読める空気は地上で買えますか?
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「ね、行こう! 今更無しとか駄目ですから」
「……はい。頑張って護ります」
「護って……!? いや、護らなくていいよ、本当!」
「…………何故?」
探るような声色でヘライトが言う。そりゃあ私が死ねないからなあ。
しかしそんなことを言ったら監禁される可能性がある。それは夢の見すぎかなあ、でも、懐いてくれてるし……。
「まさか、死にたいとか……」
「なっ、んな訳ないじゃないですかあ……もう」
「じゃあ全力で護りますね」
「それは止めて。お願いしますから」
彼等のナイフの形をした勘が肺に刺さる。図星だから何も言えない、それらしいことを必死で考えないと。
「モンスターに会いたいんだ」、「たまには自然に触れたい」……ここは台本通り、「綺麗な植物が沢山あると聞いたんです」でいいか。
「綺麗な植物が沢山あると聞き、是非行ってみたいなと……ノア様?」
ノアは何かを思い出した様に透き通った水色の眼でこちらを見てきた。その眼は今にも零れそうな程、潤んでいた。
「話変わりますが、いいですか? その、あの、ぬいぐるみ……」
「ああ、なんだ、あれか。私意外と家庭科は得意だから直しておくよ」
「カテイカ? あ……えっと、ごめんなさい、今度からちゃんと気を付けます」
「貴方の無事が最優先だから、それだけは……というか、私の家に住めばいいのに」
お? そんなこと言っちゃダメだよ自分。余計この世界に情が湧いちゃうでしょう。
というか、王子が一般人のお家に住むのもダメか。余りにも王子らしさが抜けていたから、つい友達に言うかのような口ぶりで。
「いいのですか? マキナ様がいいと仰るのなら、ありがたく……」
「えっえっ……えっ? 本当に言ってる? 本当に言ってます?」
「金なら有り余る程ありますし……」
「無料でいいんだけどな。貴方がいいなら、どうぞ?」
そう言うと、ノアは満面の笑みで「ありがとうございます」と言った。元はと言えば母が「泊まります?」とか言ったのが悪い。
泊まると住むは全くの別物だからやっぱり私が悪いわ。ごめん。
ふと袖を掴まれた気がしたので振り返ると、ヘライトが焦れた眼差しで
「私も住みたいです」
と言う。貴方は第一王子だから、物凄く大切に育てられたから。ノアは必要とされてない馬鹿みたいな国で育ったけど、貴方は国に影響ありだから。
「ダメだよ。貴方は第一王子でしょう?」
次の王になるのだから。諭す様に言う。
それがいけなかったのか、ヘライトは目から大粒の涙を流した。私の阿呆。
「なんで。なんで、ノア様はよくて私はいけないのですか、第一王子という理由だけで貴女に拒まれるなら……もう、あんな所、捨ててやる……!」
「それ一番やったらいけないやつッ!! 分かった! どうぞ、貴方がいいならいいよ!?」
何故か私に嫌われた、拒まれたと勘違いを起こしたヘライトは中々泣き止まない。ノアも戸惑っている。
寝起きだったり泣いたりするとヘライト何言い出すか分からないもんな。
「マキナ様はノア様のほうがいいんだ、私のこと、いらない」
「違う、ただ、貴方のご両親は許可したのかなあって。ね? 嫌ってないですから、むしろ私には貴方達が必要不可欠ですから」
「きらいなところ直しますからあ……うう」
「泣かないで、じ、じゃあ今日は一緒に寝よう! ね、いいでしょう!」
今日は落ち着きを取り戻しにくいのか、ヘライトの嗚咽は止まない。私はそんなヘライトの背中を撫でることしか出来なかった。
最初の二人って人形みたいだったけど、根は意外と泣き虫だったり……?
「ずっと一緒じゃなきゃいやです……」
「ずっと一緒だから、ずっと貴方のそばにいるから」
「……本当? ――約束、ですからね」




