後ろからこんにちは
「もしもし、わたし『メリーさん』。今近くの公園にいるの。」
「もしもし、わたし『メリーさん』。今あなたの家の前にいるの。」
「もしもし、わたし『メリーさん』。今あなたの後ろにいるの。」
また一つ命が散った
わたしが散らした
わたしは『メリーさん』だから
目の前に倒れているのは女
この人も人形を捨てたのだろう
わたしが手をかけたのだから
プルルルルル
プルルルルル
電話が鳴った
また仕事か。上も人使いが荒いな
「はい、もしもし。」
『もしもし、わたしメリーさん。今近くの公園にいるの。」
プツッ、ツー ツー ツー
え?
なに?
同業者の掛け間違え?
わたしは『メリーさん』。『人形を捨てた』こともない
何がどうなってるの?
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
また電話が鳴った
わたしは恐る恐る電話に出た
「も、もしもし?」
『もしもし、わたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの。』
はやい!もうすぐそこまで来てる
このままじゃ殺されちゃう!
どうしよう・・・
そうだ、メリーさんなら最後は後ろに現れる
壁を背にしていればどうにか・・・ッ
プルルルルル
プルルルルル
電話がなった
準備はできてる
喉を鳴らしてから電話を取る
「もしもし?」
直後
わたしの左胸から包丁が生えた
床に転がった電話は、
『わたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの。』
と笑っていた。
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わたしは『メリーさん』
壁に刺さった包丁を見て小さく笑う
『メリーさん』は人間を憎む人形よ
恨みのない人間には用がない
今日もメリーさんは電話を掛ける
憎く愛しい人間のもとへ
『もしもし、わたしメリーさん。』