14 三鈴アクティベーション
新たな三鈴の力が発見され、「無敵」となった巫女たちは魔物討伐隊に「巫女隊」として加わることになった。
つまり、「討伐ネギによる魔物討伐隊」と並ぶ「巫女による魔物討伐隊」が登場したわけだ。まぁ、強力な部隊になるかどうかはまだ未定だが。
「でも、良かったのか?」
『どういうことでしょう?』
俺は気になって聞いてみた。話の流れで決まってしまったが、巫女たちの意向もそれぞれだろう。
「いや、俺たちが下手に三鈴の力を見つけちゃったせいで、巫女が魔物討伐に駆り出されたわけだし」
『ああ、それですか』
『怖いですけど、無敵なんですよね?』
美琴はおずおずと言った。
「そうだな」
『だったら今までよりむしろ安全かもしれません』
『わたしも、そう思います! 今までも討伐隊の支援には行ってたわけですし』
「ほ~っ、さすがマッドボアを倒した紫雲だね」
『そうです! さすが、レッドボアを一刀に付した先輩です!』
『一刀に付した?』
「一刀のもとに伏したかも」
『えっ、いえ、あれは違います!』
『私も、"一刀に伏して"やる!』
『お~っ』
朝霧も、やる気になってきたんだろうか!
『じゃぁ、これから訓練だな! 次の週末には魔物を倒しまくるぞ!』
西園寺が気合を入れた。討伐隊の隊長みずから巫女隊を訓練してくれるらしい。
『『『は、は~いっ』』』
ちょっと、腰が引けてるかも。
* * *
ここは、巫女隊との接続を切った後の開発室。
「なぁ。エフェクトの起動なんだけどさ。あれ、どうにかならないかな?」
乙羽がそんなことを言い始めた。
「エフェクトって次元フィールドの話か?」
「うん、その次元フィールドだ」
「どうにかって?」
「ああ、俺たちがいないとエフェクトの機能を使えないだろ? でも、とっさに次元フィールドを切ったり出来ないと問題あると思う」
「問題か?」
「そう。だって、1マイクロメートルの次元格子に包まれるんだぞ?」
「何か悪い影響も考えられるって?」
「いや、そもそも、『食事』できないんじゃないか?」
「「あっ」」
そういえばそうだ。
次元フィールドは体の動きには追従しているようだが、さすがに食物を飲み込むのは無理だろう。1マイクロメートルの穴でどうやって食うんだ?
「ん~っ、いくら嚙んでも呑み込めないよな?」
「タンパク質は通らないだろうな」
「糖分だけ通りそうで最悪ね!」
荻野は、ありえないという顔だ。
「まぁ、細菌が通らないのはいいと思うけど。窒息はしないよな?」
「とりあえずな。けど、それだけじゃないぞ。風呂もトイレもダメだ」
「そりゃ、やばいな!」
「やば過ぎるわよ!」
それじゃ、俺たちが操作するなんてとんでもない話じゃないか!
「鍵とか用意するか?」
「なくした時どうすんのよ!」
荻野は険しい目で俺を見て来た。いや、そんなに責められても困る。
「合言葉でオンオフ出来るようにできない?」
荻野も必死に考えている。
「合言葉で? コマンドかぁ」
「そう、音声認識とか使えないかな?」
「ああ、なるほど。こっちのアプリは起動したままだから、何か言葉を言ってもらえばいいか! 要するに呪文だな!」
「それだ~っ!」
「それよ!」
うん。
二人とも、楽しそうに俺を見ている。
ん? それって誰が作るんだ?
「それって俺が作るんだよな?」
「もちろんだよ!」
「もちろんよ」
やっぱりか。てか、俺しかいないよな。
「そうとなったら、さっそく呪文を考えないとな!」
「かっこいい呪文がいいわね!」
お前ら、ノリノリだな。作る人の身にもなってくれよ。
「いい加減にしとけよ!」
まぁ、呪文はともかく、音声認識機能だけは付けることにしよう。
いろいろ注文されそうだし、AI機能でも搭載しとけば呪文とか勝手に対応してくれるに違いない。中二病全開の呪文とか作られても付き合ってられないからな! 声紋チェックとか入れとけば、単純な呪文でも問題ないだろ。
* * *
「で、なんであんた、そんなにやつれてんのよ?」
次の土曜日、朝イチでやってきた荻野は俺の顔を見るなり言い放った。
「いや、呪文の音声認識をAIでやらせようと思ったのはいいんだけど、思ったより大変だったんだよ」
「AIで認識? いいわね、それ!」
「おお、いいな! で、動いたのか?」
乙羽も喜んでいる。
「まぁ、なんとかな」
まだ、あまりデバッグしてないけどな。とにかく動けばあとは勝手に学習するだろう。てか、してくれ。
「とりあえず接続は出来た。AI自体は育てるしかない」
「ああ、確かに魔物討伐に適したAIなんてないわよね」
てか、そもそも異世界に適したAIがない。
「そういうこと。まぁ、機能も特にないけどな」
「とりあえず、次元フィールドをコマンドでオンオフ出来ればいいんじゃね?」
「まぁな。ってことで、美琴たちどう?」
『はい? どうって?』
ちゃんと聞いてなかったかも?
「ええっと、呪文を唱えると三鈴が強く光って無敵になるんだけど、そのときの呪文をどうする?」
『どうするって? その呪文って、私たちで決めていいんですか?』
「うん。いいよ」
『ど、どうしよう』
『わ、私も同じ呪文でいいんでしょうか?』
「まぁ、パスワードじゃないから、同じでいいだろ」
「パスワード?」
「ああ、合言葉じゃないから」
あれ? 合言葉のほうがいいのか?
『なるほど。う~ん、開けゴマ?』なんで知ってるんだよ。
『マハリクマハリタ?』お前もな!
「アロホモラ」お前はそっちか荻野。
「エロイムエッサイム」もう誰も知らないよ。
「とりあえず、三鈴の次元フィールドをアクティベーションするだけなんだけど。うまくいけば、あとはAIが引き受けるからどうとでも出来るよ」
『エーアイってなんですか?』
あ、これ説明するの結構めんどうだな。パソコンから説明なんて出来ないし。
「えっとだね。三鈴の中に召使がいて、言うことを聞いてくれると思いねぇ」
「お前は江戸っ子か?」
『め、召使ですか?』
「あるいは、側仕え? あ~、とりあえず動かせば分かると思う。美琴、『三鈴、アクティベーション』って、言ってみて」
俺はデバッグで登録したコマンドを教えた。




