不幸とフコウ
東京 町田市
そこそこ都会なこの町の高校に、自宅から二時間もかけて通学している。
いつもと変わりのない、平凡な日常を過ごし、
自宅に帰ろうと、電車に乗ろうとする。
駅前は、いつもより人が多く、ギュウギュウ詰めだった。
「ただ今、小田急線、新百合ヶ丘駅で脱線事故がありました。新宿方面の電車は、ただ今運行を停止しています。」
新宿方面っていったら、俺の電車に乗る方面じゃないか。
今日はバスで帰るしかなさそうだな。
そういえば、もうすぐ母の誕生日だ。
何か買って帰ろうかな。
いや、今日は手持ちの金が少ないんだった。
明日、姉と買いに行けばいいや。
そう思いながら、バス停に並んだ。
電車が、運行停止なのに自分が並んだバス停には誰もいなかった。
「いっつも、もっと人いるだろ。」
ここのバス停は駅から近いし、ハルトの住んでいる方向に帰る人は沢山いるはずだ。
5分たって、バスが来ても結局、そのバスに乗ったのはほんの数人だった。
バスの中には、学校の制服を着た、中学生くらいの、女の子とおじいさんしかいなかった。
ハルトは、一番後ろの席に座った。
女子中学生は、銀髪で長い髪を二つ結びにしている。
どう考えても、外人だ。
優先席にいるおじいさんは、次の停留所で降りるらしく、下車を知らせるボタンを押していた。
停留所に止まり、おじいさんは降りた。
次の停留所は、自分の降りるところなのでボタンを押した。
おじいさんが、降りた停留所から、自分が降りる停留所までは、少し距離がある。
もうすぐ、通る橋を渡れば、バス停はすぐ近くだ。
そして、バスが橋に近づいた時、バスのスピードがいきなり早まった。
予測していなかった事なので、ハルトは前の席に腹を強打した。
「いっ!...ってぇ」
気づけば、女子中学生は、必死に運転手を起こそうとしてた。
運転手が、発作か何かを起こしたらしい。
「大丈夫ですか!?しっかりしてください!起きてください!」
と、肩を揺さぶっている。
自分も、駆けつけ、運転手の代わりにブレーキを踏もうとしたが、ブレーキは効かなかった。
「ブレーキが、壊れてる!?」
突如、運転手の左手が、ハンドルを強く曲げて、バスも曲がる。
どんどん、橋の手すりに近づいていく。
「君!ここに捕まって!!」
女子中学生を半ば強引に引き寄せ、運転席の近くの手すりに掴まらせた。
女子中学生は、歯を食いしばって、涙をこらえている。
自分も、目を閉じた。
死ぬんだったら、楽な死に方をしたい。
水中で、苦しみながら死ぬなんて、嫌だな。
自分の人生平凡だったな。
バスは、橋から落下した。
さよなら、俺の人生_____________
___________ふと目を開けた。
自分は歩いていた。それも、見た事の無いようであるような、懐かしい感じの森を。
「はぁはぁっはぁ」
息が上がっている。
何時間歩いたかも分からない。
どれだけ歩いたかも分からない。
ただ、自分の足が止まらないのだ。
ひたすら、どこかに向かって歩き続ける。
「はぁっはぁっ」
もう限界がすぐそこまで来てる気がした。
だめだ、もう無理だ。
そう思った。だが、足は止められない。
「あぁ」
思わず声が出てしまった。
小屋だ、小屋がある。
木造で作られた小さな小屋の煙突からは煙が上がっている。中に人がいるのだ。
重たい足を動かし、やっと小屋のドアを開けた。
「やぁ、こんにちは」
薄い水色の髪をした、幼い少女が立っていた。
部屋は小さく、テーブルと椅子でいっぱいいっぱいの狭さだった。
少女は、反対側の椅子に座り紅茶を飲んでいた。
「待っていたよ」
「座りなよ」と、彼女は空いている椅子を指さした。
「君、誰?」
「名前は__」
そう言って彼女は悩むような顔をした後、
「アルカナ」
と答えた。
ハルトが椅子に腰を下ろすのを見届けると
アルカナは、
「ティルティル、お茶。」
と言った。
「ぷぃ」
と、机の影から、膝くらいの高さまでしかない、黒い物体が返事をした。
. .
