片思い
ずっと友達だよ。
たとえ君のことを好きになろうとも。
高校一年の春。入学してすぐに僕は友達を作った。
とても優しい女の子の友達。
黒く長い髪の毛と少し堀が深めの顔だち。けして可愛くはなく、不細工でもない。
ちょっとおてんばで、口うるさいけど、僕が出会った中で一番心の奥がやさしい女の子。
「おはよう、俊。」
朝、君が後ろから挨拶してくれる。同じ時間、同じ電車の中で毎日他愛のない話をする。
学校へ向かう途中の坂道を軽く登り僕らは教室へと向かう。
楽しい毎日だった。土日の君に会えない日がいやなくらい。
「俊はやっぱり私の最高の友達だよ。」
にっこりと笑った君が少しだけ夏の日差しで黒くなっていた頃、僕の幸せの日々は泡のように消えた。
君の隣には僕じゃない人ができた。
「ばいばい、俊。」
いつも言ってくれた声も忘れるくらい君は浮かれる。
その隣にはいつも見知っている顔がある。僕の兄貴の姿。
僕なんかよりしっかりとした兄貴の腕に巻きつく君を僕は作り笑いを浮かべて見ていた。
「ねぇ、僕の兄貴の何がいいわけ。」
僕は何度も自分を傷つけるような質問を続けた。
答えるときいつだって君は僕にだって見せたことのない笑顔でこたえるんだ。
それがつらくて、僕は友達なんだって思い知らされてつらい。けど、それでいいんだ。それで。
なぜなら僕は兄貴がどんな性格で、君のことをどう思っているのかも知ってるから。だから、ちゃんと支えるよ。君のことを。
「・・・俊。私悪いことしたかな?」
ある日君は、泣いていた。
教室で一人誰のことを寄せ付けずに泣いていた。
僕は知っていた君に何が起きたのかも、君がどれだけ傷ついているのかも。
君は兄貴と別れた。正確には振られた。
君がどれだけ兄貴を好きだったかわからなかった。ただのお遊びだと・・・。
「・・・ごめん。ごめんね。」
僕は君を傷つけた。
兄貴が君と付き合ってから一か月で浮気してたこと。
「ごめんね。」
兄貴が君のことをただの道具としか見てなかったこと。
「ごめんね。」
何かもずっと隠してた。
「ごめんね。」
友達失格だ。
「ごめんね。」
あれから一年。僕らは二年になった。
「おはよ、俊。」
廊下ですれ違うたび君は挨拶をしてくる。
僕は下を向いてうなずく。
そのたび君は悲しそうに笑う。
「それじゃね。」
一緒に帰らなくなった。
「俊。」
二人で笑わなくなった。
「ごめんね。」
僕はもう・・・・・・・・・。