セント2個出す
毎年恒例クリスマス小説です。
今回は少しだけ前提知識が必要なので、一通り読んでから何言ってるか分からなかったら後書きを読んでからもう一度読んでみてください。
今日はクリスマスイブだ。だが男にとっては特に何の意味もない日だった。男は聖人でもなければ、犯罪者でもない。熱心なキリスト教徒でもないし、恋人もいない。そんな男にとって、クリスマスはただカラフルなライトで街がいつもより少しだけ明るくなる日でしかなかった。まあニートで1日のほとんどを家の中で過ごす男にはあまり関係のないことだ。
せっかくの祭日だ、明日もどうせ休みだし、酒でも飲もうと思い立った。冷蔵庫を開けるが何もない。
「はぁ、面倒だが買いに行くか」
防寒着がなかったので、男を置いて出て行った父が60歳を迎えたときに職場の同僚だという日本人に貰ったちゃんちゃんこを借りることにする。少し寒いが厚い脂肪を持つ男にとっては問題ない気温だ。
クリスマスセールと銘打ってはいるが、特に値下げがされているわけではない酒を買いに、近所のスーパーへ向かった。
適当な酒を手にレジへ向かい、金を払う。店員の男からお釣りを受け取るときに目が合い、お互いに苦笑いしながら店を後にする。こんな夜まで働いている同胞たちには敬意を抱くものである。勝手にニートの同胞にされる店員はたまったものではないだろうが。
店を出るとき、ふと募金箱を見つけた。貧しい子どもたちへの支援に使われるそうだ。
そういえば、さっきのお釣り…
男は財布の中を見て、手持ちを確認した。
12ドル27セント
「もう一個くらい、なんか買えるな」
そう思ったものの、さっき店員と目が合ったこともあり、また店の中に戻るのは少し恥ずかしかったので、そのまま店を出ることにした。
「ま、節約できたってことにするか」
男は募金箱に背を向け、家に帰って行った。
募金箱の中身はペニーが2枚増えていた。
今回はサンタクロースの元ネタとなったセント・ニコラスから連想して、タイトルを「セント2個出す」としてみました。
サンタクロースの元ネタをご存知でしょうか。サンタクロースの元ネタはセント・ニコラス(聖・ニコラウス)という人だと言われており、これが訛ってサンタクロースとなったそうです。ニコラスはよく貧しい人を助けていました。あるとき、貧しい一家を不憫に思ったニコラスは、夜のうちに一家の家に金貨を投げ込みます。その金貨が干していた靴下に入り、金貨をゲットした一家の娘は身売りしなくて良くなったとか。とまあ細かいところはいろいろ違っているかもしれませんが、大体こんな感じのエピソードが今の「サンタクロースが夜のうちに靴下にこっそりとプレゼントを入れる」というお話の元ネタだと言われています。
1セント硬貨はペニーという愛称があります。募金箱に2枚のペニーが増えていた、つまり男が募金箱に入れたんですね。筆者の偏見ですが、引きこもりのニートの外見として、「髭もじゃで腹が出ているおっさん」というイメージがあります。そんな人がクリスマスイブの夜に赤いちゃんちゃんこを着て募金する。まあ25セント硬貨を入れず、2セントの方を入れたところは金のないニートらしくもありますが、側から見ればこれはもう紛れもなくサンタクロースですよね。




