プロローグ
「クソったれ…」
俺は追い詰められていた。弟子に裏切られ、親友に裏切られ、最後には…家族に裏切られた。満身創痍だ。魔力は尽き、多くの血を流した。誰にも教えていなかった秘密の部屋で追手から逃れることはできたが、体中についた傷を治す手段はない。そう時間を置くことなく死ぬだろう。
「最悪…じゃねえか。そう、だな。どうせ死ぬ命だ。これ、使っておくか…」
《転生の宝玉》。俺が討伐した『命奪竜』がドロップしたアイテムだ。《鑑定魔法》を使用して情報を覗いてみれば、『もしかしたら転生するかもしれないねぇ^ ^』とかふざけたことが書いてあるアイテムだ。死ぬのが分かりきっているなら使ってもいいだろう。
「まぁ、あわよくば…ゲーム内にでも転生して龍真治のてぇてぇを近くで見たいかも、な…」
そう欲丸出しの言葉を言い残し、俺はその生涯を終えたのだった。
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確かにこの世界…『ダンジョンアポカリプス』の世界に転生したまではいいんだ。それを望んだのは俺だからな?でも、でもさぁ…
「穂波凛はねえだろ…」
穂波凛。『ダンジョンアポカリプス』のストーリー第一章に登場する最初の悪役だ。三代名家の一つとして名高い穂波家の四男で、初手で主人公を強化するきっかけになっただけでなく中盤で出てきた時助かる選択肢があるが、主人公の身代わりとして速攻死ぬキャラである。これだけならまだ救いようはあるが、言動と行動が最悪で、悪役の中でも特に嫌われているキャラである。しかも現在の時系列はストーリーに出た後、つまり力を得た主人公にボコられた後なのである。だが、こんなのに転生してしまった以上、そう言った点は諦めるしかない。それよりもまずはやることがあるだろう。
「俺は家から勘当され、補助金も来てない。学園は退学になった。よし、バイトしながら別の学園に通うか!」
穂波凛、現在所持金42000円。こんな金では、到底新しい学園などには通えない。と、思っていたのだが…
「入学費なし…どうなってるんだマジで」
奇跡的に入れる学園があった。エルクロム総合学園。在籍生徒4人、教師0とかいう何故存続しているかもわからない学園である。スマホで調べてみればあっさりと見つかり、その入学条件には驚いた。まさかの『料理ができること』だ。まず言わせてもらおう。
「この辺の地域はダンジョン攻略をさせるための探索者養成をするのであって料理を学ぶ場じゃねえんだよ…」
料理は前世でやっていたため、普通にできるのだが、こんな学園あるのかよと驚いたものだ。まあ学園に入れたわけだし文句はないのだが。
「えーっと?地図アプリによると…あれか?って、割と校舎大きくないか?」
無料の地図アプリにしたのがまずったな。まさか東西南北が記載されていないとは。今日は生憎の雨だし、おかけでたどり着くのに1時間もかかった。早めに出発しておいてよかったな。
「さて、と。心機一転、頑張りますかね。礼儀正しく過ごそうか」
そうして、俺はエルクロム総合学園の門をくぐった。ちなみに、俺はまだエルクロムの制服は持っていないので、前に所属していた竜刻学園の制服を着用している。私服などはなかったし、これならまあ大丈夫だろうという安心感からこの制服を選んだ。その過程で、気づいたことが一つあった。
「俺、女なんだよな…書類上は男なのがまためんどくさい」
俺…もとい穂波凛は女だったのだ。それもそれなりのものも持っていた。何がとは言わないが推定サイズはC寄りのDだ。サラシを相当キツめにして隠してたし、原作でも性別は明記されてなかったし、顔や声も中性的だった。だが、だが!女とは思わなかった…くっ、原作ファンとして恥ずかしいぞ!
「なあ、あいつか?あいつなんだろ?かりんかりん?あいつだろ?」
「人を指で指すんじゃありません」
む?こちらを見ている二人組が玄関?前にいるがもしや…?
