9.えっっっでっっっ
前回のあらすじっ。
私は姫野 葉月っ。辺境の村のお嬢様っ。美少女のっ。
ひょんなことから初期装備っぽい青年と白髪メカクレちゃんと一緒にご飯を食べる事になったよ!
二人は天空の鷹っていう名前の冒険者パーティのメンバーなんだって!
パーティは全員で4人って言ったけど、もう2人は宿を取りに行っていて後から来るらしい! あらすじ終わりっ!
「──それにしても、すごい量だね。食べ切れるの?」
「余裕余裕っ」
「さっき椅子を動かしたのは君か? 魔法が使えんのか?」
「そうそう」
ギコギコギコ、パクパクパク。
人前だけど、冷めて固くなっちゃう前に今ある分のステーキは食べちゃおっか。オジョーヒンな感じでね。
⋯⋯って、メカクレちゃんの羨ましそうな視線がすんごい。
初期装備くんもガマンしているようだけど、お腹の鳴る音がバッチリ聞こえてるよ。
んもー、しゃーねーなー。
「⋯⋯いる?」
「え!! いいの!?」
「こら、やめろイリア。みっともねぇ」
「いいって いいって。君にもあげるよ、ほら」
ステーキを一口分、初期装備くんの口元へ運ぶ。
初めは謙遜していたけど、滴る肉汁と香ばしい香りの誘惑には抗えなかったらしい。
パクリと頬張ると、思わずといった具合に笑みを浮かべて首を大きく振ってみせた。
施しは受けねぇぜタイプかと思ったけど、かわいいトコあるじゃない。
「イリアちゃんも、あ〜ん」
「あ〜〜っ」
「おー、よせよせ。オメーお嬢様だろ、一応」
おっちゃんが、左手に持ったカトラリーケースを揺らしながら厨房から出てくる。
そして右手で引くサービスカートの下段には、待ちに待ったてんこ盛りのライスが!
上段には、イリアちゃんたち分の食事が所狭しと並べられてあるね。おっちゃんは仕事が早いっ。
「5人でそっちじゃ狭ぇだろ。こっちのテーブルにしな」
「おっ、さすが。おっちゃん気が利くぅ。手を貸して差し上げますわよ」
「テーブル席は代金3割増しな」
「このぼったくりめ」
冗談を言い合いながら、イリアちゃんたちの食事を浮遊魔法で並べていく。
あのサービスカートとカトラリーケース、私の飲食店でのバイト経験からおっちゃんに提案してみたんだよね〜。
おっちゃんはこのお店を一人で切り盛りしているから、労力を減らす為に使って欲しいなって思ってさ。
特にサービスカートは、あるお店と無いお店じゃ配膳もバッシングも効率が段違いだし。
因みにだけど、プラスチック製の道具を異世界に持ち込むのはあれかなって思って、部品は全て金属か木製だよ。
「んじゃ、食うとするか」
「えっ、でもカイルとレグスがまだ⋯⋯」
「いいーんだよ、腹減ってんだから。ほら食え、イリア」
「もう⋯⋯」
ふふふ、イリアちゃんいいコだね。
お腹減ってるならいいんじゃない? 先に食べて。おっちゃんの料理は美味しいよ〜?
今日の私はシンプルに、白米とドラゴンステーキとその付け合せのみだけど⋯⋯
初期装備くんたちの料理は、もっとガッツリとしていてカロリー消費の激しい冒険者向けの内容だね。
〜お品書き〜
・ドラゴン肉のサイコロステーキ入りペッパーライス。
・ドラゴン肉の大玉ミートボールスパゲッティ。
・竜骨で出汁をとった玉子とほうれん草のスープ。
・クリームチーズといぶりがっこのポテトサラダ。
・小エビとクルトンのシーザーサラダ。
テーブルに置かれたメニューはこんな感じかな。
おらっ、食えっ! みたいなラインナップがなんかおっちゃんらしくて好き〜。
ふむふむ。内容を見るに、私が前世から調達してきた食材や調味料を使ってる料理もあるっぽい。
間接的とはいえメニューに関わっているワケだから、私が作ったといっても過言じゃないかもね。ふふんっ。
「うめぇッ!!」
「おいしいーー!!」
うわお、二人ともすごい食べっぷりだね。
だいぶお腹空いてたのかなぁ? 卓上の料理がみるみる減っていくよ。
でもまぁ安心して。ウチのおっちゃん、味もいいけど調理のスピードも一流だから。
それに今日のメニューに使われているお肉は、私が仕留めて解体したドラゴンのもの。
そんでもって私は、おっちゃんに肉を卸すんじゃなくてプレゼントしているっ。つまり仕入れ原価はゼロ!
