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03.育てる

サブタイトルが手抜きですが…。

「なんだ、気持ち悪いその笑い方をするな」


「どうして?チャーリーは、僕とは長い付き合いでしょう」


「その笑顔を見て、ろくなことが起きたためしが無い」


にたにたと笑うエドマンドに、はぁと溜め息を零してそう言うと赤子を抱えたまま彼を睨んだ。


「何を企んでいる?」


「企んでいる?その質問は正しくないよ、チャーリー。何を考えているのか、それが正しい質問の仕方だよ」


「同じだ」


違うね。そう短く答えて、エドマンドは赤子に視線を向けた。


「この子は君が育てなよ」


一瞬、何を言われたのか分からないといった風にきょとんとするチャールズに、エドマンドは小さな子供に言い聞かせるように丁寧に言い直した。


「この赤ん坊をチャールズ、君が育てるんだ」


「は?」


「は?じゃないよ。そんな間抜けな返事はよしなさい。馬鹿じゃないのに、馬鹿に見えるでしょう」


がしがしと頭を拭きながらそう窘めたエドマンドを途方に暮れたように見つめるチャールズは哀愁が漂い、なんとも気の毒としか言えない状態だ。


「さっきは、孤児院に入れるって…」


「さっきはさっき、今は今だよ。その子は君に懐いているようだし、君も家族が増えて良いじゃないか」


「一人暮らしの男に子育てなんて出来るはずないだろう!」


常識的に考えろと反撃するチャールズを面白そうに手拭いの下から見つめる彼が、あぁそうだと声を上げた。


「孤児院の子は、大きくなってもろくな仕事が見つからなくって、身売りや厳しい仕事の下で使い走りさせられるって聞いたなぁ。こんな可愛い赤ん坊がそんな将来を歩むと考えたら!」


大袈裟に身振りをつけて嘆くエドマンドを見て無言になったチャールズを窺い、後一押しだと彼は内心ほくそ笑んだ。


「二度も捨てられるなんてなんて可哀想なんだっ!」


ぴくりと反応したチャールズを見て、しめしめとエドマンドは彼に近づいて行って留めを刺した。


「それに拾ったものは、ちゃんと自分で責任を持たないとね?チャーリー」


赤子を可愛いと言って微笑む友人を何かいいたげに見つめていたチャールズが、重い口を開いて言った。


「ちょっと待て。確かに拾って来たのは確かだが、本当に俺が育てられると思っているのか?」


正気か?と尋ねるチャールズに、彼は勿論と答えた。


「どこの女性も、初めから一人前の母親なんかじゃないだろう?みんな、最初は手探りで徐々に母性や母親の素質を見いだすのさ」


「俺は女じゃない。母親にはなれない」


「それはわかってるよ。だけど、父親にはなれる。そうだろう?」


「………」


ムッツリと黙ったままの彼の雰囲気は、相当悪いであろうと長い付き合いである友人は内心苦笑した。


「この子を育てるのが、君の役目だ。君が拾って来たんだからね」


「育てろと言い出したのはお前だ」


「うん、僕さ。だから、少しは力になるよ?」


低く唸るチャールズは、何やら反論しようと言葉を探しているようだが、これと言った言葉が見つからないようだった。


「決まりだね。僕は取りあえずこの子に必要な物を買ってくるから、君は面倒を見ながら家の中を綺麗に片付けておいて。か弱い赤ん坊がいるのに、散らかってたら危ないでしょう?それに、魔法使いなら簡単なことだろうから。じゃ、よろしくね。お父さん?」


そう言って部屋を出て行ったエドマンドは、背後を振り向かずに階下に降りていった。


長い付き合いである二人。だから、あぁ見えて実は慈悲深い彼が、無責任に赤子をほっぽりだすような真似はしないと古くからの唯一の友人は知っている。


「…何故だ」


部屋に残されたその彼。どうしてこうなったと途方に暮れ、ポツリと呟いた。

その後も納得出来ないと小言を漏らしながらも、友人に言われた通り魔法で家の中を手早く片付けていった。


「…お父さん?」


ちょっと待てと洗濯物を片手に立ち止まった彼は、友人が言った言葉を思い出して首を傾げた。


「誰のことだ?…まさか、俺のことか?」


腕の中で眠る赤子を見やって溜め息を零し、無言で片付けを再開させた。


策士である友人に上手く丸め込まれたとちょっと抜けた彼が気付くのは、まだ当分先の話。

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