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其の肆 再会

次の日、燕は何故か帝と行動していた。

庭を見たり、帝と貝合わせやすごろくをしたりした。

毎日毎日、そんな風に過ごしていた。


その姿を見た宮中の女たちは、燕を避けるようになった。

雀までもが、彼女を避けた。

燕にはそれがなぜかわからず、戸惑った。

私が何かしただろうか。帝に失礼な事を言ったのか。それとも女たちに?

燕は何もわからないまま、嫌がらせは徐々に酷くなって行った。

お気に入りの着物を破られ、貝合わせの貝を割られ、すごろくの道具を隠されても、燕は自分が悪いのだ、と思っていた。


それから暫くしての事だった。

燕は帝に、罪人の牢屋へ連れて行ってもらった。

頼んだ訳ではなく、帝が何故か連れてきたのだ。

歩いていると、見覚えのある姿があった。

罪人は皆うずくまっていたけれど、その人は分かった。

見間違うわけがない。

帝に先に帰ってもらうよう頼むと、その人の入っている檻に近づいた。


「....鷹?」


そう呼びかけると、その人は顔を上げた。

間違いない。鷹だ。

そう分かると涙が溢れた。

ずいぶんやつれましたね、あの時見捨ててごめんなさい、助けていれば貴方はこんな姿になる事は無かったのに、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい...

謝罪の念が生まれたが、言葉にできない。


「...つ、ばめ...?」


鷹も目の前にいる女性が自分のそばにずっといた者だと分かったのか、名前を呼んだ。そこで燕も我に返った。


「そうです、燕です。」

「....この数日のあいだに、ずいぶんと綺麗になって....」


お互いに泣きながらの言葉だった。

ああ、この格子がなかったら抱き締め合えるのに...。


「....」


鷹はゆっくり立ち上がり、無言で近づいてきて、格子越しに燕を見、


「...燕、燕....燕....ごめんな、ごめんな....」


泣きながら何度も燕の名を呼び、何度も謝った。


牢屋から戻った後、燕は帝にどうしたか聞かれたがうまく誤魔化しておいた。

部屋に戻ってすぐに布団に入って、泣いた。

鷹の名を何度も呼んだ。何度も謝った。声が枯れるくらいに何度も鷹を呼んだ。


もう一度、明日また会いに行こう。

何度だって会いに行こう。

愛する貴方のためならば住む場所も、ここにいる権利も、増してや命なども惜しくはない。

あの社で、前のように二人で笑い合えれば、何もいらない。

例えどんな姿であろうとも。

いつまでかかろうとも、私はその時が来るまで待つ。

それくらい神だって許してくれるだろう。

好きでいるくらい。

愛するくらい。

愛する人との毎日を望むくらい。

許してください。

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