結論! 圧倒的なコストパフォーマンスの良さでお腹一杯になれるってスンポーよ!!
「うめぇッ!!」
「ポテトサラダに入ってるコレ、変わった風味だけどポリポリしてておいしい!!」
「うめぇッ!!」
「スープもシンプルな塩味であっさり系!! 好き〜!!」
「うめぇなイリアッ!!」
初期装備くん、うめぇうめぇボットと化してるじゃん。
それだけ美味しそうに食べてくれるなんて、メニュー開発者(の食材提供者)冥利に尽きるよ。
さてさて、二人の食いっぷりにハヅキお嬢様も負けていられないわ。
ステーキを薄めに切り分けてーの、ほっかほかのライスへとワンバウンド! そんでバックン!
ひょーー!! ウォーミングアップした甲斐あってか、飲むようにステーキが食べれちゃううーー!!
んで! ステーキから流れ出た、塩胡椒の風味が効いた肉汁を吸ったライスのここをォ!! あーーーんっ!!
「⋯⋯ねぇアルク。この子、すごい食べっぷりだよ」
「な、お嬢様ってもっと堅苦しいイメージだったぜ」
ムグッ、ぐふっぐふっ⋯⋯
ちょっとお行儀が悪くなりすぎだったか。ごめんあそばせ。
いやーホント、朝ごはんを食べるって大事だねぇ。今度から食べそびれのないようにしよう。
それはそうと、初期装備くんはアルクっていう名前なのね。
イリア、カイル、レグス、アルク。この4人が天空の鷹って呼ばれるパーティのメンバーなのかな。
メンバーの名前的に、イリアちゃんが紅一点のパーティだったり? あらやだ、ちょっとむさ苦しそう。
「──おいコラずりぃぞ!! 先に食ってんじゃねー!!」
「オメーらが遅せぇんだよレグス! 早く食え、うめぇぞ!」
イリアちゃんの日常を妄想していたところ、金色短髪の赤眼青年がお店に入ってきた。
かなり小柄な感じかなぁ? 180cmくらいのアルクくんと、160cm無いくらいのイリヤちゃんの間の背丈っぽい。
というか、私の身長(163cm)と同じくらいに見えるね。
童顔? やんちゃそう? まぁなんか幼さと野性味を感じる顔立ちをしているよ。
下は紅白の着物みたいなロインクロスを膝辺りまで、そこから下は白の脚絆を履いてるね。
上は着てはいるけど⋯⋯袖がボロボロの白い半袖道着を羽織っているだけだから露出が多い。細マッチョだね。
見た感じだと、武器は持っていないっぽい。なんでだろ?
見せびらかすような左胸の古傷(火傷かな?)とか、道着の金ピカの襟とか、レグスくんは自己顕示欲が高そう。
それらの要素から推察するなら、戦闘は徒手格闘とかありそうだね。
「──おい、外の看板なんだよ。わざわざ貸し切りになんてする必要ないだろう?」
うっっわ! おっっきい! 背負ってる剣が大きい!!
紫のフサフサの付いたヘルムで顔は見えないけど、消去法でカイルくんかな? が、背負っている剣がすごく大きい!
