いじめた人間は生きてるだけで最低??
俺は忍成和也。
小学校の教師をしている。
今は2年生の担任だ。
今日は一組の塚本夏帆先生と一緒にある施設に見学に行く。
塚本とは小学生の時から一緒で切磋琢磨してきた間柄だ。
今日行く施設…
それは地球温暖化が結果的に生み出した巨大謎動物たちを退治するHAEFだ。
「本物いるかな?」
「本物は流石にいないよ。
模型ならあるかも」
さすが小学2年生。
バスの中からテンションが高い。
施設につくと児童のテンションは最高潮に!
なんとか所長の話を聞くよう押さえつけるので精一杯だ。
施設の中は今まで退治してきた巨大動物の剥製や模型があり、子どもたちははしゃぎまくっていた。
そういえば昔、博物館に行ったときに熊の剥製を有華が真剣に見てたっけ。
それなのに俺、からかって…
いかんいかん、今は仕事に集中!
このはしゃぎまくってる児童たちを見張ってなくては…
その後、施設を一通り見学し、メインイベントの会場にやってきた。
訓練用のプールだ。
プールと言っても一つだけじゃない。
何個もある。
しかも、寒い季節は温水にも切り替えられるとあって、今日みたいな寒い日に水着を着れると児童たちは大喜びだ。
浅いプールでみんなで遊ぶ。
すると、一人の女性がウェットスーツ姿で入ってきた。
有華だ!
なぜ有華が…と塚本とアイコンタクトを交わしてる間に、所長が彼女が隊長だと説明をし始めた。
途端だった。
一番奥のプールに有華は走って行き、飛び込んだ。
数秒で上がってきた彼女の腕には一人の男子児童が抱かれていた。
「所長!
AEDと救急車!」
すぐに心肺蘇生を始める有華。
慌てる所長。
その後、児童はAEDで1回電気ショックを行ったら息を吹き替えした。
俺と塚本は他の児童の引率があるため、有華が俺達から児童の情報を聞き、救急車に同乗した。
「すいませんでした!」
俺は所長に頭を下げた。
俺のミスだ。
児童が一人いなくなっていることに気づかなかった。
所長は死ななかっただけよしとしましょう、と優しく声をかけてくれた。
男子児童が落ちたプールはなんと水深が50メートルもあった。
「あの、隊長と俺、同級生だと思うんですけど、彼女、彼女全く俺に反応しなくて…」
俺は所長に聞いた。
「あー彼女、記憶障害を持っていて、もしかしたらあなたのことも根抜け落ちた中の出来事なのかもしれません」
正直、ショックだった。
好きだったから。
他の児童を学校に連れて帰ったあと、俺は病院へ行った。
男子児童の側で優しく見守る有華の姿があった。
「問題ないそうですよ」
「良かった、ありがとうございました」
「では、私は帰ります」
有華は本当に俺のことを覚えていないようだ。
と思ったら、耳元で…
「いじめっ子が教師だなんて図々しい」
と呟いた。
「えっ?」
そう振り返った時には有華の姿は無かった。
有華は俺のことを覚えている。
でも、俺がいじめっ子?
確かにからかったことはあるけど…
俺の頭の中は混乱した。
でも、それ以上に待っていた問題は大きかった。
保護者が俺を訴えたのだ。
他の教師たちからも責められた。
責められて当然。
でも、辛かった。
病んだ。
それを支えてくれたのは塚本だった。
「俺、仕事辞めるわ」
これ以上は無理だった。
「辞めてどうするの?」
塚本がお酒を飲みながら俺に聞く。
「HAEFの訓練所に入る」
「…有華がいるから?」
塚本は落ち着いていた。
「ああ」
「やっぱりまだ好きなんだ?」
「会ったら昔の思いが…
でも、あいつ俺のこといじめっ子って…」
「覚えてないの?」
塚本は驚いていた。
その言葉に俺も驚いた。
「水かけたり、ツバかけたり、悪口言ったりしてたじゃん。
立派ないじめたよ」
忘れてた…
なんで、昔の俺はそんなことしたんだろう…
そんなことを考えながら俺は訓練所で訓練を2年頑張った。
そして見事HAEFに合格した。
入ってからの訓練も地獄だったけど、実践の方が地獄だった。
2年前と違って、毒を持ってる巨大動物も現れたのだ。
でも、いつだって有華の判断は冷静だった。
ある時、俺は有華に呼び出された。
「なんでHAEFに来たの?」
有華の側で働きたくてとは言えなかった。
「私の側から消えないと殺すよ」
「えっ?」
衝撃的な言葉に俺は言葉失った。
「いじめた人間は生きてるだけで最低なの。
わかったら、ここ辞めて」
「…好きだったんだ」
「はあ?
好きだからいじめたの?
バカみたい。
そのせいで長年苦しんでる人間がこの国にどれだけいると思ってるの?」
俺はまた仕事を失った。