「すみません、エルクロム総合学園の方ですか?」
「そうですよ。貴方は…穂波凛君、であってますかね?」
「合っています。初めまして、穂波凛と申します」
「私は織野かりん。エルクロム総合学園で生徒会長をしています。こっちは小焔美鶴で、エルクロム総合学園の稼ぎ頭ですね。主に救助依頼を請け負っていて、うちの学園で最もランクの高いBランクなんです」
「織野先輩、小焔先輩、よろしくお願いします」
「今日からよろしくお願いしますね」
「よろしく頼むぞ」
よし、第一印象は大丈夫そうだな。織野先輩はちょっと弱きそうな感じで、小焔先輩は強気でクールな感じだな。うん、大体理解できた。
「そういえば、凛くん。確か、料理できるんですよね?」
「はい、そうですが…何故そのようなことを?」
何故そんな変なことを入学条件に書いたのか、その理由を聞いたのだが、その理由はすぐにわかった。
「助かります!いやーお恥ずかしながら、エルクロム総合学園では誰一人として料理ができなくて…その…これからお願いしても大丈夫ですか?」
「……ええ、まあそのくらいであれば」
薄々わかってはいたんだが…やっぱりか。俺含め五人分。まあ、大丈夫か…なんとかなるさ多分。
「そうだ、凛。お前どのくらい強いんだ?戦闘はからっきし、そんなこと言われたら流石にどうしようもないぞ」
「まあ、ある程度は戦えますね。入学したてでランク上げはしていませんがCは行けると思います」
多分本気でやればCどころじゃないが…目立ちすぎれば原作を破壊しすぎる可能性があるし、何せ原作で穂波凛は魔法がほとんど使えない設定だ。急に魔法と剣を達人が如く扱い出せば違和感マシマシだろう。前世と同様魔法を扱えることは感覚でなんとなくわかっているが、肉体的にも魔力的にも前世には劣るし、最強かと言われれば全然そんなことはないだろう。
「なるほど…よし、諸々の準備が完了したら私の救助依頼、手伝ってもらおうじゃないか。正直言うと、一人で回すのつらいやだ」
「あ、はいわかりました」
幼児退行した…?いやいや、気のせいだよな…うん、きっとそうだ、そのはずだ。
「凛くん、あそこが男子寮です。形式上は凛くんの部屋は決まっていますが、今は凛くんしか男子寮にはいないので割と自由に使っても大丈夫ですよ。それと、一階の共有スペースに制服は置いておいたので、自由に使ってください
「ありがとうございます。では、身支度を整えて来るので、少しの間お暇させていただきます」
「わかりました。みんな校舎の一階にある食堂にいると思うので、準備が終わったら来てね」
「わかりました。では」
**********
「さーてと。ここが男子寮か…ボロくね?後、汚くね?」
うん、まあ最低でも三年間は放置されてたんだろうけどさ。織野先輩と小焔先輩は三年生だし。でもさ…まさか一切の管理をしていないとは思わないじゃん…こりゃあ、掃除は急務だな。こんな不衛生な環境で過ごす気にはなれないし、今日一日は働き詰めだな。
「さーてと、これからの行動プランを考えるかね」
原作では、最終的に主人公の蜂河龍司もしくはヒロインの彩羽真治が死亡するようにできている。いかなるルート選択をしようとも、絶対にどちらか、もしくは両方が死ぬのだ。龍真治てぇてぇ過激派として、絶対にそれは許せない。つまり、やることとしては、
「原作ブレイクして二人とも生き残るようにすればいい」
このためのプランは考えたが、現実的なプランは一つだけだ。
「謎の人物として暗躍すればいい、だな。龍司の成長を阻害しないようにしつつ、龍司や真治の命を脅かす存在を俺が刈り取ればいい。…多分めちゃくちゃ難しいだろ、これ」
前提条件一・俺の武器が一つしかない。この地域ではほぼ全員が持っている《固有武器》だけだ。見た目等は割れているし、このままだと徒手空拳で戦うことになる。謎の人物が徒手空拳でボコるのはまぁかっこ悪くはないが、刀とか鎌とか振ってた方がかっこいいだろう。かっこいいに越したことはないからな。
前提条件ニ・着る服がない。エルクロムや竜刻の制服を着るわけにはいかないし、女物の私服なんてあるわけもない。
前提条件三・俺自身の実力不足の可能性。多分魔法フルで使っても原作のラスボスに敵うか怪しい。今のままじゃ勝てる確率は良くて三割だ。…三割も勝てる可能性があるとも考えられるが。
これらをなんとかしないことには始まらない。女物の服は通販なりなんなりで入手するとして、武器は…諦める方が良さそうな気がするな。《次元倉庫》は使えるが、前世のものとは共有されていないから、武器等は当然ない。まあ、時間かけて準備を整えてから暗躍が利口だな。
「よっと。着替えおーわりっ」
まあそんなこと考えてたわけだが…優先するべきは学業だな。よし、まずは先輩方へ挨拶しに行かないとな!
