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08 三鈴

 「初めてのお祓い」、もとい「初めての魔物討伐」が始まろうとしていた。


 と、その前に。


「で、どうすると異世界とつながるんだ?」


 Webカメラを二台かかえて意気揚々とアキバから帰ってきた乙羽だった。


「知らん」

「おいっ」


「いや、ホントに。ただ普通に接続しただけなんだよ」


 本当のことだからな。ここでカッコつけてもしょうがない。


「巫女が舞わないとつながらないんじゃないのか?」


 乙羽の疑問ももっともなんだが。


「そうよね!」


 荻野も困った顔で責めるように俺を見る。


「いや、最初の時も巫女舞より前につながってたし何とも言えないんだよ」


 どうも、確実ではないように思う。最初に見たの猫だったし。


「とりあえずPCを貸せ」


 俺の机に買ってきたWebカメラを並べながら乙羽が言った。


「あ~、他のPCは古いのしかないな。あとは、ノートとタブレットかな」

「私タブレットがいい!」

「しょうがない、ノートで我慢する」


 いやいや、そこそこのノートPCなんだけど?


 ということで、俺たち三人は広めではあるが普通の机に揃って座ってWeb会議アプリをセッティングした。

 これで俺たちだけで会議してたら間抜けな絵になるなと思ったのは内緒。


「とりあえず、接続を確認しよう」


 俺は閉じていたウィンドウを開きなおした。

 ウィンドウには問題はなく、ちゃんと異世界が映っていた。というか、異世界も昼休み中だったようでテーブルの上にはお茶が並んでいた。巫女たちが並んで談笑していたが、美琴は見えなかった。たぶん、鏡のネックレスをつけているのが美琴なんだと思う。


 こちらと接続したのが分かったようで異世界でも動きがあった。


『おかえりなさい』


 ネックレスをテーブルに置いたらしく、今度は他の巫女二人と共に美琴も画面に現れた。


「実は、魔物討伐の前にちょっと試してみたいことがある」


『はい、何でしょう?』


 美琴は、ちょっと覗き込むようにした。


「こっちには、あと二人の協力者がいるんだけど、二人も『鏡合わせ』できないかと思って」


『えっ? 同時にですか?』


 あ、これダメっぽいな。


「そう。だめかな?」


 美琴は、周りの巫女たちとちょっと確認している。


『ダメという話はないようです。ただ、そういった例はなかったようです』


「そうか。そうだろうな。じゃ、こっちでいろいろ試してみるけどいいかな?」

『はい。わかりました』


 了解ももらったっことだし、俺たちはさっそくチャレンジすることにした。


「まずは私ね! ええと、Webカメラはつないだからアプリを起動するだけね!」


 まぁ、そう簡単にはいかないだろう。

 そう思っていたが、いきなり荻野のタブレットに反応があった。と、同時に異世界側も反応した。


『あ、紫雲先輩の三鈴が光ってる!』

『うそぉ。ホントだ!』


 どうも、荻野はうまく異世界とつながったようだ。しかも別の巫女に。


『あ、わ、わたくし、向田紫雲(むこうだしうん)と申します』


 向田紫雲という名の巫女が三鈴という鏡を手鏡のように持って挨拶した。そうか、普通はこういう風に使うのか。


「あ、はい。私は萩野葉子です。よろしくお願いします」

『こちらこそ、よろしくお願いいたします』


「ほ~っ、意外とあっさりつながったな」


 これ、うまく行き過ぎじゃないか?


「ほんとよね」


 どういう原理だ? とりあえず部屋の無線LANにはつながってるから、順番にアドレスは決まる筈だけど?


「よし、じゃ俺もやってみる」


 次は乙羽だ。


『うわっ、朝霧先輩も光った!』

『私は光ってないわよ。光ったの三鈴よ』

『そうですね』


 意外と、細かい性格してる?


『私は、今野朝霧(こんのあさぎり)ですっ! よろしくお願いします』

「俺は乙羽浪尾だ。よろしくな!」


 なんだか異世界側がざわついている。いや、確かに驚きなんだけど、ちょっとこっちとは温度が違う。


『ふふっ、やったわ!』

『おめでとう! 朝霧!』

『うん。紫雲もおめでとう』


「おめでとう?」


 何でおめでとうなんだろ?


『はい、勿論です! 巫女は「鏡合わせ」のためにいるんです!」


 そうか! これは自分たちの存在意義に関わることなんだ。


「ああ、なるほど」

「そうなのね」


 そりゃ、嬉しいだろう。


『昔はもっと頻繁につながっていたと聞いてます』

『そうなんです。ここ百年が異常だったんです』


 紫雲と朝霧が補足した。

 百年が異常だった? それって、異世界のこと? それとも地球のこと?

 ああ、まぁ、東京は大変な時期ではあったな。激動の時代というか、安定した世界ではなかった筈だ。


『それで、私たち必死に練習してたんです!』


 あ、神楽舞か。ごめん、異常なのはこっちだったと思う。言えないけど。


「それで、夢に見た美琴が俺たちとつながった?」


 おれは、最初につながったときのことを聞いてみた。


『そうなの、美琴?』


 思わず紫雲が突っ込む。


『それが、よく覚えてないんです』

『美琴は、寝言で祝詞を唱えることあるからなぁ』


 朝霧が、いろいろ知ってるらしい。


『え~っ?』


 どうも、確実なところは分からないようだ。まぁ、巫女は研究者じゃないしな。もしかすると技術ネギに聞くべきか?


「その辺の解明もしたいよな!」


 俺の顔をみて乙羽も言った。うん、そうだな。


「そうよね」


 荻野も研究者の顔だ。


『でも、先輩二人も、「鏡合わせ」できて良かった!』


 美琴は、ほんとに嬉しそうに言った。

 そういえば、美琴は新人だったっけ。巫女たちの反応を見るに、新人の美琴だけ神事に成功して気にしていたんだろうか? まぁ、百年ぶりの成功だって言ってたし感激するのも無理はないだろう。

 ちなみに、最初の神楽舞で倒れていた巫女は紫雲だった。


 こうして俺たち三人と巫女三人という特異な「鏡合わせ」に成功したのだった。


  *  *  *


『待たせたな』


 食後のテーブルで大騒ぎしている巫女たちだったが、討伐ネギの西園寺から声がかかった。魔物討伐の約束だったからな。


『うん? お前たち三人とも三鈴が光ってるな?』


『そうなんです、私も三鈴が使えました!』

『私もです。これで巫女になった甲斐があります!』

『ホントか、それは凄いな。さっそく宮司に報告しなくてはな!』

『あっ、そうでした! ちょっと行ってきます』


 そう言って、紫雲と朝霧が走り出した。当然、荻野と乙羽の画面はブレブレだ。


「なぁ、美琴?」

『はい、なんでしょう?』


「今更なんだが、『三鈴』ってなに?」


 ちょっと基本的な質問で聞けなかった。


『ああ、そうですね。この異界と会話する神具が「三鈴」です。鏡の首飾りのようですが、三つの魔石が入った鈴がついています』


 俺たちと異世界をつないでる魔鏡が「三鈴」らしい。

 魔石入りの鈴って、「一鈴」が三つ付いてるってことか? 後で詳しく聞く必要がありそうだ。この神具が今回の謎を解く鍵のようだし。


 隣りでは、巫女たちが宮司と話せたようで、荻野と乙羽が挨拶していた。


  *  *  *


『それじゃ、魔物討伐に出発するぞ!』


 巫女たちと俺たちに向けて西園寺が宣言した。

 いよいよ魔物が見れるのか!


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