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2.自炊の基礎は焼肉のたれ

「──ふんふふ〜ん」


 どうもこんばんわ、姫野(ひめの) 葉月(はづき)と申します。

 辺境の村でお嬢様をやっている私は、ただいま夕飯の準備中です。

 ⋯⋯え? お嬢様なら、ご飯は腕利きのシェフに用意してもらえばいいじゃないかって?

 ノンノン。お嬢様といっても、それはあくまで村の人たちが勝手に言ってるだけなのです。

 まぁこれだけ大きな屋敷に出入りしているワケだからねぇ、勘違いされても仕方ないでしょう。

 パイプを吹かす恰幅のいい主人、宝石のアクセサリーだらけの夫人、執事やメイドやシェフ──。

 この屋敷を見た村の人たちの中では、沢山のキャラクターが自動的に補完されているのが察せられるよ。

 まぁ実際にそんなのは存在しないから、私はこうしてフライパンを揺らしているのだけれど。


「ほいさっと。こんなトコかなっ」


 よしよし、全体的に色付いてしんなりしてきたね。

 前世で買ってきたキャベツともやしの野菜炒めセット半袋と豚バラ肉数切れに⋯⋯イン! 焼肉のたれ! 中辛!

 これぞ伝家の宝刀、一人暮らしの味方、自炊の基──あっ、ちょーいい香りぃ♡

 カップのお味噌汁は準備ヨシ、パックのご飯も湯煎で温め完了っ。

 そういえば⋯⋯向こう(前世)の冷蔵庫の中にきゅうりの漬物が残ってたかしら。折角だし用意しちゃお。


「い〜、よっと」


 振り返ってゲートを開き、前世の私の家へと繋げる。

 ちらり。⋯⋯あ、お父さんだ。また任侠映画? お母さんはお買い物にでも行っているのかな、見当たらないや。

 ではでは、そろりそろり。ちょいと拝借しちゃいますよ〜。

 元我が家はカウンターテーブルが死角を作ってくれるから、リビングからキッチン内は見えないのだ。

 お父さんはテレビ観ながらなんかピーナッツつまんでるし、音さえ立てなければ大丈夫なハズ。

 もしバレたら? う〜ん、流石に警察呼ばれちゃうかなぁ?

 両親や知人にとって今の私は赤の他人だもの。望んでやったことだけど、記憶を魔法で全て消しちゃったからね。

 ⋯⋯だって、私が居なくなった事で悲しむなんて人生が勿体ないもん。

 私は今世で上手くやってる。だからそれでOKなのさっ。


『──テメェ、何をコソコソと嗅ぎ回ってやがる!?』


 ひいい?! ⋯⋯って、映画のセリフかーい。

 脅かしやがって、土手っ腹に風穴あけたろか! 次やったら海に沈めたるわ!!

 と、まぁそんなこんなでお漬物の回収は完了。あとは帰って夕飯に、って言いたいところだけど⋯⋯

 おやおや? なんだいお父さん。ピーナッツの隣に置いてある美味しそうなその唐揚げは??

 えっーと、ひー、ふー、みー⋯⋯4つある!! お母さんが作る料理で一番美味しいものが!!

 へいへい旦那ぁ、もう揚げ物はキツい年頃でっしゃろ〜??

 かわいい娘チャンがお身体労ったるでなぁ、ここは一つ健康に気を使ってもろて。

 ほい、ちっこくゲートを開いてっと。たった2個ならバレないよねっ! ほなサイナラ!!


「おろっ? 俺の唐揚げ──」


 んーん、何も聞こえなーい。

 無防備に置いてあったのがいけないよ、こんなにも美味しい唐揚げが⋯⋯って、もう1個食べちゃった。

 折角なら用意してるパックご飯で食べたかったけど⋯⋯別にいっか、美味しいから。

 これって窃盗罪かなぁ? あと住居侵入罪?? まぁ気にしない(でほしい)けど。

 私だって他人の家の冷蔵庫を漁ろうだなんて考えないけど、元とはいえ我が家ならいいでしょう。

 両親が気付いているかは分からないけど、今まで(パク)った分は別の形でお返しもしているし。

 お財布に数千円入れておいたり、シャンプーとか日用品を買い足しておいたり、洗濯物を畳んでおいたりとかね。

 だから、今度また電子レンジと洗濯機とお風呂借りるね♡


「──さってと、こんなもんかな。いただきまーす」


 う〜ん、やっぱお母さんの唐揚げが一番だね。

 本当、どうやったらこんなに肉汁を閉じ込められるんだろう? 衣も薄すぎず厚すぎず⋯⋯天才か?

 それに、娘がいる食卓に出していたとは思えないレベルで強いニンニクの風味。ぶっちゃけ最高だわ。

 ⋯⋯明日はフローラさんとクエストに行く予定だし、夕飯の後は入念に口のケアしよっか。

 まぁそれはいいとしてよ。姫野特製、焼肉のたれ野菜炒めのご賞味といこうじゃないの。

 ふむふむ⋯⋯。うーん、焼肉のたれの味! それ以下でもそれ以上でも無い! だけどこれが良い!!

 取り敢えず味付けを丸投げ出来るのが、この調味料が自炊の基礎たる所以だよねー。

 んで、ここでお味噌汁をズズっと。あー、私は日本人だわ。

 ⋯⋯パックご飯ってあと何個残ってたっけ? 確か16個かなぁ。

 う〜ん、16個とはキリが悪い。ここはもう1つ食べよう。

 いやあ、本当はヤよ? 炭水化物は乙女にとって油断ならない相手だし、私だって自分のみてくれは気にしてる。

 けど⋯⋯キリが悪いからね!! これは仕方ないの!!

 湯煎で温めるのは時間が掛かるけど、ここはガマンするしかないね。

 今度前世に行ったら、久し振りにホームセンターに行ってみようかなぁ。

 家電については、電源を雷魔法で代用出来るように努力したからね。意外と問題は無いのよ。

 現に、この屋敷にはドライヤーや電気ポット、ライトやシーリングファンとかの道具はあるし。

 エアコンとか電子レンジとか、それこそ冷蔵庫とかはねぇ、良いのが欲しいけどたっっかいのよ。

 向こう(前世)での収入源が短期バイトの私にとっては、果てしなく遠い存在なんだよねー。

 だから屋敷の設備に加えるのは、まだずっと先の話になりそうかな。

 まぁ無いものねだりはするだけムダだね、今は諦めよっか。


「──ごちそうさまでしたっ、と⋯⋯」


 けふー、食べた食べた。

 さあて、明日はクエストだ。フローラさん曰く、“岩巨人(ゴーレム)が大発生したから手伝ってほしい”って話だったけど⋯⋯。

 最近は運動を全然してなかったし、これも良い機会かな。

 場所は東にある「巨岩の荒地」。名前通り巨大な岩がゴロゴロ転がっている荒地だね。

 実はその荒地全体が超巨大な岩巨人(ゴーレム)の残骸で、その破片がそれぞれ動き出して通常の岩巨人(ゴーレム)になっている、とかなんとか。

 真偽は⋯⋯どうなんだろうなぁ? 私、魔物の成り立ちとか詳しくないから、全然分かんないや。

 まぁこの件は私にも責任があるから、後始末も兼ねてフローラさんと様子を見に行くけど。

 なんてったって、この荒地が生まれる発端となった超巨大岩巨人(ゴーレム)を倒したのは私だし。

 あれっ? そういえば、フローラさんにこの事は伝えてなかった気がするな⋯⋯。

 まぁ別に、わざわざ伝える必要も無いからいいけどねー。


 兎に角、明日に向けて今夜は準備しようっと。

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