11 世界の境界
さすがに、異世界に金塊がゴロゴロしてて驚いたが、だからと言って俺たちには影響はない。通信してるだけで手に入らないからな!
異世界との接続を切ってから、俺たちは開発室で話していた。
「いや、分からないぞ。関係するかもよ」
乙羽が怪しいことを言い出した。
「エフェクトで巫女たちを包んだ特殊なフィールドな。あれ、なんだと思う?」
乙羽は謎めいた笑いを浮かべている。
「なにってなんだ?」
「知らないわよ」
そこで、乙羽はニッと笑った。
「俺は、あれは世界の境界だと思う」
「世界の境界が巫女たちを包んだって言うのか?」
「そうだ!」
「それって、世界と世界が接している面のことだよな?」
「そうだな! 次元断層と言えるかもしれない」
「次元断層か!」
「それって、Webカメラで覗くときの境界でもあるわよね?」
「たぶん、そうだろうな」
つまり、俺たちがWebカメラで見ている映像は、世界の境界である特殊なフィールドを通して見ているということだ。
「普通はWebカメラの前あたりにある境界が、広がって巫女たちを包んだんじゃないかと思うんだ」
「なんでだよ」
「エフェクトにそんな効果はないわよね?」
「そうなんだが」
「にわかには信じられないな!」
俺たちは乙羽の仮説を検討してみた。
途方もない話だとは思うが、そもそも世界の境界が開いたこと自体が信じられない話だ。その世界の境界は恐らく魔石の力を使って維持している。そして、その魔石の力は鏡にまで達しているだろう。つまりWebカメラまで魔石の力が及んでいる可能性が高い。とすると、Webカメラのシステムの機能まで影響があってもおかしくはないことになる。
ほんとかよ。
「ただ、確かに特殊フィールドが世界の境界だと考えると、いろいろと辻褄は合うかもな」
「そうだけど」
「世界の境界だから刀で切れないわけだ! 世界が違うものを切れないもんな!」
「そうね。次元が断絶してたら、どんな刃物も通るわけないわね」
「そういうこと!」
確かに巫女たちを包んだ特殊フィールドが次元断層だったとしたら刃は通らないだろう。てか、あらゆる武器が通らない。世界が、次元が違うのだ。
その特殊フィールドには摩擦もないから、このフィールドを纏った刀が魔物にするっと入っていったのも分かる。チタン骨を両断できたのも納得だ。
それと、特殊フィールド自体が物質じゃないから血液も付着したりしない。巫女たちの装束が奇麗なままだったのも理解できる。コーティングどころの話ではない。物質を浮かせる膜があるようなものだからだ。
「ただ、光は通るし呼吸は出来たから空気も通るってことだな」
そこで大きく頷く乙羽。
「そうだな。それが、あの特殊フィールドの性質だ」
「って、それ大変な話だぞ! 物質が異世界へ到達するんだぞ」
「そうよ。異世界転移みたいなものよ。椎名教授が卒倒するわよ」
また、大変な発見をしてしまった。いや、まだ仮説か?
「そうだ。これは大変な話だ。だから慎重に調べなくてはならない」
乙羽は鋭い目つきで言った。
「そうだな」
「そうね」
「まずは、世界の境界にどんな穴が開いているかを特定する必要があるだろう」
「光や空気以外に何が通るかってことよね?」
「そうだな」
「光が通るんだから、とりあえず網状あるいは格子状のような構造かしら」
「たぶん、沢山穴が開いているってことでいいだろう」
「そういえば、特殊フィールドで包んだら声がおかしくなったとか言ってたな」
西園寺が気が付いた音の変化だ。
「そうね、音声にフィルターが掛かるような穴が沢山開いているってことかしら」
「そうだな」
だが、これだけの情報では穴のサイズは特定できない。
「あまり大きな穴が開いていたら世界の境界としては危険よね?」
「そうだな。細菌なんかが通過したらまずいことになる」
「となると、早急に穴のサイズを特定する必要があるわね!」
荻野は椅子に座り直した。
「ん? ちょっと待て。特殊フィールドで巫女たちを包んだ時、音はリアルに聞こえたよな?」
「うん? そうだが?」
「そうね」
「ただし、異世界側では変な音になった」
「そうだ」
「そうよ」
「ってことは、特殊フィールドで巫女たちを包んでるときって、巫女たちはこっち側にいることになるんじゃないのか?」
「こっち側?」
「境界のこっち側」
「ええええ~~~~~っ?」
「そうか! それで、感じ方が向こうとこっちで違ったんだ!」
「世界の境界を巫女たちがすり抜けたってこと?」
「たぶんな!」
「これは、いよいよ大変なことになって来たわね!」
「異世界転移が実現しそう!」
約一名、気の早い奴がいるが、そう言うことだ。さすがに、異世界との間に大きなゲートは開いていないが、巫女たちは等価的にこっちの世界へと転移したことになる。
「まずは、検証しないとね!」
「明日は土曜だし、また朝から来るか!」
「とりあえず、今日は教授に報告しとくね!」
「よしわかった!」
ん? 明日?
そうか、そう言えば週末は巫女たちに付き合うことになったな。
同時に俺の休みもなくなったことに今気が付いた。
まぁ、いいか。




