11.お嬢様 in ホームセンター
うぃっす。ンども、姫野 葉月ってモンです。
元女子高生かつ現お嬢様の美少女ッス。ちゃっすちゃっす。
今日はね、異世界の友人2人と前世日本のホームセンターにやってきてるッスよ〜。
「わー!! 広ーーい!! 色々並んでるーー!!」
「なんか⋯⋯独特な香りがするわね、このお店。臭いってワケじゃないけれど⋯⋯」
「ふふふ、まぁそれがホームセンターって場所なんだよ。これから色々見て回るから、2人ともはぐれないようにね」
⋯⋯って、言ったそばからフィーナが走ってっちゃった。
居場所の探知は可能だから、人に迷惑を掛けていない内なら好きにさせてあげよっかな。
それじゃあ早速、フローラさんと一緒にお目当ての家電コーナーに向かいたい⋯⋯んだけど。
えーっと、売り場はどこだろう。私もこのホームセンター初めてだからなぁ。
まぁ折角の予算23万円なんだから、ゆっくり歩き回って向かってもいいかもね。
もしかしたら、意外なトキメキがあるかもしれないし。
「──今日のハヅキの目的って“れいぞうこ”だったかしら? 食べ物や飲み物を冷たい状態で保存する箱」
「まぁ大体そんな感じの道具だね。もっというなら、凍ってるものを保存したり入れたものを凍らせることだって出来るよ」
「え〜! それって良いわね! それじゃあアレを沢山入れておきましょうよ、キャラメルリボンとジャモカコーヒー」
「ちょっっ⋯⋯と厳しいかなぁ。こっちの私の財力じゃ沢山は買えないよ」
「あら⋯⋯ごめんなさい、わがままが過ぎたわ」
やーん、謝らないでよフローラさん。また買ってくるから。
まぁ実をいうと、前世で大金を稼ごうと思えば方法はいくらでもあるんだけどさぁ⋯⋯
“姫野 葉月はとある会社の社長である”みたいに人々の記憶を改ざんするとか、油田でも探知して一攫千金とかね?
やろうと思えば簡単ですよ、そりゃあ。
でもね、ここ日本での私はあくまでも死亡しているわけだ。
だからこそ日本──引いてはこの世界には極力干渉をしないことを心掛けているんだよ。
別にその⋯⋯深く干渉することで問題が、みたいな話ではないよ? もしかしたら あったりするのかもしれないけど⋯⋯
まぁとにかくさ、この世界の部外者である私が世界に影響を与えるような真似は避けた方がいいかなって。
この世界の資源、金銭、人間、それら全てはこの世界のものだから。
友だちのお願いがあったとしても、世界の部外者であるっていう私の考え方は変えるべきではないと思うんだよね。
⋯⋯んま、極論をいっちゃうと程度にもよるんだけど。
これまで何度も食品とか衣服とか異世界に持ち帰ってるし、今後もそれは継続するつもりだし。
今日こうしてホームセンターに来ているのだって、大き目の買い物の為だからねぇ。
それ然り、短期バイトでお金を稼ぐこと然り、異世界の人をカモフラージュさせて連れて来ること然り──。
よっぽど大きな影響を世界に及ぼさなければヨシってわけ。
とりあえずね、フローラさんがキャラメルリボンとジャモカコーヒーを気に入ってるのは分かったよ。
家電の購入が済んだら今まで貯めていた分のバイト代が浮くだろうし、それで冷凍庫をアイスで満たしておこうっと。
ふふふ。フィーナも冷たいスイーツとかケーキとか出したら喜ぶだろうなぁ。
「──あ、ねぇハヅキ見て。あれって前に貴女が言ってたやつじゃない? “すいはんき”って書いてあるわよ」
「なぬ」
ほほう、炊飯器ねえ。言われてみれば欲しいかも。
パックご飯じゃどうしても満足感は補えないし、かといって大量買いするにはコストが掛かるけど⋯⋯
