時間ってラスボス前までには買えますか?
・
この二人を連れて来て一つ分かったことがある。
意外と私の家の人達は状況を察してくれる。私が大ピンチ過ぎてどうしようもないことを分かってくれたのだろう。
母に至っては混乱しすぎて「と、泊まっていかれますか?」と聞いていた。そんなはずないでしょ。
そんなの無いよ。だって、二人は王子……だもん…………んん?
外はもう暗いというのに、二人が帰る気配は一向に見えない。なんで? みんな心配するよ?
「か……帰らないのですか?」
「え? だって、泊まっていいのでしょう?」
「いや、本当に泊まるつもりですか? このベッド、大きいけど二人しか入れない」
そう、前世では見なかったような、大きくて、寝心地のいい、豪華なベッド。でも、私はゲームしながらソファに寝転ぶのが好きだったなあ。
別に華美なのが嫌いという訳では無いんだけど、元庶民だから、質素に慣れ親しんでいる。
「……もしかしてマキナ様、私達と寝るつもりだったのですか?」
「あ、ヘライト様は他人と寝るの無理な感じ? じゃあお父様に相談して」
「マキナ様細いから大丈夫ですよお」
へらあっと笑って一緒に寝ることに賛成するノアと、若干引き気味のヘライト。
じゃあノアと一緒に寝て、ヘライトは別のベッドで寝るとか……いい案じゃない?
「私、ノアと一緒に寝るからヘライトは別のベッドで寝たらどうでしょう?」
「私もお二人と共に寝ます」
「ヘライト様、無理しなくていいんですよ? 私はマキナ様と共に寝ますので」
「いや、何があっても共に寝ます」
あまりの勢いにこちらが「おう……」となった。一件落着ってことでいいよね、落ちついたもんね。
「――ところで、ベッドの上にある、それ、何ですか?」
自由なノアの辿々しい質問と焦点の合わない目線を辿ると、50cmくらいの茶色いくまのぬいぐるみがあった。
もふもふで寒い日は湯たんぽ代わりになるから使い勝手がとてもいい。可愛いし。
ああ、けど、この二人はそういうのが無いのか。
期待だとか、理想だとか、重いものばかり与えられて来たヘライトと、逆に何も与えられて来なかったノア。
「ぬいぐるみだよ。可愛らしいくまの」
「……触ってもいいですか?」
「どうぞ? 抱き締めてくれてもいいんですよ?」
この二人の人形感は親が形成したものか。今までそれを普通としてきたから、家出なんてしようと思わなかった。
……あれ、そう思ったら私かなりの厄介者じゃない? 折角思い通りになる美しい人形に心与えちゃったんだもの。
……あらあ、私ってば。何だか急に前世に戻りたくなってきた。あの世界だったら責任転嫁し放題だった。
「あったかい」
「最近天気ごたごたしてますからね」
「これ、欲しい」
「そんなに気に入ったのならどうぞ。可愛いから癒しになると思いますよ」
責任転嫁の余地もなし、そもそも周りに誰もなし。詰みです。お疲れ様でした。
でもこの世界のおかげでこういう推しの隠れた一面とか笑顔とかその他諸々全部含めて見れるんだよなあ。
まだ死にたくないな。いっそのこと台本アレンジして手の付けようのない大悪女になろうかな。
「ふふ、マキナ様の私物……これで夜も安眠。マキナ様のくれたハンカチ、兄様に盗られちゃったからなあ……」
「城に帰ったら私の居場所無くなってるかな…でも、そうしたらマキナ様は拾ってくれるのかもな」




