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04 異世界神社

 俺と会話をした巫女は名前を篠崎美琴という。天ヶ崎神社に入ったばかりだそうだ。それはいい。


 驚くべきは、さっき見た神楽舞は『鏡合わせ』という古来より続く神事らしく「異世界と鏡を通じて交流する」のだという。


 異世界? 異世界と交流する? 神事?


 いやいや、ちょっと待て? 何を言っている?

 鏡を異世界の鏡とつなぐって、それは鏡を通信機として使うってことだよな? こっちは鏡じゃなくて、Webカメラなんだけど?

 あと、何処が異世界だって? こっちが異世界なのか? 彼女は『異界』という言い方をしていたが、たぶん異世界のことだと思う。

 ちょっと混乱した。

 

 いや、確かに彼女が身に着けている装束は風変りだし、巫女が鏡のネックレスを下げているところなんて見たことがない。だからと言って、そのネックレスを異世界とつなぐ神具だとか言われても困る。そんなもの聞いたことがない。


 確かに、こっちのWebカメラと向こうの鏡はつながってるようには見える。まるでチャットだな。そして、それは確かに不可解ではあるが、だからと言って彼女たちのいる場所が「異世界」ってことにはならないだろう?


 異世界だよ、異世界! 俺、死んでないし転生もしてない。もちろん転移もしていない。なんで異世界が登場するんだ? 

 しかも、その異世界とつながるって、どんな理屈だ? いつからこのWeb会議システムは異世界対応になった? 新しいWebカメラ付けたら、異世界も付いて来ましたってか? お得だな!

 って、そんなわけないだろ!


 しかも、昔から鏡でチャットしてたってどゆこと?


 いや、百歩譲ってチャットはいいよ。いや、良くないけど通信手段はいくらでもある。

 信じられないのは、本当に「異世界」なのかってことだ。

 だって、日本語を話してるしな。日本だよな? ご近所さんだよな? なんで異世界ってことになるんだ?


『この言葉は、神社言葉です』


 自称、異世界の巫女さんは怪しいことを言い始めた。「神社言葉」?


『「鏡合わせ」に使われる特別な言葉です。神社の神職は皆、この言葉を勉強しています。ですから、いつでも異世界と話せます』


 そうですか。信じられません。


 そんなご都合主義的なことをいう彼女だが、実際に仲間と普通の言葉で話してもらって良く分かった。単語が違うのだ。

 巫女仲間との普通の会話は理解できなかった。日本語っぽいだけで意味が通じないのだ。まぁ、方言と言えば方言だ。即席でこんな器用な会話はできないだろうと思える程には流ちょうに話していた。そういえば、あの群衆が話してた言葉も同じだったと思う。


 こうして、俺は異世界と会話できるようになったのであった。

 って、そんなわけあるか!


「ごめん、なぜか俺とつながっちゃった訳だけど何かの間違いだと思う。本来の相手と話してくれるかな?」


 Webカメラじゃなくて、ちゃんと鏡を持ってる人と話をしてほしい。たぶん、本来は手鏡を持った女だよな。俺じゃダメだろう。

 それに、新手の詐欺かも知れないし。


『あ、ちょっと待ってください!』


 いや、待てません。詐欺師に待てと言われて、そのまま待つわけないでしょう。ドラマで逃げる相手に「まて~っ」と叫んでる主人公に、そんな暇があったら追いかけたらどうだという突っ込みをする俺を侮ってはいけない。


『あなた以外にはつながらないんです! 次が何時になるかも分からないんです!』


 あ~っ。詐欺師は良く言うよね。「あなただけです!」「当選しました!」とか。


「なわけあるかい!」


 まぁ、この時点で待ってあげてるんだけど。だって、美少女を無下にはできないのだよ。男の性か?


『話をするだけです。どうか、しばらくお付き合いください』


 ううん。これって、詐欺の手口っぽいけどな。ネットで接続してるだけで金銭の授受とか直接会ったりしなければ大丈夫か? そもそも、アカウントとか使ってないし、こっちを特定できてないよな?


 俺も、この怪しい回線を調べておかないと後で不味いかも知れないと思う。拒否できるようにはしとかないとな! 回線を特定した後で、ヤバそうなら切ればいい。


『お願いです! あと一回だけでも私と付き合って!』


 かわいい巫女さんに「付き合って」とか言われたくらいじゃ騙されないぞ! あくまでも、回線を特定するまでの処置だ。


「分かった。あと一回なら」

『良かった! じゃぁ……あさって。あさっての今頃、またお待ちしてます!』

「あさって?」


 なんで、あさって? 今夜じゃなくて? 怪しいお誘いではないらしい。


「ああ、わかった」


 さすがに、早く会話を打ち切りたい気持ちも出てきて、俺はうっかり引き受けてしまった。まぁ、もう相手をしないという選択肢はあるからいいか!


  *  *  *


 接続を切った後で、よく考えるとおかしな状況ではあった。いろいろ再確認したほうがいいかもしれない。

 まず最初に調べるとしたら、やっぱり買ったばかりのWebカメラだろうな?


 さすがに、スパイカメラとか、そんな大げさなことではないはずだ。きっと、何か勘違いしてるだけなのだ。徹夜続きでちょっと俺もおかしくなっているとかだ。だから、理解できないだけなのだ。


 そうだ! 原因がWebカメラってことなら、返品すればすべて解決じゃないか?

 怪しいチップが入ってたりするのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。盗撮用のチップが内蔵されてたとしても返品してしまえば全てOK。


 な~んだ! 危うくスパイ活動に巻き込まれるところだったぜ! 俺はいたいけな童女じゃないから騙されないぞ!


 でもこれ、どうやって返品しよう?

 「怪しい猫が映ります」とか言っても返品できないよな? むしろ特典では? とか言われてしまう。「知らない天井が映ります」は、もっとだめだ。

 って、そういう問題じゃないか! 逃げちゃだめだ!


 とりあえず、出来ることをしよう。

 あれは近くの神社でバイトしてる巫女の仕業という可能性がある。そんな遊びを考え出したに違いない! ライブ配信に飽きたとか。


 画像は記録してある。うん、神社を特定することは可能な筈だ。


  *  *  *


 とりあえず、記録映像をもとに神社を画像検索してみた。

 最近は画像で検索できるからな! 一部だが拝殿が映っていたし、これで検索すればヒットするだろう。


 結果、全くヒットしなかった。

 どこにもそれらしい神社が見つからない。っていうか、かすりもしないってどゆこと?

 まぁ、見たことない変わった様式だなとは思ってたんだ。神社の拝殿って、それぞれ個性があるようで少しでも映っていればヒットするはずだ。だが、全くヒットしなかった。

 っておかしいだろ!


 いつの間にか、一日が終わっていた。

 さすがに疲れた。もういいよ、あれは異世界の神社ってことで。

 まぁ、本当に異世界なら、もう二度とつながらないだろう。

 うん、そうだ。そうに違いない!

 めでたしめでたしだ。


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