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24 西園寺の願い

 三鈴ウォータージェットに加えて三鈴ファイヤーアローという武器まで身に着けた巫女たちを見て、討伐隊長の西園寺が俺たちに相談があると言う。


 神社の社務所まで戻ってきた巫女たちは魔物討伐の体験を興奮した面持ちで話し合っていた。そんな中、西園寺が美琴を呼んだ。


『巫女たちの三鈴の力は留まるところを知らないな』


『えっ、あ、はい。ありがとうございます』


『頼もしい限りだ』


 どうも西園寺は俺たちに話しているようだ。さっき、相談って言ってたもんな。


「まだ魔石の力を使い始めたところだけどな」


 今回、乙羽としては魔石から電気を引き出しただけだからな。まだまだ魔石の力はこんなもんじゃないだろうと俺も思う。


『そうか。魔石の力か。ならば、その力、我らにも使えないだろうか?』


「我ら?」


『そうだ。我ら討伐隊の力にできないだろうか?』


 西園寺は必死な顔で言った。


 なるほど。確かに圧倒的な戦力の三鈴と巫女隊を見たら、討伐隊としても何か欲しくなるだろ。

 巫女専用の「三鈴」の力では討伐隊には使えない。だが、一鈴もしくは魔石の力なら討伐隊も使えるかもしれないという訳だ。


「どうだろうな?」

「使えるものもあるんじゃないか?」


 乙羽は簡単に言った。おいおい、安請け合いしていいのか?


「なにかありそうよね」


 荻野まで。いや、そう言ったら期待しちゃうぞ。


『本当か! それは助かる!』


 西園寺は、縋るように言った。


『私からも、できればお願い致します』


 横で聞いていた菅野宮司からも声がかかった。


『過分なお願いとは分かっているのですが、これだけ魔物が増えますと日々の討伐を担当する討伐隊の支援も願ってしまうのです』


 ああそうか。今は俺たちがいて巫女たちは最強だが、これで俺たちとのつながりが途切れたら巫女はタダの人に戻ってしまう。そうなると、この街の戦力はいきなり落ちてしまうことになる。

 日々の魔物討伐を担当している討伐隊こそ増強しておく必要があるわけだ。


 その辺の視点が俺たちには全く欠けていた。単に、異世界の珍しい現象に研究者として舞い上がっていただけとも言える。ちょっと恥ずかしい。

 あ、俺は研究者じゃないけどな。


「わかりました。検討させてもらいます」

『よろしくお願いします』


 深々と頭を下げる宮司に、俺はちょっと済まない気持ちになった。


  *  *  *


 三鈴の接続を閉じた後、俺たちは開発室で相談していた。


「こうなったら、何とかしなくちゃね!」


 荻野も息まいているが、あてはあるのか?


「でも、どうするんだ? 次元フィールドとかAIとか三鈴の機能は使えないぞ」

「そうなのよね」


「とりあえず、使えるのは魔石の電気だけだ」

「電気か」

「電気を武器にするとしたら?」


 俺たちは、地球での武器を想像しようとした。けれど、平和な日本で武器を作ろうなんて考えたこともない。全く考えていないものは簡単には思い浮かばない。


「電気を武器にって、放電とか?」


 ちょっと安易だったか?


「それ、いいかもね!」

「サンダーボルトだ!」


 当然こうなる。ファンタジーネタに。


「普通に感電するだろ。討伐隊に次元フィールドないし」

「そ、そうよね」


 巫女隊の技としては使えそうだけどな?


「あと、電気を使う武器と言ったら?」

「レールガン?」


 荻野が思いつくまま言った。言うと思った。


「俺たちなしにレールガンを作るのか?」

「確かに、ちょっとハードル高いかな?」


「それなら、コイルガンはどうだ?」


 乙羽がちょっと自信ありげに言った。コイルガンといえば、必要なのは強力な電磁石と磁気に吸いつく鉄の弾丸だけだ。


「おお。魔石の高電圧と銀線が使えるか?」

「そうだな。金属が豊富な世界だからな!」

「そうね! むしろあの異世界に向いてるかもね!」


 魔石は高圧を発生することが出来るし、これと最も抵抗の低い銀線を使えば強力な電磁石が出来るだろう。


「将来は、常温超電導コイルも可能かもよ?」


 遠い目で乙羽が言う。


「それって、寧ろ地球を超えてるんじゃない!」

「ほんとだな!」


 一気に、西園寺が望む武器が現実的になってきた。


「でも、コイルガンの細かい機構を作れるかしら?」

「問題はそこだよな」


 いきなり細かい部品を作るのは難しそうだ。俺たちも作ったことないし。


「う~ん。あ、既製品のエアガンでいいか?」

「何言ってんのよ」

「それはないだろ」

「いや、BB弾じゃないよ? 中に鉄を埋め込む」


「それで?」

「普通にエアガンで発射した後、コイルで超加速すればいい」

「あ~っ、普通は無理だけど魔石の大電流があるわけか!」

「放熱が大変だとは思うけどね」

「分解して、異世界に送れるかな?」

「「う~んっ」」


 異世界の穴は1cmだからな。


-でしたら、お手伝いしましょうか?


「うん? 三鈴AIが手伝ってくれるの?」


-構造さえ教えてもらえれば、異世界側で部品を作ることができます。


 なんだと~っ?


「お~っ、それいいな。てか、それならエアガンじゃなくてもいいだろ!」

「そうだな。とりあえず、なるべく簡単な機構のコイルガンを設計しよう」

「いいわね。技術ネギに話してみましょ!」


 ほぼ方針は決まった。


  *  *  *


「そんなものが、作れるのでしょうか?」


 翌日、乙羽からコイルガンの説明を聞いた技術ネギの風雲寺左近(ふううんじさこん)が自信なさそうに言った。

 技術ネギの彼らが三鈴のメンテナンスや一鈴の製造などを担当しているとのこと。


「まずは設計を一緒にみてもらって、製造やメンテナンスが可能か検討してもらいたいんです」


『分かりました。是非参加させてください。部品も多めにもらえれば、後で作れるようになるかもしれません』


 確かに、「いきなり作れ」は無理でも当面の部品があれば何とかなるかも。

 風雲寺がやる気になってくれたようだ。神社の工房があるそうで技術ネギたち全員で参加するという。


 こうして地球の研究者とAI、異世界の技術ネギによる開発体制が確立した。

 これは今後に期待できそうだ。


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