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「かりん先輩、本当に大丈夫なんですか?穂波凛って相当黒い噂がある人物ですけど」
「私からそんな感じはしなかったけれど…礼儀正しくていい子な感じがする」
「かりん先輩がいいなら僕はいいんですけど…まあ信用はしないと思います」
「そういうの本人に言っちゃダメだからね?」
き、聞いちゃったー!タイミング悪いって!めちゃくちゃ入りずらいんだが!?どうしろと!?いや、まあ…し、知らないフリするしかないよな…前途多難って感じだな…本当にめんどい。頑張るだけ頑張るけどさ。嫌なもんは嫌なんだよ!俺だってな!でも仕方ない!こうなった以上腹括るぞ!
「こんにちは、先輩方。穂波凛と申します。本日からよろしくお願い致します」
しーん。
うん…扉開いてしっかり挨拶したまではいいんだけど…沈黙やめて!一番辛い!視線だけじーっと向けて来るこの空気感本当に苦手なんだよ!
「こ、こんにちは、凛くん。ようこそ、エルクロム総合学園へ!人数は少ないけど、よろしくね?早速で悪いんだけど…」
「料理、ですね。わかりました。食材等、何があるか見せてもらっても?」
「だ、大丈夫です!こ、こっちだよ〜」
織野先輩、助かります!この地獄から救い出してくれて!時間帯的に朝ごはんかな?遅い気もするけど!
「ここがキッチンです。食材全然ないんですけど…お願いできますか?」
「はあ…冷蔵庫を見てから判断ですね」
冷蔵庫を開く。静かに閉じた。マジですか。
「先輩…まさかこれだけなんてこと…」
「あります」
「いやいやまさk」
「あります。現実です」
「ちょっと厳しくないですかね…」
あったのはもやし、豆苗、豚肉の切れ端、後調味料諸々と麦茶だ。うん、どんだけ金ないんだよ!まあ、やるだけやってみることには始まらないか。
「はぁ…わかりました。やるだけやってみます。しっかりした料理にはなりませんが、許してください」
「助かります…私には塩胡椒で味付けして炒めるくらいしか思いつかなくて…」
いや味気ないな!?もう少しくらいあると思うんだが…
「とりあえずやってみます。先輩は食堂の方で待っててもらってもいいですか?」
「わ、わかりました。頑張ってね!」
「ありがとうございます。では」
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「あんなのからまともな料理が出て来るわけないだろ。私は自主規制がぶっかかっててもおかしくないと思ってるからな」
「ちょ、ちょっと…食事前だよ…?言ってることやばいって自覚あります…?」
「でもさ、男だよ?見ての通り、ここは女所帯だか、ね。つい魔が差して、って可能性もあるわけで」
「………」
無駄に耳が良いせいで全部聞こえとる〜!?キッチンは隣の部屋だから仕方ないとはいえ、調理中だが?なんで聞こえるんだよ!やめてくれよ!後俺は女だから自主規制は出せねえよ!
