部屋の明かり
和也は仕事が忙しかった。
同僚の子が一人辞めたから、その分が負担となっている。
「いい加減に、後任の人を何とかしてください」とは上司に
言ったものの、なかなか手当てがつかないようだった。
毎日、深夜帰宅である。
夕食は会社が店屋物を取ってくれるから、それで済ませている。
アパートに帰ったら風呂に入って寝るだけ。バタン・キュウである。
そうした日が何日も続くと、28歳と若い身体も、さすがに疲労が
溜まる。
朝が起き辛くなる。
そうしたある日の朝、付き合っている麻衣から電話があった。
「最近、忙しいの?デートにも誘ってくれないけれど・・・・。
それとも、別の彼女でもできた?」
和也は、会社の状況を説明して、今はデートは出来ないと言った。
「うん、分った。意地悪いってゴメン。でも、食事だけは三食ちゃんと
取ってね。」
麻衣はそれだけを言って、電話を切った。
和也は、ほっとした拍子に、もう起きなければならない時間なのに、
そのまま眠りに落ちてしまった。
ふと、気がついたときには、もう9時を過ぎていた。
「しまった!・・・・遅刻だ。」
すぐに飛び起きて、取り敢えずは上司に電話を入れる。
「すみません。寝過ごしてしまいました。」
連日の状況を知っていた上司は、
「分った。今からでもいいから出社してくれ。君がいないとダメなんだ。」
と言ってくれた。
和也は大急ぎで会社へと向った。
その夜も帰宅は深夜になった。
ふと自分の部屋の窓を見ると、明かりがついていた。
この部屋に勝手に入れるのは麻衣だけである。鍵を渡してあった。
和也は、喜び勇んで、部屋の鍵を開けた。
だが、部屋には誰もいなかった。
そう言えば、最近は、朝起きるときのことを考えて、電灯をつけたまま
寝るようにしていたのだ。
今朝、寝過ごして、慌てて出たものだから、電灯を消すのを忘れた
だけだった。
和也は、急に麻衣に会いたくなった。
(完)