ううむ、悩みどころだわね。というか炊飯器の値段って案外ピンキリなんだ。
安いものだと1万円いかないくらい。逆に高いと⋯⋯うわ、あの炊飯器10万超なんですけど。
「向こうのアレって何かしら? “せんたくき”⋯⋯?」
「あー、洗濯機ねぇ。まぁその名の通り、衣服と洗剤を入れてボタンポチーで自動で洗濯してくれるんよ」
「ええー! なんてまあ⋯⋯!!」
「ふふっ。あっちに見えるエアコンって道具はねー、室内の温度を調節出来るんだよ? 夏は涼しく、冬は暖かく!」
「まあっ!!」
ちょっと、フローラさん笑。一緒に回ってて楽しすぎ。
もっと色々紹介してみたいトコなんだけど⋯⋯それより先に目当ての物を見つけたよ。
他の商品コーナーについては、また後でゆっくり見て回りましょ。
さてさて。愛しの冷蔵庫くぅ〜ん、お顔をよく見せてちょうだぁ〜い、っと。
もっとこうズラーっと並んでる景色を想定してたけど、案外そんなことないんだね。
種類もそこまで多くない⋯⋯。私が思う家電コーナーのイメージと違うなぁ。
なんでだろう? このお店は家電の扱いはあんまりしてないのかな。
でも、家電って言ったらホームセンターでしょ。それ以外に何かあったっけ? はにゃ??
「──ねえ、ハヅキ!! フローラさん!!」
「わあ、どうしたのフィーナ」
「こら、静かにしなさい。大きな声出さないの」
私が首を傾げていると、フィーナがスライド登場した。
あなたもここに居たのね。あんなに慌てて、何を新発見したんだろ。
「大変なの! 来て来て、板の中で動いてる人が大きな船に乗ってる!!」
「板? それって⋯⋯」
「まったく、何を言ってるの。驚きが多いのは分かるけれど、説明が下手すぎて何を言っているのか──⋯」
「⋯──ハヅキ! 板の中で人や景色が動いているわ!!」
即落ち2コマかいっ。
板ってなんぞやと思ってたけど⋯⋯はいはい、テレビのことを差してたのね。
というか、フィーナはともかくフローラさんは電光掲示板やATMみたいに“画面が動く”って現象は見てきたでしょ。
今さらそんな迫真に、後ずさりして目を見開くほど⋯⋯??
「ほら、これ! すごくない!? なにこれ!?」
「本当に動いてるわ⋯⋯! これ⋯⋯この中の世界はどうなってるの?!」
「えーっと、まずこれは映画っていう大掛かりなお芝居でね?
この映像の一部はCGっていう合成技術で加工されてて⋯⋯うーんと、ええっと⋯⋯」
うう、知識不足で説明が難しい。
ひとまず、流れている映像が演技かつ本物ではないっていうのは理解してもらえたようだけど⋯⋯
まぁいっかな、それ以上は。どっちにしろ私も詳しい仕組みなんて知らないし、具体的な説明なんてムリムリ。
「「⋯⋯⋯⋯。」」
う〜ん、しかし2人ともすごい真剣に見入ってる。
このSF映画、懐かしいな〜。エイリアンと人間がお互いの戦艦で戦うやつ。
終盤の戦闘シーンでピンチになるけど、“みんな死ぬ。でも今日じゃない”って流れからの一転攻勢には痺れちゃうよね。
私もいつか言ってみようかな。誰かのピンチに駆け付けて、ドヤ顔キリッみたいね感じで。
「──んま、続きが気になるならここで観ててもいいよ。
私は冷蔵庫選んでくるから。映画に集中しすぎて通行人の邪魔になっちゃダメだからね?」
ふふ、二児のお母さんになった気分。
二人がテレビに夢中になっている間に、葉月ママは冷蔵庫の物色よ〜っ。
家電買うならホームセンターじゃなくて家電量販店に行けばいいじゃない。
そんな事を失念していた今日この頃です。
ご評価、ご感想、誤字脱字報告お待ちしております!




