25 我らの武器
西園寺の依頼で始まった武器の製作だが、一週間後には既に形になっていた。
普通ならありえないスピードだが設計図さえあれば三鈴AIが簡単に作ってしまうのだ。いや、もちろん材料の鉄やチタンといった素材そのものは異世界で調達してもらっている。
3Dの設計図さえあれば、三鈴AIはみるみる内に部品を作ってしまう。まるで3Dプリンターだが、同時に改良の提案までしてくるところが凄い。しかも、必要なら工具まで作ってしまう。まさにそれは異世界の魔法と言うべきだが、何故かこっちの技術で動いているらしい。
謎だ。
「そ、それにしても、早すぎじゃない? 安全性に問題はないの?」
荻野が心配するのも無理はない。
「だから、これからテストだよ。次元フィールドを持つ巫女なら安心だからな!」
確かに次元フィールで護られてる巫女がケガを負うようなことはないだろう。
「まぁ、俺の設計にミスはないよ」
乙羽は自信満々でふんぞり返っている。
出来上がったものは地球で言うところの機関銃に近い形状のコイルガンだった。弾倉の取り付けなども地球の形に近いが、長い銃身のチタン骨に銀線のコイルを巻いている構造なので冷却用フィンがあり、これがやや無骨ではある。
「磁気駆動だから弾丸は鉄だが、芯にチタンを埋め込んでいる」
乙羽が自慢そうに解説した。
「何がいいの?」
「硬いから破壊力が向上するんだ」
「徹甲弾みたいなものか」
「そう。チタンの骨を持つ魔物が相手だからな! こっちもチタンだ!」
意外と期待できるかもしれない。
* * *
『こ、これが我らの武器か!』
依頼した武器が完成したということで、西園寺隊の面々がやってきた。
『ちょっと重いが、しっかりした作りで頼もしいな!』
そう、磁器回路の設計に慣れていないこともあり機関銃よりは重い。これを軽くすると威力もなくなってしまうので痛しかゆしだ。エネルギー源が軽い魔石なのが救いだ。
討伐隊の他の隊員たちも興味深そうに眺めている。
『この箱の中に弾丸を入れておく。鉄のつぶてだな。そして、この引き金を引くと弾丸が順に取り出されて、この穴から高速で飛び出していく』
製作担当の技術ネギ、風雲寺が誇らしそうに説明する。
『鉄のつぶてが飛び出すのか! 弓を引く必要はないのか?』
『それはいらない。ここに入っている魔石の力で飛ばすからだ。この引き金を軽く引くと、力も加えず飛び出す仕掛けだ』
『『『『おおおっ』』』』
『しかも、引き金を引いたままにすると、次々と飛び出していく』
『『『『な、なんと!』』』』
『そ、それでは、一人で弓兵隊のようなものではないか!』
西園寺が信じられないという顔で声高に言った。
『そう、その通り。一人で十人分の矢を放てる』
『そ、それは凄いぞっ!』
西園寺は感極まった顔で三鈴の中の俺を見た。
『龍一殿、よくぞこのようなものを作ってくれた! 感謝する!』
西園寺は眼に涙までためている。
「いや、俺は何もしてない。礼なら技術ネギの風雲寺さんと乙羽に」
『そうか。乙羽殿、風雲寺殿、本当にありがとう!』
『いえいえ。礼には及びません』
「まだ、これからです。とにかく、試してみましょう」
確かに実際にその威力を確認しないとな!
『そうそう、強力な武器だけに注意も必要です。弓でもそうですが反動があります。ただ、この武器の場合は、その反動が半端ないんです』
『そうか。だが、それは逆に頼もしいな』
西園寺は物おじせずに言った。
討伐隊の面々は感激しているが、まだ試作で一台しかないのが残念なところだ。
『まずは台座に据えて使う予定です』
確かに、台座に据えてなら反動があっても問題ない。
ともかく、威力を早く見ていたいということで、街の外で試射してみることになった。
* * *
技術ネギの風雲寺は、試射のために車付きの台座を用意していた。
大砲の台車とは違って車は小さいが移動は可能だ。実験用に用意したもので常用するつもりはないらしい。
『では、あの的を撃ってみます』
技術ネギの風雲寺がテストの開始を宣言した。
空き地の先には森の木に固定した的が見えた。
討伐隊の面々は固唾をのんで見守っている。巫女隊も興味津々だ。
『まずは、単発で』
風雲寺は機関銃を的に向かって構え、引き金を引いた。
ガシューン
ヴァーーーーーン
ザザザザーーーー
用意した的は砕け散り、支えていた太い大木も折れて倒れてしまった。
風雲寺が乗った台車も多少反動を受けた筈だが、こっちはほとんど変化がない。
『『『『『『『おおおおお~っ』』』』』』』』
「「「えっ?」」」
その威力に俺たちも驚いた。
『あれ? 強力すぎたかな。ちょっと的を変えましょう』
撃った風雲寺も意外だったらしい。的を支えていた大木まで役に立たないと判明したので、大木を使うのは止めて別の的に変えることにした。
一応、順調な滑り出しではある。
『では、あの大岩を的にしてみます』
風雲寺ネギは、さらに百メートルほど先の高さ1メートルの岩を指さした。
『では、連射で撃ってみます』
そういって風雲寺は連射モードにした。
ガガガガガガシューン
ババババババッーーン
的になった岩は次々に弾け飛んで、最後に残った岩も砕け散ってしまった。
『『『『うわ~~~~~~っ』』』』
『『『なにあれ~~~~っ?』』』
『す、凄いっ』
西園寺も大口開けて驚愕していたが、気を取り直して唸るように言った。
というか、撃った風雲寺が呆気に取られている。
「なんか思ってたより強力なんだけど?」
そして、俺たちも呆気にとられていた。
「ほんとよね。あれ、機関銃の威力じゃないでしょ」
「いや、まぁ、正直俺も驚いてる」
作った乙羽まで驚くか!
普通の機関銃の弾と違って薬莢がなく全て弾頭なので見た目以上に強力なのは当然だが、それでも想定を超えて来た。
「ま、まぁ、相手が魔物だからな! あのくらいの威力が必要だろう!」
西園寺、ちょっと目がきょどっている。
「この威力。機関砲って言ってもいいんじゃないか?」
「ほんとよね。魔動機関砲ね」
ってことで、「魔動機関砲」が正式名称となった。
『こ、これ、さっそく門に配備してくれ! いえ、してください! お願いします』
西園寺は興奮して風雲寺ネギに縋るように言った。
『わ、わかりました。もう少しテストしてみてから量産するとしましょう』
ちょっと焦る風雲寺。改めて自分の作った魔動機関砲をまじまじと見る。
『ぜ、全員分を貰えるのだろうか?』
西園寺は確約をもらいたいようだ。
『ご安心を。全員分作りますよ』
『おお、ありがたい! これで討伐隊は無敵だっ!』
『『『お~っ』』』
魔動機関砲の試作機は、その後のテストでも問題は起こらずに直ぐに量産が開始されたのだった。