「よしっ、と。これで完成だな。織野先輩!盛り付け用の食器などありますかー?」
「あ、えーと、扉から2番目の棚の上の方に入ってます!」
「ありがとうございます!熱いうちにそちらに持って行きますね!」
ふっふっふ…見せてやろう、寄せ合わせの食材、しかも昼や夜にも食べられるよう量も準備した。だが、十分美味いはずだ!味見をしたが、相当美味い。前世の貧乏舌が活きたな。無駄に高級志向にならずに済んだぞ。
**********
「豚肉、もやし、豆苗を使って作ったあんかけです。米に乗せるもよし、麺にかけるもよし、そのまま食べるもよし。上手くできてると思います」
「ねえ、新入生」
「なんでしょうか?」
「自主規制とか入れてたりしないよね?」
「入れるわけないじゃないですか。一体どうも思われてるんです…?」
「男は皆狼、そう、おばあちゃんが言っていた」
「少なくとも食事中に出して良い単語とは思えないので…その、やめておきましょ?」
「ふっ、まあ食べたらわかるよ。んじゃ、いただきます」
「「「いただきます」」」
パクリ。先輩方が白米と一緒にあんかけを口に入れる。量は少ないのでとてもひもじそうな食卓だが、推定昨日までの食卓よりは幾分かマシだろう」
「う、」
「どうしました?」
「う、美味い!?何これ!?」
「これ美味しいですね!美鶴、凛くんが来てくれてよかったですね、本当に!」
「うまうま」
小焔先輩やっぱ幼児退行してるのでは…?いやいや、まさか。ないない。
「お、美味しい、です。えへへ、しっかり味がついているのは久しぶりです」
「喜んでもらえたようで何よりです」
「凛…だったっけ?僕は姫鳥界那、二年生だ。今後とも美味い料理を作りやがれくださいよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「あっ、え、えっと、洲真根ムイ、です。り、凛くんと同じ一年生、です。よ、よろしく、ね?」
「ムイさんも、よろしくお願いします」
「わ、わあ、高そうなコミュニケーションの壁が見えるよぅ…」
「あ、もう少しフランクな感じの方がいい、かな?ほら、こんな感じの」
「そ、そっちの方でお願い…ね。ゆ、唯一の同級生、だから、仲良く、しよ」
「うん、よろしく、ムイさん」
「さ、さん付けは距離を感じるので、だ、ダメ、です」
「えっ!?じゃ、じゃあ…ムイ、ちゃん?」
「そ、それで…」
「凛、僕は?僕はー?」
「界那先輩ですね」
「名前の方か、まあいいだろうこのくらいで勘弁してあげる」
「呼び方ってそんな重要ですかね?」
「凛くん、私は『かりん先輩』で!」
「私は『美鶴先輩』だな。拒否権は、ない」
「えぇ…」
んな横暴な…まあいいけどさ。
「それでは改めまして、よろしくお願いします。かりん先輩、美鶴先輩、界那先輩、ムイちゃん」
「「「「よろしく(ね)!」」」」
**********
さて…大清掃を始めよう。俺の使える道具と魔法全て駆使し、五時間以内に掃除を終わらせる…!
「《人払い》」
まずは人払いの結界だ。これでこの男子寮に先輩方やムイちゃんは近づいて来ない。そうなったらやることは決まってる。
「《水中呼吸》。《塞ぎ満たす真水」
俺に《水中呼吸》を付与、そしてこの寮内に限定して水で満たす。《塞ぎ満たす真水》の効果で汚れを自動で浄化する。ほこりでさえも除去してくれるのは非常にありがたい。魔力の消費量が馬鹿げているのが弱点だが、こういう安全が確保された状況では弱点足り得ないのだ。
「解除っと」
《塞ぎ満たす真水》の利点はそれで終わりではない。この魔法を解除すると、《塞ぎ満たす真水》によって濡れたものは濡れる前の状態に戻るのだ。わあ、なんて便利!あとは荷物整理をちゃんとしておこう。というかこっちの方が時間かかりそうだな。
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「かりん先輩、エルクロムって初級ダンジョンを所有してましたよね?」
「あぁ、そうですね。すでにお宝等は掘り尽くされていますが、モンスターは出るので戦うことはできますよ」
「少し、鍛錬のために潜ってきます。ダンジョンってここで合ってますか?」
地図に書いてあるが、一応確認だ。救助以外の目的で間違えて別の学校の管轄のダンジョンに入ったとか洒落にならないからな。
「合ってますよ〜。多分心配ないとは思いますが危ない目に遭ったらすぐに救助信号を送るんですよ?」
「ええ、わかっています。では、行ってきますね」
「行ってらっしゃい〜」
エルクロム総合学園は教師がいない。つまり授業なんてものはない。テストは存在するが、すべて勉強は自力で行うのだ。他の学園から見たら割と鬼畜だろう。まあ、俺からしたらどうとでもなりそうな内容だけどな!
