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台本を装備した悪役令嬢があらわれた!  作者: ぱつぷぇ
台本の中で疲れを吐くことは容易ではない
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温もりって別のデータで買えますか?




「お父様! 正気ですか? 狂気ですか? 狂気ですよね」


「マキナ、落ち着け。……お前もいつか分かる。あの目には逆らえない」


「だからって……こんなの略奪にも等しいです。違う、略奪よりもタチが悪い」



 エクシア側……何だっけ? えーと、え、エクシロセス王国……私の滑舌と仲悪そう。


 まあ、私はきっとその王国に嫌われているからいつか暗殺されるでしょう。



「頼む、マキナ。一度頷いてしまったものを取り消そうとしたら、何をされるか分からない」


「私がエクシアから……エクシロセスから殺されてもいいのですか!?」



 エクシアの名前の由来は国から取った文字。つまり国を背負うとかそういう期待を込めてつけた名前。


 そんな籠の中の鳥……寵愛を受けるべき姫のお顔に泥パックをしてしまった。


 美肌とかそんなのじゃない。そういう次元越しちゃってる。



「マキナ……貴女を生贄にするような真似をしてしまってごめんなさい。恨まれていることは分かっているわ」


「本当ですよ」



 父母にここまで見捨てられたんだ。ヘライト達の一言だけでここまで離されるんだ。


 人間関係って脆いなあ。お金って絶対なんだなあ。もう死ぬのかなあ。


 死んだらまた三次元に行くのかな、この記憶もすっかり無くなっちゃうのかな。辛くなってもいいからそれだけは避けられないかな。



「……もういいです。今日は寝ます。おやすみなさい」


「すまないな、マキナ……良い夢を」



 良い夢なんて見れるかってんだ馬鹿。広い廊下を歩き、二階に行って、奥にある自分の部屋へ向かう。



 もう逃げられない。どうしようもない。諦める。二人に嫌われることを諦める。


 せめて正気に戻そう。嫌われなくていいから……そうだ、演技の可能性があったよな。じゃあ二人の真意を探そう。



「おかえりなさい」


「た、ただいま?」



 二人はくまのぬいぐるみを抱きしめている。あ、可愛い。あ、凄い女子力。


 ――いやいや騙されるな、これは演技かも……やっぱり可愛い、可愛い。



「マキナ様、何のお話をしていたのですか?」


「んっとね……何でもないお話かなあ」


「嘘」


「ごめん。……でも、心配しなくていいよ。その……うん」



 目が勝手に二人の全身を舐め回すように動く。急な泊まりだったから二人が今身にまとっているのは父の服。



 ただサイズが合っていない。ぶかぶかだ、ああもう可愛い。



「あ……寝ようか! 明日、何も無いけど」


「そうですね、マキナ様はどこで寝ますか?」


「端っこか床で」


「何か言いました?」



「……真ん中がいいなあ」



 ごめんねお父様貴方の気持ちが分かった。有無を言わせないあの目力。


 もうどうにでもなあれ。そう思いながら真ん中に寝ると、両端から抱きしめられる。



「くま、どうしたの?」


「くまより貴女がいいです」


「今日は冷えますから。マキナ様の寝相で毛布を奪われたら溜まったものじゃないので」


「……あっはい」



 言葉の寒暖差がすごい。真夏から真冬。気温差15℃くらい。


 そこが魅力なんだけどね。ところで、これ元の路線に直せるかな、軌道修正可能かな。



「おやすみなさい」



 悩んだって何にもならない。今は寝たいから寝る。はい、おやすみ!


 二人の体温が温かくて、いつもより早く夢の中へ落ちた。



――――



「うう、マキナ様に冷たいこと言っちゃった……絶対、嫌われた、ごめんなさい、ごめんなさいマキナ様あ……」


「マキナ様、温かい……久しぶりによく眠れる……ずっと、この時間が続けばいいのに」


「二人共まだ起きてたんかい」



「……マキナ様あ……貴女の言うこと、全部、全部聞くから、絶対に捨てな……で……」


「私、ずっと、冷たい床で……こんなにあったかいの、初めて……」


「――あれ、寝たの? 寝ちゃったの? 腕痺れたから寝相変えたいんだけど。あれ? お二人さーん? ……もう腕の感覚なくなりそうなんだけど」

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