かない。頭がフル活動したせいか、眠くなってきた。


 ああ、けど、寝てはいけない。あの時のように攫われてしまう。



「あとノア様は一々ここに来ないと死ぬんですか」


「死にはしませんよ。思い出の場所は覚えておかないと」



 死因は刺殺。魂は画面に吸い込まれていった。



「思い出の場所がこんな所では驚いてしまうでしょう」



 いや、亡骸も共に攫われたのかもしれない。後ろから彼等がナイフで、私の背中を。




――――




「……はあ」



 とても不快な夢を見た。なんで私はノリノリで魔女なんか演じているんだ。


 史上最悪の夢オチだこんなの。意識も思い出も事実も混濁している。どこまで実際にあったんだ。


 隣を見ると、ノアとへライトが規則正しい浅い呼吸を繰り返していた。


 外に出られるくらいの隙間はあったけれど……何だか出る気にはなれなかった。



「今日は服を買いに行かないとなあ」



 廊下からは小さな鼻歌が聞こえてきた。イロナだろうか、彼女は働き者だから、そろそろ休みを与えないと。


 ――なんだか、今日はのんびり行きたくなった。ただ単に眠りにつきたいだけなのかもしれないけど。


 本当、何でだろうね。時間が遅れるだけだってのに。





『――今度はもっと、上手くやりますから』

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