正気って道具屋で買えますか?
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風呂は気持ちよかった、と思う。私も人のこと言えないくらい混乱中。
どうしてこうなってしまった、どのようにしてこうなったんだ、こんなはずじゃなかった。
「……」
ご飯ってどんな味したっけ。最近凄い粘土みたいな味する。美味しいんだけど、美味しいんだけど、心が「これ粘土だよ」と訴えてくる。
早く食べて早く歯磨いて早く部屋に戻ろうそうしよう。そんな私の脳を見透かしたように父が言った。
「マキナ、いつ何があったか具体的に教えてくれ」
「ちょっと学がないので」
「なら私が。……私達にマキナ様をください」
「……え」
あれあれ? 幻覚かな、幻聴かな、それとも二人が寝惚けているのかな?
私がエクシアに見えてエクシアが私に見えるんだ。だからこんなに予想外のことが起きるのか。
……演技っていう可能性もあるけど。
「ノア様とヘライト様にはもう素敵な奥方が」
「私達はそう言った話に縁がなく、仕事ばかりで疲れ果てていたのですがマキナ様のお陰で疲れが飛びました」
「だからこの方だったら後悔も何も無い、むしろ嬉しいことしかないと思ったのです」
「お父様この人達の話は信じちゃいけないわきっと視野狭い期なのよ」
「……どうか、娘をよろしくお願いします」
圧にやられてる、王子の圧にやられてる、殺られちゃったよお父様。あっさり娘渡しちゃった。
え? もしかしなくてもエクシアとの縁談もこんな感じだったの? 嘘と圧に塗れてたの?
私生贄に抜擢された系? 二人は偽物の王子で実は魔物的なオチ? そして本物の王子達は幸せな生活送ってるエンド?
「え、いや私は嫌」
「マキナ様、お義父様の許可は取れました。今度、私の父様に挨拶をしに行きましょう」
「さっきまで反抗期じゃなかった? ねえ何とか言ってよお母様」
「マキナ……素晴らしい女性になったわ……」
ああ感極まって泣いちゃった。私も泣きたいよ。ここで大声で泣いたら引いてくれるかな。
「私の父様にも、一応挨拶しに行きましょう? 兄様達に何かされたら、すぐ排除しますから……」
「いやあ、まさかこんな急に娘の結婚が決まるとは!」
「お父様? 今私達がやったのは恐らく世界で一番早く終わった縁談だと思います。何故そこまで喜ぶのですか?」
「ルノマースの第一王子とテネプエラの第三王子……我が家も安泰だな」
金銭面しか考えてなかった、そういう感じの両親だということが判明。
まあ、悪役令嬢の親ですし。仕方の無いことかもね、一生恨んどこ。
通りで今日急に『王子くるから』って言った時もどこか嬉しそうだったんだ。ああやだやだ。
「……今までの中で最高の食事でした。何せ、愛しい人と結ばれることを許されたのですから」
「ほらあ、まだ決まった訳じゃないでしょう? ね、正気に戻って」
「父様と母様達にはしっかり伝えておきますのでご安心を。もしも父様達が話を聞いてくれなかったら……ねえ?」




