8.困りますお客様!
モグモグモグ、バクバクバク。
ごきげんやう。辺境の村の美少女お嬢様ことワタクシ姫野 葉月は、ただいまお昼ごはんの真っ最中でしてよ。
朝ごはんを食べそびれたバイト終わりに、積み重なるドラゴンステーキと山盛りの白米っ。
それを、貸し切りの店内で人目を気にすることなくかっ食う至福──を、堪能するつもりだったのだけれど。
外で何かあったらしいから、じっくり味わうのは後でにしてひとまずは様子を確認しておこう。
「きゃー!! こっち向いてー!!」
「なんでこんな村にーー!?」
「応援してまーーす!!」
ハグハグハグ、ムッシャムッシャ。
ステーキとご飯を交互に頬張りながら、外の様子をカーテンの隙間から覗いてみる。
さっきの叫び声は事件があったとかじゃなくて、どちらかというと黄色い悲鳴っぽかったけど⋯⋯。
何事かと思ったら、どうやら冒険者パーティがこの村を通りがかったらしいね。人だかりが見えるよ。
声援からして結構有名なパーティのようだけど⋯⋯。うん、実際にかなり強いね。
感じる魔力の雰囲気からしても、中々の実力者なんじゃないかな。
フローラさんの2分の1くらいの実力者が4人、まぁ向かうとこ敵なしみたいな具合だね。
何はともあれ、魔物の襲撃とかじゃないならよかったよ。
「──どんな連中かと思ったら、あの“天空の鷹”じゃねーかよ。なんだってこんな辺境に」
外まで様子を見に行っていた店主のおっちゃんが、物珍しそうに独り言を呟いている。
スカイホーク? なにそれ美味しいの? す○いらーくホールディングスみたいなやつ?
っていうか、天空の鷹はただの鷹なんじゃないの⋯⋯??
やれやれ、ツッコミどころが多いなぁ。異世界ってホントに面白いや。
「ハヅキ嬢は知ってか? あのパーティの話」
「ひははーい。ほんはひふんええはお?」
「あぁ、そりゃもうな。連中、所属はスレイヤーズギルドなんだが⋯⋯等級は全員『ブロンズ』なんだぜ?」
「へえ〜」
おっちゃんの話しぶりからして、なんか凄そうな感じだね。
そういえば、確かそうだったっけ? スレイヤーズギルドはそういった等級システムを導入しているって。
頂点が『ゴールド』、次が『シルバー』、んで『ブロンズ』の順番だったよね。
んで、そこから下にも色によって区分された等級が⋯⋯確か7つくらいあったハズ。
ってことは、あのパーティは上から3番目の実力者で構成されているってわけか。なんかすごそう。
等級が上がれば上がるほど待遇を良くすることで、向上意欲を高めるのが目的なんだと思う。
⋯⋯あ、そういえばフローラさんもスレイヤーズギルドの所属だったっけな?
等級っていうのは、分かりやすいよう装備品としてスレイヤーズギルドの冒険者が胸元とかに身に付けているんだけど⋯⋯
二振りの剣が交差した紋様と所有者の名前が刻まれている小さなプレートなんだよね〜。
で、そのプレートの色(というか素材?)は等級に応じたものが反映されている⋯⋯んだけど、あれれ??
フローラさんが腰当てに付けてるプレートって、確か黒い色じゃなかったっけなぁ。
すごいキラキラしてる鉱石だったけど、あれは等級としてはどの程度なんだろう? 今度会ったら聞いてみよっと。
「しっかし、本当になんだってこんな村に来たんだか⋯⋯」
「ふぁあ? はひはふへふぁはい? ふぁ、ほはんほははひ」
「いや何言ってっか分かんねーよ。取り敢えず、おかわりな。ちょっと待ってろ」
べふー、ウォーミングアップ終了っと。
やっぱ美味いねぇ、このお店の料理は。品性を忘れて食らいついてしまいますわ。ヲホホ。
おっちゃんが厨房で白米をモリモリ盛ってる間に、付け合せの玉ねぎとポテトをぺろり。
ステーキの肉汁をたーっぷり吸ってしなびてる玉ねぎとポテトがもう最高っ。
ちょっとおっちゃんー、早くご飯がほしーよー。
「──やってるか? 4人なんだが」
「ふぇぇ、お腹すいたぁ⋯⋯」
⋯⋯えっ、おっ、おろろっ?
なんかお店に青年と少女が入ってきたんだけど⋯⋯。それも多分、さっきの冒険者パーティの人たちが。
青年の方は茶色の短髪と黒色の眼で、私とおんなじくらいの年頃に見えるね。顔もスッキリと整ってる感じかな。
格好は⋯⋯なんというか、ザ・初期装備みたいな雰囲気でちょっとダサく見えるかも。背丈はフツーくらい。
防具は魔物のなめし革と薄い鉄をツギハギしたもの、武器は左腰に差しているあの剣かな。
女の子の方は白の長髪だけど⋯⋯目元はフードを深く被ってるから見えないや。
白をベースに金色の装飾があるローブを着ていて、両手で抱えるように杖を持っているね。なんか健気でかわいい。
先端が白鳥かなんかの翼を模している形状で、その翼が包み込む感じで紫色の玉が装着してあるよ。
あの玉は魔力石かな? 魔法を使用する際に色々補助してくれるやつ。
でも、今装着してあるあの魔力石はエネルギー切れみたい。
この村で補給するもつりだったのかな?
「──おいおい、外に看板立ててんだろ? 今日は貸し切りだぜ」
「おあ、本当だ。腹空いててよく見てなかったぜ」
困りますお客様! 当店本日は(私の為に)貸し切りなんで入店はお断り中なんです!
なんて、まぁ実際にそんな冷たいこと言うつもりなんてないけどね。
見たところ旅の休息に訪れたって様子だし、疲れているならちゃんと食べて休んで欲しいよ。
「悪ぃが今日は他を当たってくれ。この先の三軒目を右に曲がった所に──」
へいへい、おっちゃん。
私は構わへんからご飯食べさせてあげてーや、的な感じで、厨房から顔を覗かせるおっちゃんにアイコンタクトを送る。
おっちゃんの視線の動きを追ったのか、青年と少女がこちらを向いて私に気が付いた。
どうぞどうぞと、適当な席を手のひらで指し示してみせる。
よかった、どうやら伝わったみたい。
「丘の上に屋敷が見えたろ? そこのご令嬢だ。飯なら食わせてやる、その子に感謝しな」
「おぉ、そいつはありがてえ。ご厚意痛み入るぜ、お嬢様」
「ど、どうもありがとう、もうお腹がぺこぺこで⋯⋯」
「気にしないよ。どうせなら、どう?」
指をクイッと動かし、魔法で椅子を引いて席を用意する。
うんっ、一緒に食べようよって意図がちゃんと伝わった。
一人での食事もいいけど、お喋りしながらも楽しくていいよね。
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