全身に黒色のプレートアーマーを纏っていて、所々にヘルムのフサフサと同じ色味のパーツがあって──
あーダメ、剣がデカ過ぎるせいでその他の情報が入って来ないわ。
「あぁ、いや。ホントはこの子の為の貸し切りだったんだが、店主と当人が構わねぇって言ってくれたからよ」
「本当か? それはありがたい、礼を言わせてくれ」
私に丁寧な一礼して、カイルくんが席に移動する。
⋯⋯あ、座る時は邪魔になるようだから、剣は壁に立て掛けておくみたい。
いやあ、それにしても大きい。カイルくん自身もメンバーの中で背丈が一番ありそうだけど⋯⋯
パッと見で2mくらいのカイルくんとほぼ同じサイズだよ。
形状は大きな西洋の剣って感じだけど、刃のとこ以外全部が淡い金色をしているね。逆に刀身の部分は輝くように白い。
全体像は大剣使いの黒騎士ってとこかな。年頃の坊やたちがキャッキャッしそう。
「──屋敷が見えたろ? 丘の上んトコに。そこのお嬢様なんだとよ。慣れ行きで一緒にメシ食ってる」
「あの大きな屋敷か? そういう事なら、お前たち全員少しは礼儀を正せ」
「いいよいいよ、くるしゅーない」
「なんと⋯⋯。では、ご好意に預からせてもらいましょう」
敬語もいいって。真面目な人だなー、カイルくん。
リーダー的な立ち位置っぽいのかな? 他メンバーたちとの接し方を見る感じ。
メ〇ナイトみたいなヘルムの隙間から見える紫の瞳からも、正義感とか逞しさみたいなのが伝わってくるよ。
「では早速、頂くとしよう。長旅で腹が空いたぜ⋯⋯」
「うおおーー!! うめぇぞオヤジ!! じゃんじゃん持ってきやがれーーッ!!」
合流組もアルクくんたちに続いて食事を始めた。
大柄で空腹のカイルくん、よく噛まずに食べるレグスくん、まだまだ食べるアルクくんとイリアちゃん。
厨房では、料理人魂に火がついた様子のおっちゃんが忙しく動き回ってるよ。賑やかで楽しいや。
「ところで⋯⋯その、お嬢様ちゃん? の、お名前って聞いてもいい?」
「んー? そっか、そう言えばまだだったよね。私はヒメノ・ハヅキ。これでも一応、冒険者をやってるよ」
「へぇ、アンタ冒険者か!! 戦場に出るお嬢サマって中々イカしてんな!!」
私の話に食い付くレグスくんを、カイルくんが無礼だとゲンコツする。
イリアちゃんは興味深そうに私を見つめて、カイルくんもヘルムの上から顎をさすって⋯⋯って、それ外さんのかい。
口元が開閉可能なようで、器用にそこからご飯を食べているみたい。便利だなぁ。
「──それで、アルクくんたち天空の鷹がこの辺境の村に訪れた目的は? そっちの話も聞かせてよ」
んまぁ大した目的なんか無いかもだけどね。
ちょっぴり気になるから聞いておこう。村の人たちもおっちゃんも気にしてたし。
「実は俺たち、今パーティメンバーの増員を考えていてな。この村にはとある凄腕冒険者がよく出入りしているって話を聞いて来たんだ」
「へえ〜。有名な人がいるんだ」
「あぁ。ハヅキお嬢も冒険者なら知っているかもしれんが⋯⋯一応、先に訊いておくぜ? 今言ったとある冒険者ってのに心当たりはあるか?」
「う〜ん、どうだろ。フローラさんなら知ってるけど⋯⋯。
え? フローラさんだよ、知らない? フローラ・エルロンドさん」
案外、ここらの地域以外では知られてないのかなぁ。
実力、美貌、装備、どれを挙げても大体メインキャラクターみたいな感じの人なのに。
まぁ知られてないならそれはそれでいいけどね、私は。
お洒落な喫茶店とか、一昔前の洋楽とか、良いものは人に教えちゃうより独り占めしてたいタイプだし。同担拒否っ。
「──えっっっ、でっっっ、そのっ、なんだっ、そのフローラ⋯⋯さんっ? っていうのは⋯⋯?」
「私の友達だよう。たまにウチに遊びに来る。“緋剣”の異名がある冒険者なんだけどなー」
「トモダチ⋯⋯? あのヒケンがウチにアソビにくる⋯⋯?」
ん?? なんかアルクくんやレグスくんの様子がおかしい。
あれ、これってもしかして⋯⋯そーゆー展開なのかな?
えー、じゃあ、コホン。
私、なにかやっちゃいました?
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