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淋しい世界に星が降る。  作者: シュレディンガーの羊
本編。
9/17

08。  教室。


弁当の蓋を閉じながら、俺はため息を零した。

弁当の中身は、まだ残っている。


「どした?なんか元気ないじゃん」


紙パックの苺オレを、飲むのを中断して櫻井が軽い調子で尋ねてくる。

昼休み。

この頃は、櫻井がよく寄ってくる様になった。


「元気もなくなる。冬って嫌いなんだ」

「えー、俺は好きだけどなぁ」

「一人もんには、淋しい季節だよな」


ぽつりと零れた台詞に、振り返る。

そこには、紙パックのミルクティーを片手に朝比奈が立っていた。


「どうせ俺は独身ですよーだ。経験豊富な朝比奈くんはいいですよねー」


櫻井が朝比奈に舌を出す。


「別に彼女いねぇし」

「えー、その顔で」

「それは、褒めてんのか」


呆れ顔の朝比奈に、俺は感嘆の息を零す。


「朝比奈と櫻井、いつの間にか仲良くなったな」


フレンドリーな櫻井も、流石に不良の朝比奈とは仲良くなかったはずだ。

朝比奈も以前なら、誰かと群れるなんてなかった。

驚く俺に、今度は朝比奈が盛大にため息を吐く。

櫻井がキョトンとして、俺を指す。


「外村のおかげしょ」

「は?」

「だって、外村と朝比奈が話してるの見て、こいつイイ奴そうって」

「お前のお節介も、悪いだけじゃないってこと」


ふいっと顔を背けた朝比奈と、ニコッと笑う櫻井を見比べる。


「俺たちを繋いでくれたの、外村だよ」


ありがと――呟かれた言葉。

さっきまで気にしていた冬の寒さが、もうよくわからない。


「外村、顔赤ーい」

「照れてんのか」


2人が、揃って意地悪な声をハモらせる。


「うるせー」


俺は耳が熱くなるのを感じながら、もう1度、弁当箱を開ける。

今年の冬は、きっと食わなきゃついていけない。


「あ、卵焼き食いたい」


横から伸びてきた手を叩く。


「駄目」


俺は、今笑ってる。

笑えてる。

俺はもう大丈夫かもしれない。




人の笑顔に囲まれている今。

大切にしたい時間、大切にしたい人達、大切にしたい自分の気持ち。

それに気づけた今が、一番大切。

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