うさぎのような形をしているそれは「ぷぴぃ」といいながら、紅茶を運んできた。
「あれは何?」
ハルトは思い切って黒い物体について訪ねた。
「あれは、ティルティル、私のお友達」
案外寂しいやつだなって思った。
いや、
待て待て待て待て待て待て待て待て。
なぜ俺はこんなところにいる?
死んだのか?
いや、それともこれが死後の世界ってやつか?
天国か?地獄か?
昔の自分の祖先はいるのか?
どうして、優雅に俺は紅茶なんか飲んで、あの黒い物体の名前を聞いただけで、納得したような雰囲気になっているんだ。
阿呆か、俺は
「私が呼んだ。今のところ死んでる。天国じゃない私の想世界。地獄じゃない私のアルカナの想世界。あなたの昔の先祖はぱっとしない特に何も出来ずに死んだ農民。」
すべての質問に、彼女は答えた。
いや、まて、答えているのもすごいが...
俺は一切それを口に出していない。
なのになぜ、なんで、答えられたのか。
あー、
頭がぐるぐるしてきた
「ここは私の想世界。私が創ったから私の自由に出来る。私が願えば何でも叶う。」
「人の心を読み取りたいなんて、願っちゃダメだよ。えーっと、アルカナ...ちゃん?さん?」
「呼び捨てでいい。私もハルトの事、呼び捨てだから。」
と、クスクス笑いながら言った。
「さて、本題に入ろっかな。ハルト、あなたは新しいセカイで生きたいですか?」
唐突な質問だった。
「はい」と返事を返すためには、まず質問をアルカナにしなければなかった。
「やっぱり...俺、死んだんだ?」
「うん」
「世界ってどんなところ?」
「ハルトの住んでたセカイとは少し違うかな?ケータイとか、すまほとかがないの。」
「そっか、ありがと。」
やっぱり、きた。
がくんと、自分の一部が持っていかれるような、途方もない虚無感。
自分は、もう生き返れない、戻れない
と思うと、もう死んでしまいたい。
死んでるけど。
「だから、戻れないわけじゃない。あなたがこれから行く世界は、まだ未知の事が沢山ある。帰れる方法だってあると思う。
でも、行きたいか、行きたくないかは、ハルト、あなたが決めること。あなたはどうしたい?」
頭の整理がつかない。
「俺は」
どうしたらいい、勿論「生きたい」という思いが強いのは確かだ。
誰だってそうだ。
だからと、いって簡単に決められること?
そんなわけない。
でも、答えを出すのは今だ。
「生きたい。行くよ。その世界に。」
アルカナは、ふっと微笑んだ。
「それで決まり。」
と言って、ティルティルが、持ってきた本の背表紙をなぞった。
「我らが大いなる母よ
宙を超え
すべてのセカイを超え
汝の力と誓いに従い」
アルカナが、何かを唱え出すと、本の表紙にくっついている石がキラキラと光る。
「この物に大いなる奇跡をもたらせ」
唱え終わると、本の表紙の石は光るのをやめた。
「ドアを開ければ、もう君は新しい世界に踏み出すことになる。」
「なるほど...。
短い間、だったけどありがとう。また会える?」
ドアノブに触りながら少し緊張した面持ちで、ハルトが聞くと、アルカナは飲んでいた紅茶を机に置き、「こほん」
と咳払いをして、微笑んだ
扉を開けるとハルトを、光が包み込んだ。
「ハルト、君が望むなら」
はじめまして、黒原 兎です。
学生をやっていて、配信のペースは結構遅いです。
前は、pixivでおずとして、「プラチナ.ソウル」という小説や、アニメのイラストなどを投稿していたのですが、タブレットから、スマホに機種変したら、なんとpixivが年齢制限がかかって、ログインできなくなってしまいました(泣)
なので、私の年齢でもログインのできる、このサイトで、連載していた小説、「プラチナ.ソウル」という、名前から「異世界なんて、いいものじゃない」という、タイトルに改名しました。
近々、pixivの方でもお知らせしようと思います。
あまりに、文章力がないため、
文章も、少し変えていたりもします。
まだ、ひよっこなので、文章がおかしかったりもしますが、日々努力するように頑張りますので、よろしくお願いします。
追記:
少し後半を変えました。
特に大きな変更はありません。
あと、更新遅いですね。はい
あ、あとTwitter始めました笑