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「ここ…か。よっしゃ、さっさと入るか」
来たぜ!ダンジョン!さてと、お宝でも探しながら今の俺の腕試しでもしますかね…おっ。
「早速おでましか。ゴブリン、初手にはちょうどいい、か?」
俺は《固有武器》である二振りの短剣を虚空から生み出す。切りつけた相手に麻痺毒を打ち込んで動きを鈍らせたり止めることができる。前世と同じように動けるかの実験からだな。
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「ぬ?遊んでたらいつの間にかそれなりの数のゴブリンが来てるじゃん。じゃ、久々に技使っちゃうか〜。スウッ、フゥ〜」
意識を細め、極限の集中状態を生み出す。感覚のみで敵がどこにいるかすべて知覚する。そして、強く踏み込む。
「『速歩断』」
集まっていた十六体のゴブリンその首が一瞬にして吹き飛ぶ。想像以上に威力が出てしまい、勢い余って壁に一撃入れてしまった。
「あー、完全に過剰火力だな。相応の相手以外には使わない方が良さそうだな」
そんなことを言っていると、突然、先ほど切り付けてしまった壁が崩落した。しかし、通常のダンジョンの崩落と異なるのは、崩落した瞬間に瓦礫がすべて消えたことだ。現れたのは小さな空間。幾重にも鎖を巻き付けられた仰々しい棺が置かれており、棺の中央には刀の刻印が施されていた。何故かは知らないが、棺の中身が俺を呼んでいるような気がした。
「………面倒事の匂いしかしないな、よし、めんどいの嫌だし帰るか!」
その瞬間だった。棺をぶち破って鞘に納められた刀が飛んできて俺の足元に突き刺さったのだ。まるで「何帰ろうとしとんじゃボケ」とでも言いたげだ。でも、よく考える。
「刀…ってことは、偽造に使えるやん!よし、早速使ってみるか!」
俺が刀を持つと、なんか知らんけど言語を脳にぶち込んできた。
『○、○△○△△』
「なんつってんだよお前。日本語喋れ」
『○○○×△…○?』
「もういいや…とりあえず武具契約は結んでおくか。《武器契約》」
『やっとパス繋げた!言葉、わかる…よね?私の銘は『極星の光刀』!よろしく頼むよ…マイマスター!』
「わぁ、喋ったあ」
『反応薄っ!?これでも世界に十六振りしかない『理外れの神武具」の頂点なんだけど!?』
十六振りもあったら大した事なさそうだな。世界に一振りしかない俺が元々使ってた『叢雲之天崩し』と比べたら間違いなく大した事ないな。
『名前いかつっ!?っていうか全部聞こえてるからな!わ、私は多機能だぞ!刀でありながら自由自在に服装を変えれたり、特殊な魔法だって扱えるようになるんだ!』
へー。すごい、すごい。ん?待て、今なんて?
『え?特殊な魔法が使えるように…』
違うその前だよ。
『じ、自由自在に服装を変えられる…?』
勝った。ジャストフィットだ。やるじゃないか、極星の光刀君!でかしたぞ!
『うぇ!?い、いきなり褒められても…』
さて、色々実験に付き合ってもらおうか。いやー、助かるよ、君のおかげでさまざなことが試せそうだ。
『え?待って、嫌な予感しかしないよ。思考読んでることをいいことに言葉を発するのをさりげなくやめてる上に目が!目がイッてるから!怖い、怖いよぉぉぉ!』
哀れ、極星の光刀。好奇心を我慢できないタイプのやばいやつと武具契約を結んでしまったが故に、これからも苦労することだろう。でも、ずっとここに封印され続けるよりはマシだろう。少なくとも、暇はしないだろうから…




