ラヴィアンローズ
彼女は元々ゲームが好きだったが、VR乙女ゲーをプレイし、ゲーム廃人となった。
そこには彼女が望む全てが在った。
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庭付きのオシャレな豪邸。
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幾ら食べても太らない・何時までも老いない身体。
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専業主婦になる為に妥協して結婚した夫とは違い、魅力的な攻略対象達。
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彼等を虜にする美貌。
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掃除・洗濯・炊事等が必要無い世界。
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働く必要が無い世界。
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「お隣の異臭、やっぱり、亡くなってたのか?」
帰宅した夫が妻に尋ねる。
「そうらしいわ。VRゲームの中で食事が出来るから、現実で食べるのを忘れたのかしらね? 骨と皮だけみたいに痩せていたそうよ」
トイレに行くのも忘れていたらしいと聞いていたが、夫が食事中なので言わない。
「確か、ゲームにハマり過ぎて家事をしなくなった所為で離婚されたんだっけ?」
「そうよ。それで益々のめり込んだんでしょうね」
妻は、話を聞いて一番印象に残った事を口にする。
「でも、皮肉なものよね」
「何が?」
「彼女が遊んでいたゲームのタイトル。『ラヴィアンローズ(薔薇色の人生)』だったんですって」