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22 魔石のエネルギー

 夕方、三鈴の接続を切って荻野たちが帰ろうとしていたら、いきなりマンションのチャイムが鳴った。


「魔物サンプルが獲れたんだって?」

「先生!」


 出てみたら、そこには氷室助教授がいた。

 長い髪を振り乱して白衣のまま来ていた。どうも、椎名研に送ったメールを読んですぐ、車を飛ばして来たようだ。って、早すぎるだろ。どんだけ急いできたんだ?


「あ、はい。これです」


 萩野が持っていたサンプルを渡した。


「おぉ、ありがと~っ! 恩に着る! じゃぁね!」


 氷室助教授は満面の笑みでサンプルを保冷ボックスに突っ込むと、さっさとドアから出て行こうとしたのだが、ふと思いとどまって振り向いた。


「そうそう。魔石だけど、あれ電源になるわよ」


 なに~っ?

 思わぬ言葉に、目が点になってしまった。


「魔石が電源ですか?」


 荻野も乙羽も狐につままれたような顔をして氷室助教授を見る。


「貴重なサンプルだから慎重に調べてたんだけど、神経回路のエネルギー源を調べてて発見したのよ」


 氷室助教授がドヤ顔で言った。

 ははぁ、なるほど。超電導神経回路とかいう奴だな。回路があるなら電源もあるだろう。


「それって、バッテリーのようにですか?」


 魔石という装置はバッテリーを内臓してたということなんだろうか?


「いいえ、違うみたいよ。詳しくは健一に、椎名教授に聞いて。これが使い方」


 そう言って、白衣のポケットからメモを取り出した。

 魔石はバッテリーではなく発電機を積んでいるらしい。


「普通は神経回路が動く時だけに発電するんだけど、このメモの通りにしたら神経回路は動かないで電気だけ取り出せるって」


 つまり、魔石本来の使い方をせずに電気だけ取り出す方法を見つけたようだ。

 それにしても神経回路を動かしたのか?


「神経回路が動くときがあるんですか? まるで魔石が生きているように?」


「そうなのよ! まさに、生きているのよ!」


 そう言って、氷室助教授は俺に掴みかかった。


「せ、せんせい、落ち着いて!」

「あ、ごめんなさい。でも、これは凄い話でしょ? 生体から切り離されているのに完全に独立して動作するのよ、魔石は。ほんとにどうなってるのよ!」


 なんで、そんなものがあるんだろう?


「魔石は何をしているんでしょう?」

「それは、まだ全然分からないわ。でも、きっと見つけて見せる!」


 氷室助教授は気合たっぷりに言い切った。


「あとでレポート頂戴ね! じゃ、よろしく~っ」


 氷室助教授は颯爽と帰っていった。


  *  *  *


「嵐のようだったな」


 俺たちは玄関で氷室助教授を見送ったまま立ち尽くしていた。


「ホントだな」

「魔石を握るとビリッとするわけだ」

「そういうことか」

「そういうわけね」

「面白い!」


 面白いか?


「じゃ、私帰るね」

「おう、お疲れ」


「あっ、俺さ~明日の午前中にアキバ寄ってくるわ。午前中の魔物討伐は二人に任せていいか?」


「いいわよ」

「ん? いいけど何か思いついたのか?」

「まぁ、ちょっとな」


 乙羽は含み笑いをして帰っていった。


  *  *  *


 次の日、早々にアキバで部品を調達してきた乙羽は昼食も取らずに何やら熱心に工作していた。


「で、どうだったの?」


 食後のコーヒーを一口飲んで荻野が聞いた。

 すると乙羽はニヤッと笑って言った。


「あの魔石は凄いぞ。周りの部品が耐えられなくなるほどだ」


 どうも、調達した部品が耐えられなかったようだ。

 まぁ、超電導神経回路に見合う部品なんてないだろう。むしろ、アキバで買ってきた部品がかわいそうなくらいだ。


「凄いって?」


 俺は工作机に散らばった焦げた部品を見て恐る恐る聞いた。


「そうだな。大型発電機並みだ!」


 マジか。しかし魔物と言っても単独の生物がそんなに大量に発電するかな?


「ほんとかよ。そんなに多かったら、そもそも放熱が間に合わないだろう?」

「そうだな。とりあえずピーク性能の話だ」


 乙羽は出されたコーヒーをうまそうに飲んでほっと息を吐いた。


「ってことで、これが魔石ターボの三鈴だ!」


 良く分からんことを言って俺たちにWebカメラを見せてドヤ顔の乙羽。

 いや、あまり変わってないけど?


 とにかく、Webカメラに魔石を組み込んだらしい。ターボが付いたのは三鈴というよりWebカメラのほうだと思うが。


「お昼ご飯食べないで中二病全開か?」

「いや、食べたよ。携帯食だけど」


 中二病は否定しないらしい。

 それはともかく、乙羽の様子を見ると俺のWebカメラは途方もない成長を遂げたようだ。

 まだ見てないけど。


  *  *  *


 異世界はまだ昼食時だということで、俺たちは開発室で食後のコーヒータイムを楽しんでいた。


「それにしても、信じられないわね!」


 荻野はまだ納得できない顔で改造されたWebカメラを見ていた。


「ああ。確かに、あのサイズのものが作るエネルギー量じゃない」


 乙羽も、納得しているわけではなのか?


「もしかすると、消費しないのかもな?」


「なんのこと?」

「消費しない?」


「うん。例えば空間にエネルギーを輻射するとか」

「電波みたいに?」

「なるほど、輻射か。それなら放熱はいらないかもな」


 どんな用途でエネルギーを輻射するのかは不明だが、大電力を内部で消費しないとしたら外部に出しているとしか思えなかった。


「そんなものの電気を使っても大丈夫かな?」

「まぁ、魔石の機能は止めてるし、電気を取り出すだけなら大丈夫だろ」


「そう願う」

「ほんとよね」


 魔石本来の使い方が気にならないわけではないが、便利な利用方法があるなら使ってみたいのもまた事実だ。


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