魔法使いセットはどの地方で買えますか?
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ごめんねお父様、私達、今日は出かけられそうにないや。
ノアとヘライト、イン険悪ムード解消かと思いきや二人はおもむろにベッドから降り、猫のように……いや、犬? のように頭を押し付けてくる。
私ゃナワバリかって。出会ってから二人は依存に近い、それ以上かもしれないベクトルで甘えて来る。
「ほら、着替え」
「マキナ様、どこに何があるか分かりますか?」
「分からないですよ?」
「……私が案内して差し上げますね」
前よりも自然な笑みを浮かべて、温かみのある声でヘライトは言った。
なんだ、台本を見た意味がなかった。そう思いながら廊下へ出る。そろそろ二人の部屋も用意しないとだなあ。
ああでも、一緒にいないとダメだからって私の部屋に来るのかな。
「お嬢様! わた、私、あああの、へん、変な噂聞いてっちゃって」
「第一に落ち着いた方がいいと思う」
朝から元気な人だ。イロナは毎朝「新鮮な物を食べて欲しい」と態々遠くまで新鮮で美味しい食材を買って来てくれる。
ありがたいのだが、本人の体調面が心配な所もある。無理はしないで欲しい。
二つ、三つとわざとらしく咳をして、イロナは口を開いた。
「エクシロセスではお嬢様のことを魔女だと認識しているそうです! なんでも、本来ならあの二人はエクシロセスのお姫様と婚約するはずだったとか!」
「…………うん、知ってた」
「うわ……魔女だ。……あ、で、えと、エクシロセスのお姫様は二人に一目惚れしてたとかで、言い方は悪いですけど、奪ったお嬢様のことを恨んでるみたいです!」
「……うん、何となく分かってた」
そんな! と自信作の悪戯が失敗した子供のような表情になったイロナ。
「あ、そうだ。朝食は如何されます?」
「私は食べる。二人も食べると思うから、用意しておいてくれる?」
「はーい!」
イロナもイロナで変わった。最初はメイド味のある感じだったが、今ではただの明るいメイドの格好をしたイロナだ。
唯一の心の拠り所なんてないこの世界で、イロナはちょっとしたオアシスになっている。
――もう着替え終わっただろうか。踵を返して部屋に戻る。
「着替え終わりました?」
「はい、終わりました」
「なら遠慮も躊躇も戸惑いもなく入りますね」
やはりお父様のは大きいみたいだ。まあ、可愛いからよし。
そう呑気になっていると、ノアが私の元へやって来た。
「マキナ様、髪を結ってくれませんか?」
「……おう。頑張ってみる」
どうしよう髪なんて結んだことないよ、私。とりあえず三つ編みでいいかな。
ドレッサーから櫛を取り出し、髪を梳かす。「擽ったいです」と小さな笑い声が聞こえた。
「私も髪伸ばそうかな……」
「ヘライト様はそのままの方がかっこいいですよ」
「そっ……そうですか」
「私は格好よくないんですか!?」
「ノア様は……美しいです」
「うん……格好いいと言われたいです」




